党代表の交代によって、我が党内に「政策調査会」の復活が決まったようです。それはそれで了とするのですが、気になったことを書き連ねておきます。「政策調査会」とは、党側の政策機関といえば一番分かりやすいですね。かつて、自民党時代は政府が出す法案の事前審査の機能も持っていました。小沢前幹事長の肝煎りで一旦は廃止されました。


 たしかに、党の政調がなかったことによってマイナスがあったのは事実です。一番大きかったのは、政権内に入った人とそうでない人の間との政策についての知識の差が非常に大きく開いたということです。大臣、副大臣、政務官といったかたちで政権内に入った方は政治主導の下で政策面でどんどん情報が入ってきて、「ああ、かつての盲腸的な副大臣、政務官とは違うな」という印象がありました。逆に政策調査会がないことで、議員は政策面で情報難民になりかねない状況もあり、その情報量の非対称性というのはかなりのものでした(あくまでも一般論です)。


 しかしながら、議員によっては鳩山代表、小沢幹事長の下で整備された体制の中でも、上手く政策形成に深く関与できていたわけでして、そういう議員と話をしているとあまり「政調復活」への思いは強くありません。別にこれまでのままでも、党側の思いを通していくツールはあったということです。


 逆に私が非常に危惧するのが、政調復活が「①役人を怒鳴りつけ」、「②与党事前審査制を復活させたい」という思いの表れなのではないかということです。


 政治家同士というのは、何とも言えない馴れ合い的なところがあって、政治主導の名の下で党の会議に同じ党出身の政治家が副大臣、政務官として出てくると、何となく議論の過程で最後の最後まで追い詰められない心理が働くようです。これまでは党の会議で役所の局長をガンガン怒鳴りつけることができていたのに、それが出来にくくなっていたことにフラストレーションを感じた議員がいたのかもしれません。しかし、それは議員の側に問題があるわけでして、知り合いの副大臣であろうが、政務官であろうが、自分が正しいと思う政策であればガンガン押し込んでいけばいいだけの話です。何となく「役人をガンガン怒鳴りつけるのはやりやすいから、そういうふうにしたい」という欲望は裏に潜んでいないかが気になります。そこにまた歪んだ政官関係が再浮上してくるおそれもあるわけです。


 あと、これに与党事前審査制が加わるととても危険です。同僚議員が「党内の部会で特定の業界団体の利益を代表してごり押ししても『あっせん利得罪』が成立しにくい(国会審議でやれば成立する)んだよな。だから、与党事前審査制が心地良いのよ。」と話していました。まあ、そこまで行かないにしても、与党事前審査制が導入され「部会長」みたいなものができてしまえば、その部会長に対して業界団体から怒濤の陳情合戦がまた始まりかねません。私はそういうことに一切の関心がありませんが、「パーティー券買いますよ」、「寄付させていただきますよ」という誘惑が復活するかもしれません。


 小沢前幹事長が排除しようとしたのは、そういう見えにくいプロセスだったと私は理解しています。陳情を党本部に一元化するのも同じ発想です。「党が権限を集中させている」みたいな批判はありましたが、基本的なところで、私はその小沢前幹事長の発想は正しいと思っています。小沢前幹事長の発想に、時代がまだついて行かなかったということなのかもしれません。その前提に立てば、もし政調を復活させたいのであれば、(これも同僚議員のアイデアですが)政治献金、パーティー券購入制度の根本的な見直しや、場合によっては「あっせん利得罪」の要件見直しまでをもパッケージとして視野に入れるべきでしょう。


 ともかく、「政調復活」はハンドリングを間違えると、かつての歪んだ政官関係、かつての利権政治が復活するおそれがあります。ただ、野党時代と同じ感覚の政調が復活するのなら、それは誰のためにもなりません。勿論、上手くハンドリングできれば、党側の意見を上手く吸い上げ、玄葉政調会長を経由して政府にスムーズに意見を反映させることができるでしょう。その岐路は、これからの制度設計に掛かっています。