番外編 1 の その後の社員の会話になります。




道明寺フォールデングス 総務課。
近代的な広々としたオフィス。

「バタン」
ドアが開いて閉じるたびに男性社員の背中に緊張が走る。

「みんな、落着け、昨日のことは夢だ」
デスクから立ち上がってそう叫んだのは総務部部長。

「夢じゃないですよ~」
「出勤した途端、総務部新人歓迎会に代表が出席したって同期から質問攻めだったんですから」

「部長!人事部から何も言ってきてきてないですよね」
「昨日の今日だぞ」
たぶん大丈夫だと口にする部長の自信なさげな態度。

「本当に何かあるなら昨日のうちに首になってんじゃないのか」
どこからか聞こえて来た声に鈴木は思い切りデスクに頭をぶつけるようにうつぶせた。

「あんな子が代表の彼女だって誰が思う」
「まだ言ってるよ」
鈴木の悲観ぶりを見ながらあきれ顔な女性社員。

代表の彼女より思い出すのは代表そのもの。
見るだけで価値があると思う容姿。
傍で聞こえた声は仕事的な声じゃなく私的な声。
ありふれたコップを代表が手にしただけでガラスのコップがバカラに見える。

「まじかで、接して見れるだけでもういいわ」
「ずっとさそばにいたら心臓が壊れちゃう」
「かっこよすぎるよね」
「名前を呼ばれるだけで腰が折れそう~」
「やだー、名前なんて誰も呼ばれてないじゃん」
「鈴木君だけいいよね」
昨日の盛り上がりはそのまま今日に持ち越されてる女子。
男性社員のほうは未だにうつろな表情を浮かべてる。

「見て、一応写真撮ったんだよね」
数人が頭を寄せ合って自分の携帯の画面を見せあう。

「ほら、鈴木君も代表の彼女と撮ってあげてるから」
女子から見せられた写真は丁度「つくしちゃん一つ」とかバカ言ってる時の様子。
「お前ら俺を殺す気なのか」
女子から奪い取った携帯を見つめながら鈴木の口から大きなため息が漏れる。

「この時間に戻れないいかな」
「無理よね」
楽天的な女子の声が綺麗にハモった。

「失礼」
聞こえてきたその声に視線が集中。
一斉に総務課に緊張が走る。
世界中の音が止まったような静けさ。

端正な顔立ち。
洗練された容姿。
そしてクールすぎる引き締まった口元。

その後ろで「コホン」と、司をせかせるような咳が聞こえた。
「わかってるよ」
西田に振り向いた不機嫌な表情が舌打ちに不満げな声を上げる。

「執拗のない心配が社員が押しつぶして総務課は仕事になりません」
「なんのことだ?」
「代表の婚約者に言い寄ったことを後悔してるってことです」
「当たり前だろう」
「代表が寛大な対応をされたとつくし様が聞けば喜ばれるかと思いますが」
俺に対する無礼を寛容な態度で許すとする。
だからって会社内のことが牧野の耳に入る確率は低い。
あいつが知りもしないことで何時喜ぶんだ。
西田がわざわざこの話題を牧野にフルというのもおかしな話だ。
分ってるの牧野が喜ぶとか言われると悪い気はしないんだよな。
西田に言われるとおりに動くのは癪だがそれも悪くないって思える大人の感情。
これ以上西田にため息を付かせる理由もない。
この借りはどこかで返させられるだろうしな。
そんな打算的な考えを司は浮かべて「分った」とつぶやいた。

こうして仕事の合間に本来なら道明寺司が来るはずもない総務課へ姿を現すことになった。

「昨日のことは全く気にしないでくれ。俺も忘れる」
司が視線を向けのはつくしに告白した鈴木。
顔面蒼白の状況はなんら進展を見せたない。

「すいません」
鈴木が震える唇でそうつぶやいて身体が半分に折れ曲がる様に頭を下げた。

「気にしちゃいない。お前がどう頑張ったって無理だろうしな」
「牧野がなびくわけはない」
自信たっぷりの余裕の表情が司の頬に浮かぶ。

そのまま踵を返して司は総務部を出て行った。

「すげー」
「やっぱ緊張するよな」
「あの威圧感半端じゃねよな」
「鈴木良かったな」
頭を下げたままの鈴木をポンと同僚が肩をたたく。
ゆらりと揺れる身体。
腰から落ちるように鈴木が床に座り込んだ。

「こいつ・・・気絶してる」
「鈴木、大丈夫か!!!」
「誰か水を持ってきてやって」
「鈴木!お前は助かったんだぞ!」
総務部が落ち着きを取り戻して仕事が出来るようになるにはもうしばらく時間を要する様だった。


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拍手コメント返礼
captain 様
暴走しすぎない司もおいしいですよね。
滅多に出現しないし・・・(笑)

ち**様
今回も陰の功労者は西田さんですよね。

nene様
おはようございます。
社員の話が心置きなくかけるのも別館があるからかな。
本館では書けないお話もたくさんUPしたいと思ってます。

のほほん様
西田さんにとってつくしちゃんは大事な人参♪
何時も数本準備中♪ 無表情な西田さんが結構好きです。

nana 様
いえいえ、コメントが頂けるだけでうれしいです。
アラスカじゃなくてよかったですよね(笑)