あきら&葵の結婚前夜。

相変らずの司とつくしのケンカの原因は?

いつも大した理由じゃないのは分かってますが付きあいをよろしくお願いします。(*^_^*)



「結婚前夜って、なんとなくいいよね」

うっとりとした表情で二人を見つめるつくし。


「俺らにもあったろうが」

今思えば誰も邪魔しない二人だけの時間。

無人島でもやっていける順応性を見せた俺。

不安がるお前を守るってあの時確かに誓ったんだ。


海辺で抱き合って心がつながったってって思った瞬間。

どのくらい抱きあったのだろう。

つくしの髪から磯の香りがしたのを今でも覚えてる。


「アレが?」

呆れた視線で俺を見たつくし。


「やっと無人島から助かったって安堵感しか記憶がない」

「助けが来るまで結構二人で楽しんだろうがぁ」

「楽しんだって・・・」

頭から火を噴きだす寸前の真っ赤な顔が、絶句したままつくしが固まった。


つぎの日結婚式となったのは俺の計画じゃない。

それでもいい結婚式だった。

祭壇の前でこれ以上にない幸せな顔で二人で誓い合ったのは嘘じゃないはずだ。

俺たちの誓いを立てる相手にはふさわしすぎる類の神父。

その前で誓いのキス。

今が結婚式じゃなかったらどれだけ唇を合わせたままにしたかったかなんて、俺の気持ちをこいつは気づきもしてないだろうけどな。


「どれだけ私が不安だったか知ってるでしょう!!」

「お前は俺との結婚をお諦めかけてたもんな」

今思い出しても結構ムカつく。

俺は最初からお前だけって決めてたんだから。

それはいまもこの先も永遠に変わらない思い。


「人が聞いたら誤解しそうな言い回しはやめてくれない」

「いまさら照れることはないだろう、やることやってるだけだし」

「わぁぁぁぁ」

俺の口を必死に背伸びしたつくしの手のひらが塞ぐ。


「それ以上喋ったら殺す」

「俺ならお前を天国に送ってやれるかもな」

つくしの手首を掴んでなんなく胸元まで引き下ろしてニンマリと目の前で笑みを作る。


嫌がる様に俺の指先からむしりとるようにつくしの手首が離れた。

そのまま地響きが聞こえそうな勢いで俺から遠ざかるようにつくしが大股で歩く。


「おい!こら!」

やべっ。

笑ってる場合じゃなかった。

完璧に怒らせたみたいだ。

あれをなだめすかせて大人しく素直にさせるのは30分?1時間?

それ以上かもしれない。

そんな時間残ってるか?

確認するように視線を落とした時計の針は12時まであと少し。


「もう付きあえない!」


「葵さん、いこッ」
完璧に背中を向けられたままの俺。


「行くってどこに行くつもりだ」
自分でも驚くような大きな声で叫んでいた。

「美作さんのヴィラも寝室は一つじゃないでしょう」
「一つって・・・俺を一人にするつもりか」
「子供じゃないんだから添い寝の必要はないでしょう」
「誰も添い寝を頼んでないだろうが!!!」
俺が望んでるのは抱きしめてヨシヨシじゃねぇ!


「ブッッッーーーー」
総二郎がこらえきれないような笑い声を上げた。

クソッ。

俺の方がつくしに我儘言ってるみたいだ。


「我儘言うな」
あんたがそれを言う!みたいな強気な瞳が俺に食いつく。

「はむかうつもりか!」
反抗的な視線はそのままだ。

この状況でごめんなんて素直に謝るつくしを見たことはない。

こうなればなだめるも強引に迫るのも変わらない。



「牧野がいないと、司は落着けない眠れないって感じだね」
「添い寝してあげたら」
分かったような類の口ぶり。

そしてそれに戸惑いながらもポッと頬を染めるつくし。

相手が違うだろうがぁぁぁぁぁ。

「類!お前に頼まれる筋合いはねェよ」
「花沢類には悪いけど、私から折れるつもりはないから」
頑固さと嫉妬がまじりあうままに見つめあった視線の先で花火が散った。


「明日が結婚式の二人の間のお邪魔虫になることを牧野が選ぶほどの地雷を踏むって、司はなにをやったんだ?」

何時ものごとく大したことじゃないだろうの感情がしっかり総二郎から読み取れる。

拳に力を入れた瞬間に間合いを取る様に総二郎がうしろに動いた。

ここで暴力を振るうほど俺もガキじゃねェよ。


「あっ・・・そうだよね・・・」
つくしが俺の表情を盗み見るようにちらりと視線を向けた。

つくしまでの距離は数歩。

それを大股で2歩は短縮。

オッと瞳を大きく見開いたままのつくしを肩に抱き上げる。


「ぎゃー、こら!降ろせ」
「おとなしくしてねぇとプールの中に落とすぞ」

胸の前で押さえつけるように下肢に回す腕に力を込める。

指先に触れる太ももの弾力。


「総二郎の言った通りにあきらたちを邪魔するのは本意じゃねェだろうがぁ」
背中で抵抗を見せた動きがピタリと止まる。


「うっ・・・」

背中で見えない表情。

観念したように聞こえた声に俺は満足しながら俺たちの泊まるヴィラへと向かった。



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