いつも書いていることですが、地域回りをしていると「空き家」の存在がとても気になります。我が北九州市でも強烈に数が増えてきていています。

 我が町についていいますと、高度成長期、八幡製鉄所がグングンと伸びている時代に傾斜地等に土地を求めたり、山林を開拓して家屋を建設した歴史があります。私の選挙区内ですと、地名に「台」が付く場所は概ね昭和40年代-50年代前半くらいに山林を開拓した地域で、残念ながら今、空き家が増え始めています。私の事務所近辺からでも、八幡東区、若松区の方を見ると、傾斜地のかなり高い所に家屋が建っているのが見えます。

 そういう人口増加時には、政策的に固定資産税の課し方として「家屋を建てれば、税を軽減する」という政策が適当でした。メッセージは「土地を寝かせるな。有効活用すべし。寝かせた土地には高い税金をかけるぞ。」ということです。しかし、この制度が人口減少社会の中で「逆ギア」になっているということはかつて書きました。つまり、「家を取り壊すインセンティブ」がないということです。これについては、地方自治体ベースでも先駆的な取り組みが始まり、国の方でも税制の見直しが始まっているようです。

 あと、最近増えてきているのは「空き家条例」。まだ、北九州市にはありませんが、全国的には300以上の自治体で制定されています。パッと見る限り幾つかの類型があって、老朽化が激しく危険な空家について、行政が是正勧告をして、勧告に従っていただけないケースは氏名等を公表する、その辺りで止めている自治体もあれば、そこから命令をする、最終的には行政代執行までをも規定している条例もあります。

 既に空き家条例を制定している自治体の議員さんと話をしてみると、「命令とか、行政代執行なんてのはそもそもあまりやれない。勧告やそれ以前の『ご相談』であっても対応していただけることが多い。ともかくルール化して、一定の要件を具備した空き家について統一的な対応を講ずることが重要。」ということでした。私も同感です。

 あと、色々と地域のお声を聞いていると「所有者が分からない」ことによって困っていることが多々あります。雑草が歩道にまで出てきていて整理してほしいと周辺の方が思っていても、「お住まいだった御夫婦は亡くなってしまい、息子さんが関東の方にいるはずなんだけど....。」ということが少なくありません。

 本来であれば、建物を登記している方にコンタクトするのが一番早いです。ただ、それですら、経験のない方には結構な手間になります。建物が何らかの理由で登記されていない場合、当該土地を登記しておられる方とコンタクトして、「おたくの土地に建っている建物の所有者は誰ですか?」と探るということも可能ですが、これは更に難易度が上がってきます。

 更に厄介なのは、これらの登記によって所有者が判明しないケースです。公開情報では分からないということです。ここでお手上げなのですが、本当はもう一つ方法があります。「当該不動産に対して固定資産税を納めている方」の情報です。

 ただ、これには地方税法の厚い壁が立ちはだかってしまうのです。

【地方税法抜粋】
(秘密漏えいに関する罪)
第二十二条  地方税に関する調査(不服申立てに係る事件の審理のための調査及び地方税の犯則事件の調査を含む。)若しくは租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律 (昭和四十四年法律第四十六号)の規定に基づいて行う情報の提供のための調査に関する事務又は地方税の徴収に関する事務に従事している者又は従事していた者は、これらの事務に関して知り得た秘密を漏らし、又は窃用した場合においては、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 なので、同じ市役所内でも税務当局は、空き家対策のためにその情報を提供したら罰則の対象になってしまいます。

 ここが難しいのです。たしかに税務情報というのは、個人情報の最たるものの一つであって軽々に扱うべきではないと思います。ただ、厳格な縛りを掛けた上で何かやり方がないのかな、ちょっとした法解釈の変更で対応できないのかなと思わなくもありません。法改正するのも一案ですが、そこまでしなくても解釈で対応できるところがあるような気がします。折角、所有者にリーチを伸ばせる情報があるにもかかわらず、それが阻まれているというのはどうも釈然としません。

 この地方税法第22条のあり方、既に地方自治体の方では関心が高まっており、結構な数の論考も出ています。総務省や財務省に、果敢に「新解釈」を持って体当たりしていく自治体があってもいいのではないかと思っています。