【以下はFBに書いたものを纏めて、若干の加筆、修正を加えたものです。】

 

 2020年東京オリパラ決定をめぐる、ラミヌ・ディアク元IOC委員(元国際陸連会長)への不正送金の疑いについては、昨日、JOCから聞き取りをしました。

 

 JOCは「280万シンガポールドルをブラック・タイディングス社に送金したが、それはコンサル料。問題ない。」と言っており、その旨の元招致委員会理事長(現JOC会長)、事務局長名でのステートメントを出していましたが、JOCから聞き取りをしたところでは、その根拠は「当時の事務局長がそう言っている。」ということだけでした。契約、収支報告、財務書類とかの関連書類で裏を取ったわけではありません。

 

 しかも、招致委員会(NPO)は既に解散しているので、関連書類が何処にあるのかについて、JOCは「知らない。いずれにせよ、JOCにはない。ただ、ステートメントの根拠であった当時の事務局長の記憶は鮮明だから信じている。」そうです。余談を持たずに聞いていても、「?」が頭に100個くらい出てきました。来週、引き続きやります。

 

 本件でフランス司法省が発表した文書を私なりに訳しました(一文が長く、直訳しているため読みにくいことはご容赦ください。)。

 

【2016年5月16日国家財政検察局コミュニケ(仮訳)】
 2016年5月11日、国際的な報道機関は、2020年オリンピック東京招致委員会に由来する、シンガポールに拠点を有するブラック・タイディングス社に対する130万ユーロの支払いに関する情報を報じた。

 

  2015年12月、ロシア陸上選手のドーピングのケースにおいて国際陸連内での隠蔽に関する買収、資金洗浄事件の枠組みで、国家財政検察局は、日本のある銀行(注:不明)に開設された口座からシンガポールのブラック・タイディングス社に対する、「Tokyo 2020 Olympic Game Bid」の名目(注:用語、書式に相当する単語)での、280万シンガポール・ドルに相当する、2013年7月及び12月に行われたであろう(注:確定的な表現ではない)2つの資金移動について情報を得た。

 

 ①IOC(国際オリンピック委員会)による2020年オリンピック開催地決定に近いタイミングで行われたこれらの資金の流れの存在、②ブラック・タイディングス社の資金によってパリで行われた大規模な購入(注:何が購入されたのかは不明)が並行的に確認されたこと、及び③国際的なスポーツ競技大会(注:複数形)の開催都市決定手続きに際して行われたと思われる資金面での要請(注:誰が誰に要請したのかは不明。なお、語感としては要求したというよりおねだりに近い。)に関し、国際アンチ・ドーピング機構及び報道機関によって伝えられた情報は、本刑事調査の開始を正当化するものであった。

 

(①~③の番号は、便宜的に加えたもの)

 

 2015年12月24日、国家財政検察局は、上記の取引の性質を確定させ、また、2020年オリンピックの開催都市決定プロセスにおいて汚職及び資金洗浄の事実が行われたのかを確認するため、被疑者不詳で、能動的汚職(注:贈賄)、受動的汚職(注:収賄)、重大な資金洗浄、組織的集団による隠匿、犯罪者集団への参画の嫌疑で、予審開始請求を行った。

 

 本情報は、パリの大審裁判所財政部門の3名の予審判事に伝えられており、引き続き手続きが進むこととなる。
【引用終わり】

 

 フランス司法省がここまで言っているのに、本当に「クリーン」とか、「正当な対価」とか、「一点の曇りもない」とか言っていて大丈夫なのかね、と思います。

 

 ところで、ディアク氏がセネガル人だと言う事で、元セネガル大使館書記官としては格別の関心を持っています。

 

 スポーツ選手としては、元々は走り幅跳びの選手でした。まだ、セネガルが独立する前、フランスの大会で優勝もしています。当時から7.7mくらいの記録を残しているので優秀な選手だったのでしょう。なお、政治家としては首都ダカールの市長、国民議会副議長を経験しています。首都の市長ですから、なかなかのポストです。

 

 そんな中、ディアク氏についてフランス語の記事を探していたら、ル・モンドでとんでもないものが出てきました(ココ)。

 

 フランス語使いとして解説すると、国際陸連の会長として、ロシアの陸上選手のドーピング疑惑隠ぺい、そして、選手の資格停止を遅延させることの対価として、ディアク氏は2012年のセネガル大統領選挙において、当時、(同氏が支援していた)野党候補の選挙費用の支弁をロシアに求めたようです。ロシア側のカウンターパートは、バラフニシェフ・ロシア陸連会長(国際陸連財務担当)だったと書いてあります。額は150万ユーロです。

 

 ディアク氏は、フランスの捜査当局者に対して「現職のワッド大統領に勝つため、若者の動員等のためのカネがかかった。当時、ロシアのドーピング問題があり、バラフニシェフと話して共通の理解を得た。そして、ロシアは大統領選挙にカネを出した。うちの側ではパパ・マッサタ・ディアク(息子)が窓口に立った。」と話しているそうです。

 

 ル・モンドは「誰の支援に使われたかは、ディアク氏は語っていない。」と念押しをしていますが、誰がどう見ても、当時野党候補だったマッキー・サル現大統領の支援に使われたことが示唆されます。

 

 サル大統領、バラフニシェフ氏、いずれも否定しているようですが、ロシア陸上選手のドーピングとセネガル大統領選挙、意外なリンケージです。