サントリーホール スペシャルステージ 2016
アンネ=ゾフィー・ムター
ヴァイオリン・リサイタル
2016.10.5(水) 19:00開演
サントリーホール
ヴァイオリン: アンネ=ゾフィー・ムター
ピアノ: ランバート・オルキス
プログラム:
セバスティアン・カリアー / クロックワーク(日本初演)
モーツァルト / ヴァイオリン・ソナタ イ長調 K526
レスピーギ / ヴァイオリン・ソナタ ロ短調
サン=サーンス /序奏とロンド・カプリチョーソ イ短調 op.28
前夜の室内楽に続いて、2日連続で、
ムター&オルキスをサントリーホールで聴きました。
こんなにすごいプログラムなのに、学生は1000円。
発売初日に、P席中央の学生席を購入し、
プラス、大人の私も、学生席近くの
P席中央の席を取ることができました。
チケット代が高めなので、2階3階と、1階の端の方は、空席が目立ちました。
しかし、バックステージは満席。
学生席(C席)らしきLDとRDも満席でした。
昨夜の室内楽も素晴らしかったです。
若手を育てる音楽セミナー的な雰囲気とチャリティ要素があり、ムターさんの教育者としての素晴らしい一面があらわれた演奏会だったと思います。
そしてさらに、
今宵のヴァイオリン・リサイタルは、
ヴァイオリンの女王&サントリーホールという、
世界最高レベルのステージでの、
スペシャルな雰囲気が満載でした。
スペシャルなステージには豪華な花が飾られていました。
ムターさんは、深みのあるグリーンのマーメイドタイプのドレスで登場。
スタイル抜群で、本当にお美しいです。
ドレスはいつも、ディオールのオートクチュールなのだそう。
オルキスさんはもちろん燕尾服姿。
特別感が漂います。
1曲目のアメリカの作曲家カリアーのクロックワーク、
日本初演とプログラムには書いてありますが、
クーリエ表記でかつて演奏された曲とは別の曲?
なにはともあれ、演奏機会が少ない現代曲であることたしか。
オルキスさんのピアノは、昨夜のチェンバロも良かったけれど、やはりモダンピアノの方が上手さが際立ちました。
本日のピアノは、艶消しのニューヨーク・スタインウェイ。
現代曲を素晴らしい音色で聴くと、芸術を堪能している充足感が半端なく、大きな喜びを感じます。
ムターさんのヴァイオリンもオルキスさんのピアノもとても素晴らしかったです。
トリルの鈴の音のような響き。これは一瞬でしたが、私が最も大好きなヴァイオリンの音のひとつ。
この現代曲は、そういった類稀な音色を聴くことができて満足でした。
2曲目は、モーツァルトのヴァイオリンソナタ。
ヴァイオリンソナタは、ピアノとヴァイオリンが対等な曲。(ピアノとヴァイオリンのためのソナタ)
ピアノは絶品。オルキスさんは、コピー譜を貼り合わせた楽譜を自分でめくりながら弾かれていました。
このモーツァルトは、ムターさんらしく華やかで情熱的な演奏。
ひょっとしたら好みが分かれるかなと思いながら聴いていました。
ムターさんクラスの一流の演奏家が、モーツァルトをどう解釈しようが一流の芸術であることに間違いありません。
私は端正で清澄なモーツァルトも好きなのですが、そもそも作曲された当時と楽器が違います。
ピアノだけでなく、ヴァイオリンだって作られた当時のそのままで使われているのは稀で、より大きな音やより高いピッチに対応するために、ほとんどの楽器は改良・モダン化されています。
もしもモーツァルトが現代に生きていたら・・。
当時最先端の流行の作曲家だったのですから、新しい楽器に対応すべく、モダン楽器での芸術的演奏を望んだかもしれない、とも思うのです。
もちろん、作曲された当時に思いを馳せ、原点回帰で芸術を見つめるのもよし、
いろんなスタイルがあってもよいのかな(ただし巧ければ)、と思いながら聴いていました。
休憩後は、レスピーギのソナタと、序奏とロンドカプリチョーソ。
後半に行くにつれて、どんどん盛り上がっていきました。
レスピーギは、情熱的でロマンティックな曲。
ムターさんらしくドラマティックな演奏でとても素晴らしかったです。
しかし、オルキスさんはなにを弾いても本当に上手いですね。
ムターさんとコンビを組んで28年。息はぴったりです。
かのロストロポーヴィチの伴奏者も11年間に渡って務め、世界の檜舞台で演奏してきたピアニスト。
1946年生まれだから70歳。ピアノを弾く時は年齢を感じさせません。
音に関して言えば、
P席なので背面からの音ですが、
今回は不自然さも違和感もなく、
充分に満足できました。
むしろ、至近距離でオーラをひしひしと感じることができてよかったです。
ヴァイオリンは、向きによって音が大きくなったり小さくなったり、かなりの差があるはずなのですが、
ムターさんのストラディヴァリウスはおそらく音の飛んでいく方向が全方向においてバランスがよい楽器なのではと思います。
サン=サーンスの序奏とロンドカプリチョーソが一番良かったです。
ヴァイオリンの歌わせ方、テクニック、全てに魅了させられました!!
この曲はもともとオーケストラ伴奏の曲ですが、ピアノ伴奏ヴァージョンは、ビゼーによるもの。
(このピアノ伴奏にはとても難しい箇所があり、たいていのピアニストが楽譜通りには弾かないのですが、音楽の流れ重視でOK)
お二人共、素晴らしかったです!
聴衆は正直で、弾き終わるや否や、ブラボーが飛びかいました。
(このブラボーの声も聞いていて気持ちよかったです)
この時点で、ちょうど9時をまわったあたり。
非常に盛り上がって、アンコールは、6曲!
どの曲も素敵で、センスのいい選曲。
最後は、タイスの瞑想曲でしっとりと終わりました。
お二人はカーテンコールのたびに、毎回、うしろを振り返って丁寧にお辞儀してくださいました。
(なんといってもバックステージは満席。とても盛り上がっていました)
前日の室内楽でもそうですが、振り返ってのお辞儀、とても嬉しかったです。
終演は、9:40頃。
終演後のサイン会には、前日ほどではないけれど、長蛇の列ができていました。
すごい人気ですね。