障害者について、個人的に特別な思いがあります。それは恐らく小学校時代、私の行っていた北九州市立萩原小学校に「はぎわら学級」という特別学級があったからだと思います。普通の環境の中で、障害を持っている方と接した経験は今の今までとても貴重なものとなっています。

(私はその観点から、「障害者が学校やクラスで一緒になると勉学に支障が出る。」的なことを言う方に極めて批判的です。自分の経験から「そんなもので支障が出るような学業なんか絶対にない。」と心から思います。逆に、大学時代、有名私立小学校出身の同級生で障害者をネタに笑いを取る同級生がいました。純粋培養なのかもしれませんが、そういう人間に育つことを良しとは絶対にしません。)

 なので、私は時折北九州でも障害者就労の現場に行きます。一番分かりやすいのは「食堂」です。私の事務所の近くの八幡西区陣山、そして八幡東区中央町等にあります。障害のある方がとてもキビキビと働いていて、お手軽なランチがとても美味しいのです。「頑張ってね」と言うと、素直に「はい」と答えてくれるのがとても嬉しいです。

 そういう中、思い出すことがあります。現職時代、「三越伊勢丹ソレイユ」という会社に行ったことがあります。とても印象的かつ示唆的でした。既にマスコミで何度も取り上げられているのでご存知の方も多いでしょうが、三越伊勢丹の特例子会社です。

 三越伊勢丹ソレイユは障害者を雇用して、三越伊勢丹本社の業務を請け負っています。例えば、ネクタイの箱作成、クレジットカードのレシート分類等、百貨店業務の中で多種多様な業務を請け負っています。それがすごいのです。テキパキと箱を折る、レシートを仕分ける、そのスピードは私には真似ができないものです。しかも、その集中力が長く続きます。

 お会いした社長さんが「障害をハンディと捉えずに、戦力と捉えています。この根気と集中力、分かっていただけるでしょう。しかも、これによって三越伊勢丹本社の従業員の労働時間短縮になり、コストダウンにもなっています。」と言っておられたのが忘れられません。正にその通りだと思いました。

 働いておられる方の中には、重度の障害を持っている方もいました。しかし、仕事は確実。三越伊勢丹ソレイユで得られる収入+公的な様々な支援を合わせると、自立可能な水準の収入になっていました。

 あれ以来、障害者就労の見方が変わりました。しかし、これは「コロンブスの卵」だとも思いました。今の同社の姿を見てみると、それを当然視してしまいますが、三越伊勢丹本社のどの業務をどう切り出して、三越伊勢丹ソレイユに委託するかというのは社全体のことが分かっていていないと出来ません。その「ケーキの切り分け方」にコツがあるのだと思いました。

 しかし、一定の規模を超える企業であればどんな企業でも上手くケーキの切り分けは出来るはずです。上手く切り分ける知恵があるかどうか、それ以前に障害者就労をチャンスと捉えられる発想に立てるかどうか、その辺りを今後、出来るだけ多くの企業が持つべきだと思います。これは企業のみならず、行政でも同じです。

 私はよくこの「三越伊勢丹ソレイユ」の例を出しながら、企業関係者の方々に「会社全体を俯瞰して、何とか上手く業務を切り出して特例子会社での障害者雇用に繋げられませんかね。」と話をするのですが、どうも私の話が下手なせいか、意味を分かってもらえないことが多々あります。

 現在、法令によって障害者雇用を義務付けていますが、どうもこれをお荷物っぽく捉えている企業がまだまだあります。「ケーキの切り分け」方次第でやれることはたくさんあると痛感しています。「やる気」と「(ケーキを切り分ける)知恵」、この2つを持ってもらえるように政治の側も頑張らなくてはなりません。