日本版ミシュランが出来たということでちょっとした盛り上がりになっています。ミシュランというのは実はタイヤの会社なのですが、何となく日本では「美食の本の会社」的なイメージが強いのではないでしょうか。


 やっぱり日本食は高く評価されますね。ミシュラン東京版だけで三つの星がついた店が8件もありました。フランス全土でも20~30くらいじゃなかったかと思うのでなかなかの数字です。一つ星が117、二つ星が25というのも相当にすごい数字だと思います。


 私の感覚では星が付けば相当なもの、味は一つ星でも三つ星でもたいして差がなくて、あとは店の雰囲気作りとかが絡んでくるという感じです。私の味覚がダメなせいかもしれませんが。


 かくいう私も無理をして三つ星のレストランに行ったことがあります。フランスにいた頃、ストラスブールという町に住む同僚(男性)とかなり無理をして三つ星レストランでのランチにチャレンジしました。ただ、そもそも私は同僚のところに行くのに気軽な格好で行っていたため、スーツとかネクタイとかを持っていませんでした。そういうレストランにTシャツ、ジーパンで行くというのはあり得ないと聞かされた私は同僚からジャケットとネクタイを借りていきました。しかしながら、その同僚は私よりも背丈、横幅が2回りくらい小さかったので深呼吸をすると服がビリッといきそうなくらい超キツキツのジャケットを着ていたことになります。今、思い出しても不恰好だったよなと思います。


 行くとまず違和感を持たれたのが、男二人で入ってきたことです。ちょっと特殊な性癖を持つ二人だと勘違いされたかもしれません。フランス滞在中、2~3回星が付いているレストランに行くことがありましたが、残念ながら女性と行ったことはありませんでした。大体、様相、服装共にイケてない感じの男で行く(行かざるを得ない)ことばかりでした。


 まずは食前酒あたりからスタートです。なかなかメニューも出てきません。そう、こういう超一流の場所ではそんなに急かされながらは食べないということにその時気付かされました。かなりくつろいだ後にメニューが出てきます。これがちんぷんかんぷんです。「●●風」とか「●●を添えて」みたいな言葉がたくさんついた料理は正直想像できません。しかし、負けず嫌いな私はボーイに「これはどんな料理だ?」と果敢に聞きますが、説明されても全然分かりません。結局は「じゃあ、コースで」という陳腐な選択になるわけです。


 あとは濃い感じの食事がフルコースで出てきて、チーズ食べて、デザート食べて、コーヒー飲んで・・・とやっていたら3時間半くらいの時が過ぎてしまいました。12:00に入店したのに出てきたのは15:30、キツキツのジャケットで長々と食べて、本音ではかなりうんざりしました。お値段は900フランスフラン、当時の金額で20000円弱くらいです。色々な意味で泣けてしまいました。


(どうでもいいことなのですが、フランスではチーズはメインの後に出てきます。多分、デザートに似た感覚なのではないかと思います。私はいつもパンと一緒に持ってきてくれと頼んで嫌な顔をされてました。フランスで中華料理を食べる時もオードブルがあって、メインが出てきてデザートみたいな感じなのですが、せっかちな私は全部一緒に持ってきてくれと頼んでは不思議そうな顔で見つめられたものです。)


 しかも、昼間からフルコースに近い濃い目の食事を食べてしまったので、とてもではないですが夜まで何かを食べようという気にはならず、たしか夜は同僚の家にあったカップラーメンか何かを食べて済ませたような気がします。どうも体質的にそういう店で時を過ごすのが向いてないことをしみじみと感じました。


 ミシュランの星付きレストラン、日本でどういう店が入っているのかは細かくは知りませんが、私は「ちょっと、その手の店は馴染めないので・・・」というのが正直なところです。ちなみにワインについても全然ダメです。外務省時代に「大体、木の腐った匂いのするワインは高級だ」と実体験に基づく暴論をぶっては、ワイン通と自称する上司に「こいつはダメだ」と思われていたようです。まあ、別にいいんですが。