某ビール風飲料のCMより。
愛人説とか夫死亡説とかいろいろありますが、マイルドに待ちぼうけ編で。
カメラマンKSにしようか。
JSが忙しくて、帰りが遅くなることが続いてて、そんなに遅くならないKSは食事と金麦を用意して帰りを待ってる。
でもCMのようにすぐには帰ってこなくて、料理は冷めちゃうし、酷いときは食べないで寝ちゃうし。
しかも自分はお酒飲めないからキッチンドランクにもなれないし。
とはいえJSもあんまり飲めるほうじゃないとどこかで言ってた気がする。
書いてみたら金麦出てこなかったけどまあいいか。
*
鍵を開けて、ドアを開ける。
廊下は暗く、その奥に部屋の灯りが見える。
靴を抜いでダイニングに向かい、俺は声をかけた。
「ただいま」
テーブルの上には伏せられたグラスと空のフードカバーがある。
椅子には誰の姿もない。
通ってきた他の部屋に人がいた気配もしなかった。
「キソプ?」
反対側のリビングに視線を向ける。
テレビは消えたまま。
ライトはついたまま。
背を向けたソファを覗き込むと、寝入ったキソプがいた。
俺は腕時計を見て、ため息をつく。
「待ってなくていいって、だから連絡したのに」
分かった、という返信があって、だから先に寝ていると思った。
背もたれに両腕をついて、寝顔を眺める。
「…遅かったのか」
連絡したのが。
もしかしたら、あの時にはもう料理を作り始めていて。
途中でやめるわけにもいかず、完成はさせたはいいけど。
食べさせる相手がいなくて。
「キソプ」
大きく声を出す。
少し身じろぎしてキソプは瞼を開き、眩しさに手をかざした。
「ジェソプ?」
「よく寝た?」
キソプは目を細めて、横になったまま伸びをした。
「今何時?」
壁の時計を見て答える。
「もうすぐ1時」
口元を緩ませて、キソプはその腕を俺に向ける。
「おかえり。遅くまでお疲れさま」
「ただいま」
引き寄せられるまま身をかがめ、キスをする。
「遅くなってゴメン」
キソプは首を振り、まだ眠たげな様子で瞬きする。
「ううん。もう寝る?」
この時間に昼寝したなら、夜更かしさせても大丈夫だろう。
明日は日曜日で、キソプも休みだったはずだ。
遅くなったけど、作ってくれた料理を食べて、少しだけ酒を飲んで。
久しぶりに二人で、ゆっくり話をして。
でも。
「うん。もう寝る」
二度目のキスをして、キソプを抱え起こす。
「で、明日は早起きして、昼間から飲もうぜ」
「僕、飲めないし」
くすくすと笑いながら、キソプは立ち上がった拍子にふらついて、三度目のキスは空振りする。
酔っているからではなくて、眠気のせい。
「ノンアルコールカクテル作ってやるよ」
俺はリビングとダイニングのライトを消し、キソプを寝室へ促す。
きっと早く目覚めるだろう。
シャワーを浴びて買い物に行こう。
カクテルのための果物と炭酸とミントとシロップ。
ついでに夕飯の材料も買って、夜は俺が作ることにしよう。
「楽しみにしてる」
立ち止まったキソプは俺の首を引き寄せ、頬に唇を押し当てた。
それからまたふらついて、俺の腕の中に収まる。
キソプが顔を上げると、その目はしっかり開かれて、けれど夢を見ているような不思議な色を湛えていた。
俺はため息を飲み込んで、早起きは無理かもしれない、と思った。