前回の続きです。


 私は企業・団体寄付はもう止めてしまっていいのではないかと思います。「企業の社会的役割」と言うのですが、そもそも企業というのは売上又は利益を最大化することを主たる目的とした法人です。「社会的役割」を否定するものではありませんが、私は寡聞にして、企業が「うちは社会的貢献として●●党に政治献金をしています」とPRしているのを聞いたことがありません。「社会的役割」をあまり強調するのは、普通の感覚からすると「企業の政党への寄付が社会的貢献かな?」と思われるのではないでしょうか。まあ、すべてがすべて「見返り」を期待しているわけではないことは知っていますが、かと言って「株主代表訴訟でも何でもドンと来い。疚しいところは何もない。」と言える企業がどの程度あるのかということでしょう。


 単純な議論をすると、見返りを期待していれば贈収賄、期待していなければ背任の「おそれ」がある(あくまでも「おそれ」です)、その微妙なバランスの中で企業は政党への寄付という「社会的役割」を果たしているわけです。そこまでして、国民は「社会的役割」を企業に期待しているのでしょうか。そういう議論がほしいところです。


 ただ、この議論をすると「政治にはカネが掛かる」という議論と結び付けられてしまいます。そういう点も含めて、私が思う「政治資金規正法等はこうしたらいいのではないか」という案をザックリと書いてみます。


● 企業・団体寄付は禁止

 恐らく、これを実施すると副次的な効果として政党の支部がガクンと減るでしょう。企業・団体寄付の受け皿としてのみ存在する支部が非常に多いことがご理解いただけるでしょう。


● ただし、個人寄付の税控除を増やす

 政治への寄付は基本的に個人からの御浄財で行うべきだと思います。アメリカのように、政治に対する寄付が集まるのを見ると、政治と国民の距離感の違いを羨ましく思います。今、日本では税控除は(色々なパターンがありますが)とてもとても単純に言うと「3割弱」です。もう少しこれを上げていいのではないかと思っています。ただ、これは税控除ですから巡り巡って所得税の税収減になるものです。つまり、国民に間接的に負担をしてもらうかたちになります。最終的には国民各位のご理解がないととても実現できる話ではありません。

 なお、今、個人寄付の税控除があるのは、国会議員、知事、政令指定都市の長、都道府県議会議員、政令指定都市議会議員までです。例えば、福岡市議、北九州市議に寄付をすると控除があるけど、佐賀市議、長崎市議、熊本市議、大分市議に寄付をしても控除がありません。このあたりをどうするかも課題になるでしょう。


● 政治家による寄付行為、及び政治家に寄付を求める行為に対する罰則を強める

 政治にカネがかかることの原因の一つとして、政治家が出す「事実上の寄付」が負担になっているケースが多いように思えます。これは現行法でも禁じられています。ただ、昔、ある会合で「あの議員は金一封を持ってきたけど、あの議員は持って来なかった」みたいな話が飛び交っているのを聞き、実際のところは「金一封」の誘惑に抗するのは難しいなと思ったものです。まあ、それをかわそうとして「会費」みたいな名目で出している方を見たことがあります。「会費」というのが是認されるのは、その場にいるすべての人間が出席するに際して負担していることが条件です。そうでないものはやっぱり法で禁じられる「寄付」になるんだろうと理解しています。

 これまた、詳細な具体例は出しませんが、実はある自治体が催すセレモニーで「議員のみ会費5000円」みたいな案内状が出ているのを見たことがあります。これは完全に違法行為です。その自治体の庁舎に行ったら「政治家に寄付を求める行為は違法です」という看板が出ていましたが、「あんた自身、違法行為をやっているじゃないか」と憤慨しました。

 なので、政治家による寄付行為、及び政治家に寄付を求める行為への罰則を強化して、一発で罰金刑なしの禁固刑+失職にしてしまえばいいように思います。他の罰則との均衡という議論はあるでしょうが、一発で禁固刑+失職にしてしまえば、さすがに怖くなって「事実上の寄付」も含めてカネを出す話はなくなるでしょう。


● 記載漏れへの罰則強化

 よく、怪しい裏金を貰っていた政治家が「スイマセン、報告書への記載漏れでして」といって、報告書修正で済ませているケースがありますね。勿論、本当にうっかりの記載漏れまで罰し始めるのはやり過ぎですが、世間的に問題になるのは「どう見ても悪意の記載漏れ」です。一定の金額以上の記載漏れは罰則を設けることがいいのではないかと思います。そもそも、数十万円のお金を「(記載するのを)忘れてました」という感覚は、普通の方には理解できないはずです。ともかく、政治資金については表に出さないといけないという文化が政治家側に根付くことが肝要です。


● 脱法行為への「蓋」をしっかりと設ける

 なかなか、これは難しいのですが、企業・団体献金への道が完全に閉ざされると、個人寄付を通じた脱法行為への誘惑が出てきます。このあたりはあまりやり過ぎると、個人の寄付行為への萎縮効果が出てしまいますけども、「純粋に個人による寄付のみにする」ための方策は考えうるのではないかなと思っています(具体案がなくてスイマセン)。


● 政治資金パーティー

 ・・・・、これについてはどうもまだ思いが固まりません。企業・団体寄付の道がなくなると、今度は政治資金パーティーが盛んになるでしょうね。まあ、ここについてももう少し考えたいと思います。


 書いてみて、「純粋路線を行きすぎかな」と思わなくもありません。ただ、「政治とカネ」の関係を一番きっぱりと整理しようとするならば、多分落としどころはこのあたりでしょう。罰則の恐怖感で規制しなくてはいけないのは残念ですが、国民各位の目線は厳しいのだということをもう一度、自分自身かみ締めたいと思っています。