今年の春に逝去された夏樹静子さんの傑作、 「 椅子がこわい 」 を再読しました。

 

 

アマゾンで見てみたら、文庫化されているんですね。

うちにあるのはハードカバーの方です。

 

夏樹静子さんといえば、

テレビのサスペンスドラマの原作をたくさんお書きになった

ミステリーの女王。

 

ただ、わたしはミステリーといえば翻訳物一辺倒で、 ( P.D.ジェイムズとかが好き )

それにテレビは普段観ない ( 囲碁将棋チャンネル除く ) ので、

夏樹静子原作ドラマは、実はひとつも見たことないのです。

 

なぜこの本を手に取ったかと言いますと、

夏樹静子さんが囲碁の愛好者で、

お名前を冠したアマチュア棋戦もある ( あった ) ことを知ったからでした。

 

「 椅子がこわい 」 にも書かれていますが、

夏樹静子さんが囲碁を始められたきっかけは、

ふたりのお子さんの子育てが一段落して、

なにか仕事 ( 著作 ) 以外の趣味を、とお考えになったとき、

昔から、端然と碁盤の前に座って囲碁を打つ人の姿に憧れていたことを思い出し、

それで習い始めたのだとか。

 

はじめは近くに住む強いアマチュアの方に指導してもらい、

あっという間に夢中になって、

お仕事でいらっしゃる編集者の方たちとも対局を楽しむようになったそうです。

 

以前紹介しました、遠藤周作先生の怪作

「 こうすれば囲碁が弱くなる 」

にも、狐狸庵先生の対局相手として登場されています。

 

それによると、夏樹先生の棋力はたぶんヒトケタ級くらい ?

 

しかし、たいへん多作な作家で、その分、眼を酷使する、

そのために重度の眼精疲労に罹ってしまったそうです。

くっきりとしたものを見ると特に目が痛くなる症状で、

楽しみの囲碁も、碁石の色のコントラストがきつくて

盤面を見ていられない、という状態だったそうです。

 

お医者様に、自然の緑を見るのがよい、

目を休めて緑を眺めなさい、と言われて、

緑が目によいのなら… と、

あの 「 グリーン碁石 」 を開発してしまったのだそうです。

 

すごいバイタリティですね 照れる!

 

グリーン碁石は、深緑と淡い緑のガラス製の石です。

 

そして、夏樹静子さんのお名前を冠した

「 グリーン碁石 囲碁大会 」 が開催されました。

( ネットで検索できたのは、第17回まででした。 )

審判長の 小川誠子先生 が、グリーンのブラウスをお召しになったりしています。

現在は開催されていないようで、残念です。

 

さて、本題の 「 椅子がこわい 」 ですが、

これはご本人が3年間苦しまれた重度の腰痛、

椅子にかけていられないほどの腰痛の闘病記です。

 

腰痛、関節痛のような、外から見えない痛みは、

本人にしかわからない、周囲の人に伝えるのがとても難しい。

それに痛みというものは、人によって感じ方が全く違うので、

ある人には我慢できる痛みが、ほかの人には耐えられない。

 

囲碁の会でも、やはり高齢の方が多いですから、

どこかしら身体の痛みを抱えながら、対局されている方もいらっしゃいます。

対局の合間のおしゃべりなどで打ち明けられたりすると、

( 自分もいろいろ痛くなるお年頃なので )

他人事とは思えずお話を聞くのですが、

ほんとうの痛みはやはり本人にしかわからない。

 

それが、この夏樹静子さんの本では、

さすが文筆を生業とされる方はちがいますね !

 

なにしろ痛みの描写がすごいんです。

 

ただ 「 痛い 」 だけじゃなくて、

「 地の底で溶岩が熱を持っているような 」 とか

「 物凄く重いリュックを背負っているように背中がだるい 」 とか

「 苦痛に耐えかねて息をつこうとすると、それが全身に針を刺したようにひびいて 」 とか。

 

さすが作家だなあ、と変なところで感心しました。

 

この本は、夏樹静子さんが様々な病院や施術者の間を彷徨った挙句、

ある思いもかけない治療法に出会って快癒するまでの記録なのですが、

その効果をもたらした治療法は、

読んでいるこちらにも驚き え゛! なので

ここには書きません アハハ

 

一気読みの本です。

 

だけど、アマゾンで検索すると、

一緒におススメられる本の内容で、どんな治療法なのか

なんとなくわかっちゃう…

おススメも善し悪しですね。