新第三条はかなり争いのあるところです。


(国旗及び国歌)
第三条 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
2 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。


 これは国旗・国歌法の審議の際もあった議論ですが、第一項については「とする」なのか、「である」なのかはとても意義深いものです。私はこの規定はそもそも国旗を日章旗にし、国歌を君が代とすることを創設する規定ではないと思っています。むしろ、現時点でもそうであることを確認する規定だと思います。


 であれば、「とする」よりも「である」の方がいいような気がします。不変のものであることの意味合いはそちらの方が強いと思います。


 第二項については、「尊重」というのは法令用語としては少し弱い言葉です。「尊重はしたけど結果は保障しない」くらいの意味合いがあります。


 あと、現行憲法で「(しなければ)ならない」という規定になっているもので、国民にそれが課されているものを抽出してみました。国や行政に「ならない」規定が課せられているものは落としています(投票の秘密不可侵、思想良心の自由の不可侵、信教の自由、政教分離、検閲、通信の秘密、婚姻の平等に関する法律のあり方、財産権不可侵、拘禁に関する公開の法廷での弁明)。


第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第二十四条  婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

第二十七条
○3  児童は、これを酷使してはならない。


 これとの見合いで考えると、「尊重する」くらいで収めておくのも一案ではないかなと思います。なお、私は国旗・国歌を尊重している人間です。決して尊重しなくていいなんて考えている人間ではありません。


 ちなみにフランス憲法では、こんな感じです(訳が下手ですいません)。第一章「主権について」の部分です。言語として規範性があるかどうかは微妙なところですが、何となくサラッと当たり前のことを当たり前に書いているだけです。


ARTICLE 2.

La langue de la République est le français.(共和国の言語はフランス語である)
L'emblème national est le drapeau tricolore, bleu, blanc, rouge.(国の標章は青、白、赤の三色旗である)
L'hymne national est « La Marseillaise ». (国歌は「ラ・マルセイエーズ」である)
La devise de la République est « Liberté, Égalité, Fraternité ». (共和国の標語は自由、平等、友愛である)
Son principe est : gouvernement du peuple, par le peuple et pour le peuple.(その共和国の原則は国民の、国民による、国民のための統治である)


 この規定を見ていて思ったのは、国旗と国歌のところは「(フランス)共和国の(Republique)」ではなく、フランスという国(nation)のものだと言われているところはとても重要だと思います。つまり、共和国かどうかという政体にかかわらず、三色旗は国の旗、ラ・マルセイエーズは国の歌なのです。


 ここは日本でも議論に混乱があって、「国」旗、「国」歌というのは、別にその時々の政権、政体とは関係なく、不変のものとして捉えられるべきものです。国というのは、政体のみに限定されるものではなく、例えば歴史、自然、文化、そういうものの総体として、この日本という国があると考えるべきものです。どうも、国旗・国歌の議論を始めると、その時々の政権に対する批判とゴッチャになってしまう向きがありますけども、そこは別のものです。


 そういうふうに考えると、「である」、「尊重する」くらいで、創設的でもないし、規範性もないくらいのサラッとした表現の方がいいのではないかと思うわけです。もっと簡単に言うと、「国旗が日章旗であり、国歌が君が代である、当然そうでしょ?」くらいの感じでいいのではないかと思うということです。


 最後にトリビアを。フランスのラ・マルセイエーズは革命時の軍歌でして、かなり強烈な歌詞 です。「うーん、これを学校で歌うのか」と思わなくもありません。