東シナ海ガス田の件が盛り上がっています。この件については何度も書いたので、それ程付け加えることはないのですけども、「基本に帰る」という視点から書いておきます。


 というのは、「今、日本と中国との間に存在する係争地域」というのは何処なのか、ということです。今は中間線に近いところにあるガス田のみが問題になっているわけですが、もう少しマクロで考えてみる必要があるでしょう。


 中国は大陸棚については沖縄トラフまでが本来権原の及ぶ地域だと主張しています。いわゆる「自然延長論」です。基本的にこの考え方は、国際法上、現在は採用されていませんが、ともかく中国はそこまではうちの権原が及ぶと主張しているわけです。それに対して、日本は本来何処までが日本の権原が及びうる地域かということが、実は国会答弁等を見ていると、時によって違うのではないかという気がしています。


 可能性としては、2つあります。ちなみに、私は「権原」の話をしており、決して「その地点までが当然に日本の大陸棚になるべき」という議論をしているわけではありません。あくまでも、日中間の交渉のスタートラインとなるべき「権原」の話です。


①中間線まで

②日本の基線から200カイリまで


 ここで関連の「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」を見てみたいと思います。


(大陸棚)
第二条  我が国が国連海洋法条約に定めるところにより沿岸国の主権的権利その他の権利を行使する大陸棚(以下単に「大陸棚」という。)は、次に掲げる海域の海底及びその下とする。
一  我が国の基線から、いずれの点をとっても我が国の基線上の最も近い点からの距離が二百海里である線(その線が我が国の基線から測定して中間線を超えているときは、その超えている部分については、中間線(我が国と外国との間で合意した中間線に代わる線があるときは、その線及びこれと接続して引かれる政令で定める線)とする。)までの海域(領海を除く。)

(以下略)


 カッコが多すぎて読みにくいのですが、これを見ると日本は中間線までしか主張しないのだというふうにも読めます。外国と合意があれば、それに代わる線を採用することになっていますが、合意がなく係争状態にある場合がどうなのかというところまでがどうしても読み込めません。すると、やっぱり「中間線なのか」という気になるわけです。


 するとです、この法律をベースに考えると、日本は中間線までを主張してスタート、中国は沖縄トラフまでを主張してスタートということになります。仮にそうだとすると、日本は交渉で100点満点を取ってようやく中間線、中国は譲歩すれば中間線ということになってしまいます。そうやって考えると、この法律上にある「我が国と外国との間で合意した中間線に代わる線」というのは、常に日本が中間線よりも日本が割を食うかたちで譲歩した際の線のみが想定されているのではないかと考えたくなります。


 ただし、現在の交渉では日本は権原としては基線から200カイリを主張しているだろうと、(若干の希望的観測も込めて)思います。したがって、今の係争地域は日本から200カイリの線と沖縄トラフとの間を挟む地域という主張をしているはずです。しかし、その足元にある法律がその主張を十分に支え切っていないのではないかと思うわけです。具体的な案は今、すぐには出てきませんが、中国への圧力も込めて、交渉の足固めのためにも「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」の改正を考えてみてはどうかといつも思っています。内容的には「そもそもの権原としては200カイリまで主張できるのだ」という視点をこの法律に盛り込むということです。


 「東シナ海は中国との間で係争地域がある」、それはそうです。ただ、その係争地域が何処なのかということについて、日本国内で十分に共有されてないような気がします。