ドラゴンフルーツクエストⅡ ~密林の守護者~
俺はフードハンター。どんな食材であろうと探し出す、腕利きの食材調達人である。
そんな俺の元に、今日もまた一つの依頼がもたらされた。依頼者は俺のお得意先の一つで、とあるケーキ店のオーナーパティシエ。世界のフルーツの創作ケーキフェアを行うとかで、その素材の調達を頼みたいという。
そう。
先日、俺が仕入れ損なったあの果物を……。
「ドリアンやマンゴスチンとかは簡単に手に入るようになったけど、あれは品質のいいのを手に入れるのがまだ難しくてなあ。やっぱりどんなものか試してみたいんだ。今度こそちゃんと探してきてくれよな。イチゴとかじゃなくて、だぞ」
「くっ。勘違いして悪かったよ。果物の王や女王以上に入手困難なフルーツってわけだな。よし判った! 絶対持ってきてやる」
「……本当に大丈夫なんだろうな」
「任せろ。俺に二言はない!」
かくして俺の探索の旅が再び始まった。
だが実は、今回の依頼の予感は、以前からすでにあった。
前回、俺が提示した最強のフルーツ・イチゴ。それに対して彼が見せた反応を目にした時点で、俺は気付いていたのである。あるいは彼の求めるフルーツは、この特別有機栽培の最高級イチゴではなく、名前通りのあれかもしれぬ、と。
ル・ソンマ・ア大樹海――。
人跡未踏の魔境にして、神々や伝説の生物が住まうとされる神秘のジャングル。最奥には原始の時代より生える謎の大樹があり、世にも珍らかなる実を結ぶという。
だがル・ソンマ・ア大樹海と言えば、峻厳な山脈と千尋の谷によって人界から完全に隔絶された、秘境中の秘境として名高い地だ。前途に待ち受けるであろうあまりに困難な道のりが、最強のフードハンターたる俺をして二の足を踏ませしめたのである。
かの地に到る過酷な冒険の数々を詳しく語ることは、今回はやめておこう。とにかく、想像を絶する旅路の果てに、俺は逢うことができた。
あらゆる生物の頂点に立つ最強の一族。
そして彼らの偉大な王にして世界の監視者たる、かの存在に――。
帰国後、俺は入手した今度こそ最強無敵のフルーツを持って、依頼人の元へ赴いた。
彼は俺を見るなり言った。
「お前、半年も何してたんだよ。フェアなんかとっくに終わっちまったぞ。っておい、それなんだ……?」
「何って、これが欲しかったんだろ? 腐らないっていうから、とりあえずあと百キロ仕入れてきた」
俺はつややかに光る果実が一ダース入った箱を台に置いた。依頼人が虹色の輝きを撒き散らすその果実を疑わしげに見ているのに気付き、さらに補足する。
「竜王に頼み込んで分けてもらったんだよ。竜族はもう個体数が減っててそんなに食べないし、融通しても構わないってさ。もっと欲しかったら、連絡くれればまた行って仕入れてきてやるよ。あとドラゴンの食い物だから、あんまし食いすぎると腹壊すぜ」
「う、うん……」
「正直、俺はそんなに旨いとは思わないけどなあ。メロンのほうが絶対甘くて旨いよ」
「それっぽいな……。ちなみに、これってなんていう果物なんだ?」
「はあ? 自分で頼んだものくらい憶えとけよな……まったくもう」
「……」
こうして某県某市にあるケーキ店の名物にして、謎の最強激マズロールケーキ「ドラゴンロードフルーツロール」は誕生したのである。
――――――――――――――――――――――――――――――
主人公の前のクエストはこちら→『ドラゴンフルーツクエスト』
短縮ver.(千文字。内容ほぼ同じ)→『DFQⅡ~密林一千世界~』
そんな俺の元に、今日もまた一つの依頼がもたらされた。依頼者は俺のお得意先の一つで、とあるケーキ店のオーナーパティシエ。世界のフルーツの創作ケーキフェアを行うとかで、その素材の調達を頼みたいという。
そう。
先日、俺が仕入れ損なったあの果物を……。
「ドリアンやマンゴスチンとかは簡単に手に入るようになったけど、あれは品質のいいのを手に入れるのがまだ難しくてなあ。やっぱりどんなものか試してみたいんだ。今度こそちゃんと探してきてくれよな。イチゴとかじゃなくて、だぞ」
「くっ。勘違いして悪かったよ。果物の王や女王以上に入手困難なフルーツってわけだな。よし判った! 絶対持ってきてやる」
「……本当に大丈夫なんだろうな」
「任せろ。俺に二言はない!」
かくして俺の探索の旅が再び始まった。
だが実は、今回の依頼の予感は、以前からすでにあった。
前回、俺が提示した最強のフルーツ・イチゴ。それに対して彼が見せた反応を目にした時点で、俺は気付いていたのである。あるいは彼の求めるフルーツは、この特別有機栽培の最高級イチゴではなく、名前通りのあれかもしれぬ、と。
ル・ソンマ・ア大樹海――。
人跡未踏の魔境にして、神々や伝説の生物が住まうとされる神秘のジャングル。最奥には原始の時代より生える謎の大樹があり、世にも珍らかなる実を結ぶという。
だがル・ソンマ・ア大樹海と言えば、峻厳な山脈と千尋の谷によって人界から完全に隔絶された、秘境中の秘境として名高い地だ。前途に待ち受けるであろうあまりに困難な道のりが、最強のフードハンターたる俺をして二の足を踏ませしめたのである。
かの地に到る過酷な冒険の数々を詳しく語ることは、今回はやめておこう。とにかく、想像を絶する旅路の果てに、俺は逢うことができた。
あらゆる生物の頂点に立つ最強の一族。
そして彼らの偉大な王にして世界の監視者たる、かの存在に――。
帰国後、俺は入手した今度こそ最強無敵のフルーツを持って、依頼人の元へ赴いた。
彼は俺を見るなり言った。
「お前、半年も何してたんだよ。フェアなんかとっくに終わっちまったぞ。っておい、それなんだ……?」
「何って、これが欲しかったんだろ? 腐らないっていうから、とりあえずあと百キロ仕入れてきた」
俺はつややかに光る果実が一ダース入った箱を台に置いた。依頼人が虹色の輝きを撒き散らすその果実を疑わしげに見ているのに気付き、さらに補足する。
「竜王に頼み込んで分けてもらったんだよ。竜族はもう個体数が減っててそんなに食べないし、融通しても構わないってさ。もっと欲しかったら、連絡くれればまた行って仕入れてきてやるよ。あとドラゴンの食い物だから、あんまし食いすぎると腹壊すぜ」
「う、うん……」
「正直、俺はそんなに旨いとは思わないけどなあ。メロンのほうが絶対甘くて旨いよ」
「それっぽいな……。ちなみに、これってなんていう果物なんだ?」
「はあ? 自分で頼んだものくらい憶えとけよな……まったくもう」
「……」
こうして某県某市にあるケーキ店の名物にして、謎の最強激マズロールケーキ「ドラゴンロードフルーツロール」は誕生したのである。
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主人公の前のクエストはこちら→『ドラゴンフルーツクエスト』
短縮ver.(千文字。内容ほぼ同じ)→『DFQⅡ~密林一千世界~』