画力ゼロ
突然の思いつきで、犬の絵を描いてみた。うろ覚えの記憶を頼りに白黒のハスキー犬を鉛筆でスケッチしていく。
仕上がった絵はけっこういい出来だったので、三次元に変換して取り出してみることにした。
……まではよかったのだが……。
出てきた犬を見てがっかりした。
顔は大きくてかわいらしかったが、胴体は書くのに飽きたためボディラインが雑で毛がぼさぼさだ。おまけにデッサンも狂っていたようだ。足の長さが四本とも全然違う……。
やがて犬は走ろうとして、一番短い足を中心にくるくる回りはじめた。
本当に完璧な絵なら命が宿ることもあろうが、私程度の腕では三半規管まで揃ったようなきちんとした生物にはならない。ただの動くおもちゃとして目をまわすこともなくひたすら回りつづけている。最初はそれなりにユーモラスで笑えたが、じきに見ている側の目がまわってしまった。
どうしようもないので、結局またスケッチブックの中に戻すことにした。
うん、ただのラクガキとして見る分には多少の狂いなぞ問題ない。
犬の方はと言えば、今でもときたま向きが変わっていたりする。戻ったことが判らず、まだ回っているのかもしれない。