「長谷川・ロッパの家光と彦左」マキノ雅弘監督 昭和16年 | 三条河原町のブログ

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昭和30年ぐらいまでの娯楽日本映画は、
普通の人たちの生活を実感させてくれる
タイムトンネルです。



「いなせなおあにいさん」の次は、「徳川三代将軍家光」

長谷川は慈愛に富んだ力量ある名君の品格を、その登場から見事に醸し出しています。

長谷川一夫は何に出ても長谷川一夫だとよく言われますが、これが無名の役者なら全く違う人物になりきっていると、評価を受けるはずです。

化粧と扮装が代わり台詞の言い回しが違うから将軍家光に見えるという次元ではありません。 

やはり歌舞伎の約束事を完全に自分のものとしていた人でありますから、台詞の調子はもちろん、顔の表情、体の動きが全く異なります。その上で自分なりの工夫を加えているのでしょう。彦左に対する気持ちの高ぶりも、すこぶる純なものになっています。

まず伝統の形と約束事を忠実に踏まえ、そこへ気持ちを入れ込んでいく、そこから新しい工夫がうまれてくるという我々の先祖のはぐくんできた伝統芸能のすばらしさを感じます。

長谷川にはこの基礎があるからこそ、またこの基礎の大事さを誰よりもわかっていたからこそ、所詮は嘘ごとである芝居の世界に人の真実を映し出し、観る人の感動を誘うことができたのだと思います。

次に、ロッパがまたすばらしい。こんな自分を丸出しにしながら役になりきれる人がいるのだ。うまい。

ロッパと長谷川とマキノ監督、奇跡のようにこの3人がそろった。そしてこの映画がうまれた。


この映画をもう少し具体的に、次の回に語らせて下さい。