国家戦略局を作ることが断念されました。残念と言えば残念ではありますが、逆に言うと「そもそも、どういうものになるのかがよく分からなかったので、残念さも半ば」くらいの感じです。なお、以下において、私は決して「国家戦略局」が成立しなかったことの言い訳をする意図は一切ありません。


 この件に関しては、私は明確な意見があります。別に箱(組織)は何でも良いわけで、ともかく総理とそれを支える人間が強い覚悟と決意さえ持っていれば物事は進むし、それがないのであれば、どんなに立派な箱を作っても機能しない、ということです。そういう意味で、国家戦略局が予算作成を始めとする国政の重要なテーマについて、きちんと成果を発揮するためには、目標設定ときちんとしたスタッフがいればできたでしょうし、そうでなければ単なる屋上屋に過ぎなかったということなんだろうと思います。


 小泉内閣の際、竹中大臣が「経済財政諮問会議」をフル活用しましたが、あれは小泉内閣の前からありました。既存のそういう組織を主戦場に定めて、そこを使ってガンガンやるという強い覚悟とそれについてくるスタッフがいたからできたというだけで、別に経済財政諮問会議が最初からああいう組織だったわけではありません。


 そういう私には、「国家戦略局が成立しなくなること」は残念なことではあるけども、今、メディアが批判するほど深刻なものなのかどうかはよく分かりません。言い訳でもなんでもなく、新聞やテレビの論調がピンと来ないのです。


 「国政の大きなテーマについて、権限がきちんと付与された総理直轄の組織ができることは大事」、それはそうです。ただ、総理とそのスタッフがきちんと覚悟と決意を持って突き進むのであれば、最初に権威が付き、結果として権限も後から付いてきます。法律を元に動かなくてはならない我々がこういう言い方をするのはとても雑なのですが、しっかりとした権威付けとそれに付随する権限というのは、どの世界でもそうです。逆に、権限はあるけど権威がなければ、結局動かないわけですし。


 国家戦略局ができないことは残念ですが、それで総理の政治主導が否定されるわけでもありません(国家戦略局ができたとしても、それ自体が政治主導なわけでもない。)。もう一度、現状のツールの中で使えるものを見極めて、主戦場を決めて、そこでガンガン戦う姿勢を見せることが政府の使命であり、それを支えるのが我々の使命であると感じているところです。