神秘的珍味 | 想像妄想空疎空想うそ日記

神秘的珍味

 出勤して会社のポストをチェックしたら、レストラン『宇宙亭』のチラシが入っていた。滅多に入らないことで知られる幻の仕出しチラシで、一度食べると忘れられない味なのだという噂だ。
 せっかくなので、ランチタイムに出前を頼むことにした。だが思ったよりも貧弱なメニューしかなく、結局私は「銀河海苔弁当」を、同僚は「日の丸弁当」を注文する。
 届いた銀河海苔弁当は、海苔の表面にぽつぽつと穴が空けてあった。穴から白いご飯が見え、星空を表現しているという。なんだか陳腐……。
 ところが食べてみると、味は普通なのになぜか箸が止まらない。あっという間に胃袋に収まってしまった。隣りで見ていた同僚が「ブラックホールに吸い込まれていくみたいな食べ方だったぞ」と言っていた。
 もっと期待できなさそうな日の丸弁当には、なんとご飯の真ん中に太陽が入っていた。
 熱々なのは良かったが、食べていた同僚は突然噴き上がったフレアで口を火傷してしまった。彼はサングラスをかけて「難しいな……」などと呟きながら、黒点が出て太陽の活動が弱まった時に慌ててご飯をかきこんでいた。
 懲りない同僚は「次は天丼か月見うどんだ」と、チラシが入るのを心待ちにしている。
 私はもういいや……。