フランスのフランソワ・フィヨン前首相が失言でボコボコに叩かれています。インタビューで「地方議会選挙において決選投票で左派社会党と極右国民戦線が残った時には、『最も党派色の強くない方』に投票すべき」と述べたことが叩かれています(フランスの選挙は二回投票制でして、基本的には一回目で上位2名となった者が決選投票をします。)。


 これまで、右派はそういう事態には「どちらもダメ」というのが公的ポジションでした。しかし、この発言は(意味不明なところもあるのですけど)極右国民戦線を肯定するかのようなふうにも聞こえてしまうということで批判されています。党首のフランソワ・コペからは「極右に擦り寄っているというふうに、左派社会党から議論を吹っ掛けられたら選挙にマイナスじゃないか。」と叱られています。自陣の右派内でも、親フィヨン派を含め、フィヨン前首相に同情的な声は殆どありません。次の大統領選挙を狙っているフィヨンには大打撃と言っていいでしょう。


 これが欧州の現実だと思います。国民戦線は排外主義的、国粋主義的な主張が売りです。それだけではありません。前党首のジャン・マリー・ルペンはナチスのアウシュビッツを「歴史の中の些細なこと」と表現して、世界的に批判をされました。


 フィヨン前首相は「これまでの『どちらもダメ』戦略では、国民戦線の伸長を止められなかった。対案を考えたい。」と言っているようですが、これまでどちらかと言えば穏健派で売っていたイメージがボロボロです。次の大統領選挙に出るのではないかと言われるサルコジ前大統領に対抗するため、少しマッチョな方向性を出そうとしているのではないかとも言われますが、そのあたりは私には分かりません(5年間、大統領・首相の二人三脚でやったサルコジ・フィヨンの関係は現在、最悪と言われています。)。


 ただ、確実に言えるのは、欧州では排外主義やナチスに少しでも親近感のあるような勢力に対して、幾許かでも擦り寄るかのように見える発言をするだけで、致命的とも言えるダメージを負うのです。繰り返しますが、フィヨンは別に「国民戦線に投票すべし」と言ったわけではありません。ただ、(よく意味の分からないところがある)「最も党派色の強くない方に投票すべし」と言っただけです。


 これ以上は書きません。あとは察してください。