マチェテの戦い(仮題)/ La primera carga al machete (1969) | MARYSOL のキューバ映画修行

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【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
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La primera carga al machete 1

マチェテの戦い(仮題)』(La primera carga al machete) 1969

モノクロ、フィクション(80分)

監督:マヌエル・オクタビオ・ゴメス(助監督:ファン・カルロス・タビオ他)

撮影:ホルヘ・エレラ

編集:ネルソン・ロドリゲス

音楽:レオ・ブロウェル(歌:パブロ・ミラネス)

脚本:アルフレド・デル・クエト、ホルヘ・エレラ、マヌエル・オクタビオ・ゴメス、フリオ・ガルシア・エスピノサ

 

あらすじ 

第一次独立戦争(1868-78)が始まる年の10月のキューバ。

スペインとの従属関係に対する不満や、自由で公正な社会を求める気持ちは、東部のキューバ人たちを反乱へと駆り立て、バヤモはキューバ解放軍の支配する所となった。その動きは、新聞を通して、ハバナにも伝わる。

映画は、1868年10月25日のバヤモ攻防戦をクライマックスに、第一次独立戦争初期の様子を、まるで当時のドキュメンタリーフィルムを観ているかのような、臨場感あふれるカメラワークと演出で描き出す。

 当時、独立を求めて戦う気運は熟していたものの、キューバ側には大きな問題があった。それは、スペイン軍と比較して、圧倒的に武器も経験も劣っていたことである。だが、そのとき大きな援軍となったのが、他国から馳せつけたキューバ人や、外国(ドミニカなど)から参加した軍事経験者たちで、代表的人物に、マキシモ・ゴメスがいる。 

 石でも棒でも、手当たりしだい“武器”にするしかない解放軍にとって、予想外の威力を発揮したもの、それが“マチェテ”だった。

マチェテはキューバ人にとっては、小さい頃から慣れ親しんだ“道具”であり、誰でもその扱いに慣れている。特にサトウキビ畑などの農場労働者は、長い刃の重たいマチェテを、まるで小刀を扱うかのように軽やかに操ることができた。

こうしてドミニカ出身の経験豊かな軍人たちによる指揮のもと、黒人奴隷を含む大勢のキューバ人たちが、マチェテを手に独立戦争に加わる。

そして彼らマンビたちは、勇猛果敢にスペイン軍に襲い掛かったのである。
一方、マチェテの恐るべき殺傷力と、マンビたちの勇ましい闘いぶりに、スペイン兵たちは恐怖のどん底に突き落とされたのだった。

 

作品の特徴

 

第一次独立戦争当時のキューバの様子を、手持ちカメラ、同時録音、ボイス・オフのインタビュー形式を用いて、リアル、かつダイナミックに再現。俳優たちの卓越した演技力と相まって、まるで“ニュース映画”を観ているような臨場感を観客に与える。

 特に最後の数分間、スクリーンで繰り広げられる両軍の壮絶な戦いは、圧倒的な迫力で忘れ難い印象を残すのだが、同時に、時おり登場する“トロバドール=吟遊詩人”(歌っているのは、パブロ・ミラネス)の姿が、力強い中にも、不思議と静かな余韻を残す。

 

余談

一説によると、キューバ独立戦争より以前、すでにドミニカでは対スペイン独立戦争で、マチェテが武器として使われおり、『マンビ』という言葉も、当時のドミニカ人リーダーの名に由来するということです。(その他に、アフリカ起源の言葉という説もあります)。

絶対的に優勢と思われたスペイン軍を追い詰めたもの、それはマキシモ・ゴメスのような経験豊かな軍人の参加に加え、予想外の効果をもたらしたマチェテの威力、その扱いに長けた黒人奴隷を含むマンビたちの活躍でした。

 


 

マチェテの威力を示す例として、「一撃で馬の首を切り落とした猛者もいた」という逸話があります。また、スペインのマドリッドにある軍事博物館(Museo de Ejercito)には、マチェテで断ち切られた銃が展示されているそうです。(どなたかご覧になった方は、ぜひコメントをお寄せ下さい)

 

そんな恐ろしいマチェテを手にした、屈強な黒人たちに襲い掛かられたスペイン兵たちは、まさにパニック状態になったとか。

もちろんキューバ兵も、不利な状況にあって、死に物狂いで戦ったわけです。

私の映画の師いわく、「追い詰められると思いがけない力を発揮するのが、キューバ人の特徴」だそうです。 皆さんはどう思われますか?

 

マリオ・ピエドラ教授コメント:

http://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-10000437674.html