- 棘の街/堂場 瞬一
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自分には何もない、そう思っていた。
自分は刑事でしかない――
唯一の拠り所が揺らぎ始めた時、
“ここではないどこか”を求めた男は忌み嫌う故郷に戻っていく……。
己の存在意識、組織と個人、そして親と子。
様々に揺れる心情を丹念に描き切った傑作警察小説！
地方都市・北嶺で起きた誘拐事件。
県警捜査一課の敏腕刑事・上條の犯したミスによって被害者が殺害され、
捜査は完全に行き詰っていた。
そんな時、集団暴行を受けていた少年を保護した上條は、
少年の姿に街の閉塞感に耐えきれなかったかつての自分を見る。
だがそれは、自らの誇りを取り戻すため捜査に猛進する上條にとって、
封印してきた過去と対峙することを意味していた……。
――――― 帯より
個人的評価 ： ★★★☆☆
また感想書くのに悩むな……。
「面白くない」とまで言ってしまうのは少々行き過ぎかな、と思う。
ただ、どうにもパッとしないというか。
自分のミスで誘拐事件の被害者を死なせてしまって、
その事件に拘るあまり暴走して孤立した上條の組織内での立場とか、
上條を中心とした親子間のすれ違いとか、
保護した少年の件とか、どれもこれも。
小説・物語において目新しいものでもなく、
グッと引き込まれるほどのこともなく。
事件の真相もまた気分の悪い話で。
きっかけになったある物にしても、
それに振り回された中心人物の歪みっぷりにしても。
現実に起こりえない話じゃないと思うから
余計に厭な気分になっちゃうような。
そのゼロなりマイナスの分を補ってプラスに持っていってくれるほど、
キャラクターが魅力的だとも思えず。
孤立した上に、自らさらに周りとの溝を深め続ける上條にしても
保護した少年にしても、元同級生のヤクザにしても、
店を任せている父親の旧友にしても、
誰も好きになれないまま淡々と読んじゃった。
逆に集団暴行の加害者側の主犯の少年も、
歪ではあるし、「うわぁ……」という気持ち悪さは感じるけど、
だからと言って後々まで強い印象を残すほどでもないし。
誘拐事件の被害者遺族だとか、少年たちを診た医者だとかは
それぞれ上條との関係がどうにも中途半端に思えて仕方なかったり。
とにかく感想を書こうとしたときに、
「好き！」のポイントが浮かばないんだよな……。