ニジェールでクーデターがありました。ママドゥ・タンジャ大統領が軍に放逐されてしまいました。こういうことが起きるのが残念でなりません。


 今から10年近く前にもクーデターがありました。当時の大統領はイブライム・バレ・マイナサーラ。独裁と人権弾圧でかなり国際的に批判を受けていました。マイナサーラ大統領は、首都ニアメの空港から出発しようとしたところを、軍人から至近距離で射殺されたのだったと記憶しています。よく背景や状況の分からないクーデターでして、当時の首相イブライム・ハッサン・マヤキが軍人と組んで権力を奪取しようとしたような報道もありましたし、何処か怪しい感じがしました。なお、マヤキは今はNEPAD(アフリカのためのパートナーシップ)の事務局長をやってます。


 ただですね、この時のクーデターの首謀者だったダウダ・マラム・ワンケ少佐は、その後短期間暫定元首をやりましたが、きちんと短期間で民政移管をしました。顔に傷のある怖い顔した人だったので、最初は「ああ、ニジェールもこれから暗い時代になるのかな。」と思ったのですが、本当に鮮やかと言ってもいいくらいの民政移管プロセスでした。そして、そこで大統領に選出されたのがママドゥ・タンジャ大統領だったわけです。


 その後、タンジャ大統領は2期それなりに大統領職を努めました。ニジェール憲法では大統領は2期までとなっています。いつも、ここで不思議に思うのが「なんで、憲法で決まっているとおり、2期で引退しないのかね。」ということです。最近のアフリカで良くあるのが、大統領が権力に固執するがあまり、強引な手段に出て、結果として世直し隊である軍が出て来ざるをえないような状況になるということです。


 アフリカでは、スパッと大統領を退いた人にはそれなりに名誉ある立場が用意されます。アフリカは長老政治的(gerontocracy)なところがあり、紛争が起こると長老が出てきては仲裁をするというようなことが頻繁にあります。そういう立場に身を委ねることが何故できないのか、いつも残念でなりません。やっぱり、栄華栄達にはしがみつきたいのか、それとも大統領職を離れると身の危険がやってくるのか、そんなことをいつも考えます。タンジャ大統領が無理筋の3期目に何故拘ったのか、「所詮、アフリカなんてそんなものなのさ」的なアフリカ・ペシミズムに陥ることなく、真摯に国際社会はこの問題を考えるべきだと思います。


 さて、今回のクーデターの行く末はまだ見えてきません。マイナサーラ大統領射殺後の国際社会のワンケ暫定政権への視線は厳しかったですが、短期間での民政移管でその悪評を高評価に転換しました。今回も軍は仕事が終われば、きちんとまた本分に戻ることを切に望むばかりです。


 全く日々の生活から縁遠い話で、「もっと生活に根ざす話にしろ」とお叱りを受けそうです。すいません。個人的な興味の強いテーマ、国だったので。