この前、北九州市八幡東区をプラプラとチャリンコで回っていた時のことです。「あっ、またこの種の店舗がここにも出来たのか。」とちょっとイヤな気分になりました。


 「この種の店舗」というのは一言で説明するのが難しいのですが、大体以下のような特徴を持っています。


● きちんとした店というよりは、事務所スペースや廃業した店舗を間借りしている。長期に亘って営業をするつもりがない。
● 店の中は極めて安上がりな作り。ホワイトボードがあって、その前に事務用椅子が数十並んでいる。しかも、殺風景で商品のダンボールなどが置いてあるのが見える。
● 店舗は外から見えるガラス張りになっていて、ガラスにはビラがビッシリと張ってある。
● ビラを読んでみると、総じて「健康食品フェア」ということになっていて、効能が不明な商品の紹介がしてある(もうちょっと言うと、法律上マズい書き方はしていない。効能とかについてギリギリのラインを狙った表現がしてある。)。
● しかし、その前に必ず「来店者へのプレゼント」としてしょうゆ、みそとかパンとかがタダで貰えたり、廉価で買えたりするようになっている。
● 朝、そこを通ると「来店者へのプレゼント」に惹かれた高齢者の方が列をなしている。


 言葉が足らないかもしれませんが、一度見たことがある方は「あー、あれか」と分かってもらえると思います。東京23区内ではあまり見ませんでしたが、それ以外の場所では大体全国津々浦々やっているような気がします。東京でも三多摩方面に行くと時折見かけました。


 まずはタダのプレゼントで人を店舗の中に入れる。そして、一旦入れたら手練手管の話術で商品を説明する。そして売りつける時は集団心理を上手く利用する、これに尽きます。「このサメの油、本来でしたら1瓶3万円のところ、今日は大特価9800円」と言われるだけでは賢い現代人は動きませんが、周囲が威勢良く購入する姿勢を見せると「じゃあ、私も」という衝動が起きてきます。特に日本人は文化的にその気が強いですし、日本人的謙虚さから来る「モノまで貰って、しかも皆買っているから」という気持ちをお持ちの高齢者の方になると尚更です。例えが良くないかもしれませんが、ダチョウ倶楽部のネタで「この試練にチャレンジする人?」と振られ、皆がハイ、ハイと手を上げるので、上島が嫌々ながらも「皆が手を上げるなら」とばかりに手を上げたら、リーダーや寺門ジモンから「じゃあ、お前」と言われるのと同じような気がします。私は「このネタ、集団心理の基本中の基本を突いているよな」と感心しています。


 そして、本来なら法令上可能なクーリング・オフについても適当に説明して、あまり返品が生じないようにして、最後は数ヶ月で店舗をたたんでしまう。まあ、こんな感じでしょう。この手の店舗は、法令の網を潜り抜けながら上手く立ち回っているので警察も手を出しにくそうです。何となく法令強化とのいたちごっこのようです。


 具体的にどうすれば良いのかは、ちょっと調べてみたいのですが、あの手の店舗の顧客は総じて高齢者の方が多いです。しかも、金銭的にゆとりが非常にある人は対象になっていません。列をなしている方を見る限り、私の目に間違いがなければ年金を頼りに生活している方が主でしょう。そういう人をタダのしょうゆ、みそ、パンで釣って、効能が定かでないものを集団心理を利用しながら高く売りつけようとするという商法はやっぱり許しちゃいかんだろと思います。ああいう商法は絶対に取り締まれるようにしなきゃいかんと信じています。憲法で認められる経済活動の自由はありますが、あらゆる法令を駆使して潰してしまいたいというのが私の信念です。


 実は私は冷やかし半分、実地調査半分で高齢者に混じってこの手の販売会に一度入ってみたことがあります。タダのプレゼントは断り、販売会中ずっと眼光鋭く見ていました(自分で言うのも何ですが、結構圧迫感があったと思います。)。若い販売員の人は無気味に思ったのでしょう。説明や販売は非常に控えめで、その会は全然売上が延びませんでした。普通に販売したら、その程度のことなんですけどね。やっぱり集団心理を煽るというのは怖いものだと思います。