れとろげーむれくいえむ | 想像妄想空疎空想うそ日記

れとろげーむれくいえむ

 話題のテーマパーク『ゲーマーズヘヴン』に行った。
 ここにはインベーダーゲーム等の歴代業務用アーケードに始まり、家庭用はファミコンやメガドライブから最新機種まで、ありとあらゆるゲーム機とソフトが揃っている。しかもそのどれもが遊び放題という、コンピューターゲーム世代にとってはまさに夢の天国のようなテーマパークなのだ。
 自分もディスクシステムでクリアし損ねたレトロゲームを発見し、さっそくプレイを開始した。このしょぼくれたドット絵、単純な動きなのに操作性の悪さでちっとも倒せない敵、弱っちい主人公――うわー懐かしい。
 だが時間を忘れて没頭していたら、館内に『ほたるの光』が流れ始めた。
「本日はご来館ありがとうございます。間もなく閉館時刻です……」
 えっ、ちょっと待って、あとちょっとだけ……。
 願いむなしく五分後に夕方五時の時報が鳴った。
「閉館です。またのご来館を心よりお待ちしております」
 アナウンスが流れて、同時にモニターの電源が一斉に落ちる。ラスボス迷宮まであと一息、装備もライフ数も万端だったのに。
 くっそー、来週は開館時間に駆け込んで絶対クリアしてやる。
 固く誓って出口に向かう途中、同じ状況だったらしい人々と一緒になった。
 ふと隣を歩く人を見ると、目が落ち窪んで顔色が悪い。一日中ゲームをしていたようだ。
「大丈夫ですか……?」
 尋ねると、彼はため息をついて応えた。
「先月から通って、やっと先週クリアに必要なレアアイテムを手に入れたんだよ。でもパスワードを間違えてしまってね。今日はその前の状態からやり直したけどアイテムが出なくて……」
 言われてみれば昔のゲームのパスワードって、長かったからなあ。苦労してメモして、『ふっかつのじゅもんがちがいます』と出たときの脱力感ときたら。
「大変ですね……」
「まあ、俺はまだマシだ。ここのゲームってコンティニューと当日のセーブはOKだけど、翌日にデータの持ち越しはできないんだ。ファミコン中期以降は一日でエンディングまで辿り着こうとして悪戦苦闘してる奴も多いよ」
 周囲を見回してみると、みな一様にうつろな表情でぶつぶつと呟いている。
「今日も駄目だった……」
「どうしても姫が助けられない……」
「レベル上がんねーよぉぉ」
「死神強すぎ……」
 ひょっとして、ここってゲーマーズヘヴンじゃなくて、ゲーム地獄?