近頃保守ブログに疎遠な理由の一つに  実は最近、裁判というものをやっている。ということがあります。

 と言っても知人の、交通事故なんですけどね。
 

 本業プラス、ボランティア、プラスアルファにプラスなんで、法科では無い私には中々大変なんです。


 裁判にまで発展した訳を申しますと、事故そのものは、車両同士の接触事故で単純なものなんですが、相手が右後方から追い抜きざまに接触してきたのに、過失割合は7対3 と言ってきた事にあります。

  
 相手は

 「両車が走行している状態での事故に10対0は無い。私は保険の仕事をしているのでそのことを良く知っている」と言ったようです。



「え、何で?普通に速度を守っていた私が後ろからぶっつけられて、どうして30%の過失責任を持つの??不合理。納得できない」という事で裁判に至ったという次第。

 


 このとき知人は、保険に弁護士費用が添付されているので、全てお任せで事が運ぶと思っていたようです。
 勿論そんな訳に行かない事は私ならずとも中学生レベルでも解りそうなことなのですが……。

 

 まず、弁護士さんが訴状を書いた段階で、こちらの保険担当者は業務から離れます。
 つまり、こちらは支払い義務が無い0、と言って裁判する訳ですから、保険会社は介入出来なくなります。(個人的なレベルではアドバイスはあるようですが、これに心細くなったのですね)


 相手は当然、保険担当者プラス弁護士という布陣ですから、知人はビックリして「裁判をやるべきだ」と言った弟さんに相談し、弟さんから私に声が掛かったというわけです。



 因みに、原告である知人は年齢70歳代。女性。運転歴52年事故歴無し。パート。 車はアクアですから、 仮にAさんとします。


 被告は年齢40歳代。女性。共済組合勤務。車はスバルBRZ。だからBさん。



 そんな訳で、裁判を経験した事が無い皆様の参考にでもなればと、交通事故裁判劇場でも書こうかなっというのが今回の趣旨。
 

当然ですが、場所、人物その他個人を特定できる危険のある内容は省いての、物語的記事ですし、感情移入も致しますので公平公正とは参りません。

 だって、競技もそうですが、応援するチームがあった方が絶対面白いでしょ。
 

 ですから皆様にはわたくしの側に立って推移を見て下さればと思います。

 その他の、偶然訪れた方は、事故見物の野次馬的に読んで頂ければwwよろしいのでは……と思い、当人の許可を頂きました。

 


 さて……物損ですから裁判は民事です。
 まず原告の「訴状」から始まります。
 

その内容は、

「被告は車の修理費用と利息を支払え」「印紙代、その他裁判費用は被告の負担とする。とする仮執行の宣言を求めます。

次に「請求の原因」で事故の内容が述べられ、事故態様から原告には避ける事が出来なかった。


 だから「責任は被告に有り」
「過失割合は被告10割原告0割」として
「被告の不法行為によって受けた被害額、弁護士費用、について、民法所定の年5分の利息を加えた額の支払いを求める」

 という内容と、修理部位の写真。修理代金請求書、警察の作成する「物件事故報告書」の写しなどを証拠として添付し、裁判所と被告に提出します。

 

因みに……ですが。


 訴えた側が原告、訴えられた側が被告。ということは皆様ご存じでしょうが、刑事と民事は被告の形態が少し異なる部分が出てきます。そのため刑事では被告人、民事では被告と称するのだそうですが、これ ご存じでしたか?。



 ドラマの法廷で、犯人に対して「被告は…」と言っているの結構あったように思いますが、実際の裁判では「被告人は」と言っていますよ。と教えて頂きました。

 

さて、この訴状を見た被告側は、その内容に対して、間違いの無い事は「認める」 反論すべき事は「否認」し、「争う」とする「準備書面」というものを作成してきます。
 

これが検事と弁護士が法廷でやり合う刑事事件と違って、じみ~に時間がかかる所以なのですが、民事は言った言わないの水掛け論になりやすく、金の貸し借りなど決定的な物証が乏しい場合があるので、この内容と証拠の数、確かさこそが、裁判官の判断基準に寄与するので勝利に繋がるのだそうです。

 

 さて、相手は被告準備書面1で、事故態様以外の修理費の額、その他は「認める」
 「事故態様は否認し、争う」だから責任原因についても「争う」結果「過失割合」についても「否認し、争う」
 という準備書面を送ってきました。


 Aさん、これを読んで目が点になります。

 なかでも理解出来なかったのは被告が述べる事故態様で、今でも何のことかまったく理解出来ないと言います。

 


 ここで、どのような事故であったかを説明しておきますね。

 時は9月の初日、夕方の6時半。道路は京都市郊外を東西に走る、片側二車線の比較的交通量のある幹線道路。対向車線とは分離帯で分けられています。
 事故態様。
 Aさんは通い慣れた道路の左第1車線を、時速50キロで東進中、右後方第2車線を、Aさんより早い速度で走行してきたBさんが、追い抜き様、突然車線変更したためにB車の左側面がA車の右側面に接触した。

 

両車は急停車しましたが、B車は一度バックしたのち猛スピードで発進。Aさんは当て逃げだと思いB車のナンバーを確認しました


 するとB車は50メートルほど前方左にあるドコモショップ前の駐車場フェンスと歩道の間に停車したので、Aさんは車を発進させ、B車の後ろに車を停めました。
 

 Bさんは4~5分待っても車から出てこないので、痺れを切らしたAさんがB車の右ドアに近づくとようやく降りてきて、「怪我は無いですか」と言ったそうです。
 Aさんは右上腕が少し痛かったそうですが、たいしたことは無いと思ったのと、人身事故になったら相手が困るだろうと思い、「怪我はどうもない」と言いました。

「あなた、いったいどこを見て運転してはるの」
「ちゃんと前見て運転してました」
「前見て運転してたら当たる訳ないやないの」
 という会話の後、ようやく相手から「すみません」という言葉を聞いたそうです。

 

 この時Aさんは
「絶対スマホ操作しててハンドル切り損なったんやわ。だから、証拠隠滅するためにすぐに車から出てこられんかったんとちがいますやろか」
 と思ったそうです。


「車の修理を保険でしたいので、警察を呼んでいいですか」というBの言葉に、あんたがぶつけたんやからあんたが直すのが当然、、と思っていたAさんはこれを了承し、警察への事故説明は全部Bさんが行い、Aさんは警察官から「前に止まっているあの赤い車にぶつけられた事に間違い有りませんか?」と聞かれて「間違い有りまへん」と答えました。



 このなかで訴状に記されているのは事故発生現場の住所と事故態様の3行だけです。通常はこれで充分なのだそうです。
 つまり、証明出来ない事は書いても意味が無く、裁判官、相手の弁護士が納得でき、反論できない事を並べる事が大事。というのがこちらの弁護士さんの姿勢でした。

 

 次に、被告準備書面1に書かれている、Bさんの述べる事故態様です。

 

 この道路にはAさんが言う事故現場の前方約40メートルの所に、10メートルほどの分離帯の切れ間があります。
 これは反対車線南側にある消防署から、緊急車両が出動するための切れ間ですが、この切れ間を使う右折車が、対向車が続くために停止していて、その為に後ろに数台の車が止まっていた。と言うのです。

 


で、Bさんは第2通行帯を、左方向指示器を出してそのまま進み、停止直前、安全確認をして左にハンドルを切ったら第1通行帯を走ってきたA車が接触してきた。これはAさんが高速で走ってきたためで、前方注視義務を怠った事故である。
という内容。

 

 だから、責任原因はAさん。
 過失責任はBの進路変更を責任としても、別冊判例タイムズ38号【153】図のとおり、原告3割被告7割である。それを本件に照らし合わせて修正した結果Aの著しい過失であるから、原告4割、被告6割である。

「え~。何これ……」Aさん絶句。いや私だって開いた口塞がりまへん。世の中にはこんな人居るんですねー。

 

  しかも、被告準備書面1には、このあとにも、事故車の修理前の写真が累々と続き、この傷は後ろから前に流れる傷。この傷も後ろから前に付いた傷と、誰が見ても判断の付かない傷を、全部Aさんが後ろからBさんに当たり、前に抜けた為に出来た傷やと書いてあります。 

 Aさん 「普通に走ってて車壊されて、それが何でこんな訳のわからん事故になって、私がぶつけたことになるの。もう考える事できません。頭、痛いから、りんご先生お願いします」と言って泣きながら家に閉じこもってしまいました。


 

 Aさんはパートで介護の仕事をしています。
 働き者のご主人と二人暮らし。もの凄く良い人で、人の痛みがわかるご夫婦です。
 借金の保証人になったばかりにマンションを手放されましたが、「それでみんながうまくいくんだから」というご主人に、にこにこ笑いながら従うAさんです。
 70を超えても、「私より身体の不自由な人が居るから」といって介護士の資格を取りました。
 

 今回の事故も、相手が誠意を持って謝罪をし、壊れたところを直してさえくれればそれでいい。事故は誰でも起こす可能性があるのだから。と、相手を気遣っていたAさんの善意は見事に裏切られました。
 
 それなら、反撃だ!!
 
 現在の事故と裁判の詳細な状況を本人と弁護士さんから伺ったりんごにも、怒りの炎が燃え上がりました。
 正義は我にあります。絶対勝ちたい。「両車共に走行中の事故に10対0はない」という相手の保険屋の言う事なんかぶっ潰してやる。
 
 まずは弁護士さんから民事の闘い方をレクチャーして頂き、りんごの疑問を正すところから進めて参ります。