現職時代に結構驚いたことがありまして、「自由貿易協定というのが、何なのかを知らない議員が多い」ということです。というか、私が党内の会議で、自由貿易協定の根拠規定はガット二十四条であることを紹介し、その中身を説明したところ、「嘘をつけ。そんなはずはない。」と野次を飛ばされたことすらあります。


 しかし、国際貿易のルールでは、基本は最恵国待遇(無差別原則)であり、その例外はガット24条に書いてあります。何処まで行っても、この定義を離れた自由貿易協定はあり得ません。何度も書いていますが、これまでの自由貿易協定も、これからのTPP、日EU、日中韓も、すべてこの定義に沿ったものでなくてはならないのです。


【ガット二十四条】

8. この協定の適用上、

(略)

(b) 自由貿易地域とは、関税その他の制限的通商規則(第十一条、第十二条、第十三条、第十四条、第十五条及び第二十条の規定に基いて認められるもので必要とされるものを除く。)がその構成地域の原産の産品の構成地域間における実質上のすべての貿易について廃止されている二以上の関税地域の集団をいう。


 国会審議でもお寒いものでして、過去10年程度の審議で「ガット」「二十四」のキーワードで検索を掛けてみても、ヒットするのはこの程度 でしかありません。質疑者としては、細野現民主党幹事長、同期当選の玉木議員を始めとする数名の議員がが出てくるだけです。国会での議論に専門性が欠けているのではないかなと思います。


 その中で、上記のリンクを辿っていくと、答弁者として中川昭一大臣の答弁の中に「ガット二十四条」という言葉が非常によく出てくるのに気付かされます。しかも、答弁書丸読みではない所が多く、「ああ、この方はよく分かっておられる」と感嘆します。経済産業大臣時代も、農林水産大臣時代も、自由貿易協定とは何ぞやということが分かった上での答弁です。


 自由民主党には通商問題のプロと言っていい議員がかつてたくさんいました。昔も書きましたが、農相経験者の中川昭一さん、松岡利勝さん、谷津義男さんあたりはそのまま国際交渉に出ても大丈夫な方でした。種々の事情で今、これらの方々が国会に居ないのは残念なことです。


 「聖域死守」を訴えるのも結構ですが、これだけTPPで国内が盛り上がっているわけですから、その裏にある論理、根拠みたいなものをもっともっと深める議論が展開されるべきだと思います。