最近、頓にインド映画に凝っておりまして、インドから直接DVDを購入しています。そして、とある講演をさせていただいた際にいただいた謝金でポータブルDVDプレイヤーを買って、移動の細切れの時間にDVDを見ています。特に地元から福岡市に行く際の特急の中で見ています。


 インド映画というと、何となく甲高い声で女性が歌い、男性が踊り、盛り上がるイメージが強いと思います。まあ、それは間違いではないのですが、最近は内容、映像共にレベルがとても上がってきており、社会派の内容のものが増えています。本当にお勧めなのです。


(ちなみに、議員会館にインド映画DVDのコレクションを置いていて、同僚議員に「いつでも借りに来てください。」と宣伝しているのですが、未だ誰も来ません。もしかしたら、私は変なヤツだと思われているかもしれません。)


 先日、そんな中、インド映画の古典モノと言える「shree 420」を見ました。意味は「mister 420」ということでして、「420」というのは当時の(今も?)インド刑法420条「詐欺罪」を指します。この映画、撮影は1955年ですから、独立直後のインドの雰囲気がよく分かります。私がインド映画を見る理由は、実はあの国を知るのに一番いいツールではないかと思っているからです。文化、社会風習等がよく理解できないと、ああいう異文化の国は間違えますから。


 独立当時のインド(ボンベイ)における、失業率の深刻さ、政府の堕落、貧富の格差といった社会情勢のみならず、女性の貞操感みたいなものも見えてきます。ともかく、インド独立直後の状況がこれほどよく分かる教材はないと思います。


 まあ、映画の内容は「インド版チャップリン」です。主人公の服装、立ち振る舞い、すべてがチャップリンに影響されています。貧しく田舎から出てきた青年が、優しいのだけど貧しい女性と出会って恋に落ちる、しかし、その青年はひょんなことからリッチな世界に入ってしまい、女性との心が離れる、しかし、リッチな世界の現実に目覚め、最後は女性の元に戻っていくというのが大まかなストーリーです。


 そこで、この映画でインド人の心に今でも残る歌が出てきます。それが題の「mera joota hai japani」 です。意味は「僕の靴は日本製」です。


Mera Joota hai Japani
Yeh Patloon Inglistani
Sar pe lal topi rusi
Phir bhi dil hai hindustani


(邦訳)

僕の靴は日本製
このズボンは英国製
頭の赤い帽子はロシア製
でも心はインド製


 1955年時点で、日本の製靴産業がどの程度外国に進出していたのかは分かりません。なお、これを歌っている主人公の靴はボロボロです。日本製品について、一般的に「粗悪な日常品」という認識があったのかもしれませんね。何故、ズボンがイギリスで、帽子がロシアなのか、さっぱり分かりません。


 しかし、私が好きなのが、この「でも、私の心はインド製」というところです。良いですよね、この純粋な愛国心。経済はダメかもしれないけど、自分はインド人なんだという誇りを歌うこの曲、独立直後の気風をよく表すものとして大ヒット曲だったそうです。今でも広く知られている曲のはずです。なお、この曲はソ連やルーマニアで人気だったそうです。何故なんでしょうね。


 「shree 420」は邦訳されたDVDがあるわけではありません。youtubeでは映画全部を見ることができますが、英語の字幕がありません。ということで、別にお勧めすることすら難しいものなのですが、感動できた良い映画だったので、あえて書いてみました。