『38℃ 北京SARS医療チーム「生と死」の100日』 麻生幾 | 鈴と空のブログ

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読んだ本の紹介を簡単に。
あとは気になる人やニュースなんかについて思ったことを書こうかなと。
たまに真面目なことをかいたりもするかも。

38℃ 北京SARS医療チーム「生と死」の100日/麻生 幾
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六百年前、

ヨーロッパの約二千万人を墓場に送り込んだ「ペスト」は、
疫病の語源とさえなった。
ジュール=エリー・ドローネーは絵画《ローマのペスト》(1869年)で、
天使と悪魔が争うように

新たなペストの犠牲者宅に訪れようとする姿を、
不気味に描き切った。
そこに込められているメッセージは、
疫病とは必ずや「死」を突きつけるものだという残酷な現実だ。
だが、我々人類は疫病の教訓をすでに忘れ去った。
ウイルス、最近にとって人類はこれからも恐らく永遠に
“捕食”の対象である、という運命を忘れているのである。
ゆえに2003年春、

正体不明ウイルスとの戦争で使われた人類の“武器”は、
「38℃」以上の発熱という古来からの診断方法でしかなかった。
――――― 表紙袖より


永遠なる戦争。
この壮絶な医療オペレーションは、日本人こそ教訓とすべき現実だ。
そして、病原性微生物との“生物戦争”に生き残るため、
このパニック・ドラマは誕生した!


SARSウイルスとの生物戦争
全世界の負傷者(感染者) 8422名
中国の負傷者 5327名
中国の戦死者(死亡者) 349名
北京の戦死者 192名   (2003年12月3日現在)
――――― 帯より


自分自身も正にそうなんだけど、
「喉元過ぎれば」な感は否めない。
SARSだけじゃなくて、自然災害なんかにしても。


その「過ぎれば」にしても簡単に過ぎていったわけじゃない。
そこには医療関係者を筆頭に命がけで闘った人たちがいて、
死の恐怖や差別から何とか生還した人たちがいて、
命がけの闘いの結果、大切な人を亡くした人たちがいる。

なんだけど、そういうことをつい忘れがち。


原因も治療法も手探りな状態の中、
大勢の患者のいる現場へ飛び込むというのは
覚悟も使命感も恐怖もとんでもないものだったと思う。


現場に出ることを一度は志願しながら

「辞めたい」という気持ちも分かるし、
「うちの娘をそこで働かせないで」という

看護師の親の気持ちも分かる。


使命感に燃えて患者と向き合ったのに、
慣れない防護服やら緊張やらでパニックを起こして
現場から外されて泣き崩れた看護師の姿には泣きそうになった。


防護服の効果・影響なんかは考えたこともなかった。
あれがそんなに息苦しくて不自由で大変なものだとは知らなかった。