DNA で苦悩するの番外編なります。
本編はこちら でお楽しみください。
「かあさん・・・来てたんだ」
「当たり前でしょ、駿の晴れ姿見なくちゃね」
キョロキョロとあたりを見渡す僕に「父さんは来てないから」って、母さんは笑った。
母さんも父さんほどじゃないが知ってる人は知っている。
母さんにその自覚がないから困ることがある。
「人前に立つのって慣れてるよね」
「やっぱり司の血だ」
「目立つし、オーラがあるし、惹きつける魅力がある」
それ・・・
親の欲目。
嬉しそうに言われるとそう反論も出来ない。
「駿君~~~~」
知らない子が手を振って「キャーっ」て叫んで逃げた。
「駿、ヘンな子に引っかからないでよね」
「ヘンな子って・・・」
「まあ、どの子でも英徳のお嬢様よりましかもね」
一人でうなずく母さん。
そういう母さんと父さんは英徳で知り合ったんだろう。
「友達できそう?」
「まだわからないよ」
友達の心配より道明寺の跡取り息子ってばれない心配をしてほしいと思う。
「私はもう帰るけど大丈夫?」
手に持ったビデオを母さんが軽く上にあげた。
「わざわざ撮ったの?」
「司に見せてあげないとね」
それだけはやめてほしい。
人前で話すことには最近すごく父さんからチェックが入る。
人を惹きつける魅力ある話し方。
説得力がなければダメだって父さんのダメ出しはすごいんだぞ。
大体学校での答辞って内容は大体決まってるんだからな。
小さい頃ならともかくこの年でビデオに撮られてうれしくも何ともない。
小さいころは何もわからず向けられたカメラに笑顔になっていたけど、今はもうそんなサービスも出来ない。
「母さんが心配するようなことないと思うけど」
「しっかり家まで帰れる?バスに乗って帰るんだよね?」
バスののり方くらい知っている。
つい最近知ったんだけど、ワクワクしながら前の人の見よう見まねで何とか無事にバスに乗れたってことは僕しか知らない。
バスに一人で乗ったのが15の春って誰にも言えない。
「小学生にする心配しないでくれるかな」
「嫌そうな、顔しなくてもいいじゃない」
「駿のことは信じてるけど、いろいろ小さい事でも心配するのは親としては当然なんだから」
「離れて生活するのはやっぱり寂しいの」
やさしく僕を見つめる母さん。
その指先がそっと僕の前髪を整えるように触れる。
「やっぱり、雰囲気は司より花沢類に似てるね。なんで似るんだろう」
それは僕もしらない。
「それ、父さんの前で言わないでよ」
直ぐ父さんの機嫌が悪くなるんだからね。
「週末は帰って来るよね?」
不安げに見上げる瞳。
こんな表情されるとNOなんて言えなくなる。
母さんを守らなきゃって思ったのはいつの頃からだろう。
僕がいなくても絶大なバリアがあるというのにね。
「わかってる」
答えた僕に母さんが安心したように微笑んだ。