コートジボアール内政は、大統領選挙をきっかけに「予想通り」にこじれています。ただ、国際社会は国連、EU、アフリカ連合、ECOWASとすべての勢力がバグボ大統領の退陣を求めています。これだけ一方的に、反バグボ包囲網ができるとは意外でした。もう少し、アフリカ連合やECOWASは足を引きずると思っていたのですが、読みを誤りました。


 まあ、ここまで来るとバグボ政権は長くは保たないでしょう。亡命先を探してあげることも必要になってきます。こういう時に使えそうなのが、サウジアラビア、モロッコあたりですね。欧州諸国の評判が悪いバグボを受け入れる窓口の広さと言えば、このあたりかなという気がします。特にサウジは、ウガンダの独裁者イディ・アミンですらジェッダに亡命させていたくらいですから、話さえつけば受け入れてくれそうな気がします。


 余談的ですけど、私が昔、外務省でアフガンを担当していた際、現アフガニスタン外相のザルマイ・ラスールを日本に呼んだことがありました。当時はザーヒル・シャー元国王の側用人のような位置付けでした。その際、ビックリしたのが彼がサウジアラビアの外交旅券を持って訪日してきたことです。ラスールはフランス語が堪能だったので、フランス語で「なんで、あなたの旅券はサウジの外交旅券なのだ?」と聞きましたけど煙に巻かれました。サウジアラビアという国にはそういう変な奥の深さがあります。


 それはともかくとして、バグボは逆に反植民地勢力的な煽り方を始めています。これが危険なのです。そもそも、南北対立がある上に、外国軍に駐留に対して広く反発がある所で、ともかく反米、反仏の感情に火をつけてしまうとすぐに暴動になってしまいます。今、導火線に火が点きそうになっているわけですから、ここは慎重に対応しなくてはなりません。望ましいのは欧米は姿を隠して、アフリカ連合のジャン・ピン議長とECOWASのグッドラック・ジャナサン議長(ナイジェリア大統領)あたりを表に出して、バグボを退陣に押し込んでいくことが良いんだろうと思います。ゆめゆめ、サルコジみたいなのが出てこないことです。


 アフリカにおける外国軍の駐留というのは、とても微妙なものがあります。特にフランス軍は私の居たセネガルにもいましたし、コートジボアールにもいました。チャド、中央アフリカ、ガボン、ジブチ・・・、まあ、戦略的に重要なところに置いている感じです。それぞれの政権との付き合い方というのは、かなり差があるようで、良好な関係を維持しているところもあれば、かなり緊張関係にあるところもあります。そして、一般的な感情としては「あまり歓迎していない」というところではないかと思います。別に隣国との紛争に出張ってくれるわけでもありませんし、そもそもの存在意義が在日米軍とは全然違うのです。フランスの国際的な戦略と(未だに残る)植民地意識に手を貸しているだけです。


 コートジボアール出身で有名なレゲエ(っぽい曲が多い)歌手にアルファ・ブロンディーという人がいます。アフリカン・レゲエで世界的に有名です。彼の曲の中で私が意外に好きなのが「Armee Francaise(フランス軍)」 というものです。ちなみに彼の代表曲ではありません。この曲、何が面白いかというとスタートから「Armee Francaise(フランス軍よ)」と言った後、いきなり「Allez-vous-en, Allez-vous-en de chez nous(出て行け、うちの国から出て行け)」と強烈なメッセージが来ることです。その後も「監視下の独立はご免だ」とか、「我々は独立国家だ」、「こんなことが長く続くものではない」みたいなメッセージが来ます。多分、アフリカの人達のホンネなんだろうといつも思います。


 だから、コートジボアール情勢を上手く纏めるためには、欧米が表に出過ぎてはいけないのですね。さて、この件は越年しそうです。来年も目が離せません。