WALTZ FOR DEBBY ~ワルツ・フォー・デビィ~ | 美肌ジャズタイム

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『ジャズをもっと身近に』をモットーに、歌とフルートで活動している日本の女性ジャズ歌手若生りえのブログ。ジャズの歌詞について語っています。

電球ここでの解釈は、私、若生りえがあくまでも歌手として歌わせて頂く際の、一つの歌詞の世界であり「こんな気持ちで歌わせて頂いております」という一つの意思表示です。この世界の認識を押し付けたりするものでもありません。あくまでもご参考までに。また文章をお使いになる場合はお手数ですが、ひと言ブログへコメント頂ければ幸いです。歌詞は一番下に掲載しておりますSAYUうふふ

 

WALTZ FOR DEBBY

~ワルツ・フォー・デビィ~

作曲・発表【1956年・1961年】/ビル・エヴァンス(Bill Evans)

英語作詞【1975年?】/ジーン・リース(Gene Lees)

スウェーデン語作詞・発表【1964年】/モニカ・ゼタールンド(Monica zetterlund)※1「モニカのワルツ」最終的に「Ankin Valssi」と題して※2ベッペ・ウォルゲルスBeppe Wolgers ユッカ・クオッパマキJukka Kuoppamäkiとともに作詞

 


《ビル・エヴァンスが2歳の姪デビィにささげた可愛らしいワルツ》

 

そろそろジャズでも聴いてみようかな?

と思って、CDショップに行く。

すると、知らない名前がズラリ(汗)

でも、その中でもオスカー・ピーターソンと並び、

この名前に引っかかるはず。


「ビル・エヴァンス?聞いた事のある名前だなぁ。」


と思って視聴してみる・・・。


今までクラシックしか聴かなかった人でも、

きっと気に入るピアニストの一人です。


そんな彼が、1956年に、兄の子供で当時2歳だった

姪のデビィに捧げた可愛らしいワルツ。

このアルバムは「ジャケ買い」と言って

ジャケットのデザインも素敵で人気でしたが、

シルエットだけの横顔の女性は

ビルエヴァンスの婚約者?恋人?

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なんて言われたりしましたが、

姪っ子さんに作ったのですね!

幸せな姪っ子さん!


「Debbie」という表記もありましたが『Debby』が正解。

当初は歌詞はついていませんでした。


それを後に、ビル・エヴァンスと親交の深かった、

ジーン・リースという、カナダ人の作詞家が、

正式な英語歌詞をつけました。


残念なのは、今回英語の作詞年がはっきりしなかったこと。

モニカ・ゼタールンドのスウェーデン語訳詩と同じ

1964年説もあったのですが、ビル・エヴァンスと一緒に、

トニー・ベネットが歌ったアルバムが最初だというと、

そのアルバムが出たのが1975年なので、

一応、今回は1975年表記にしました。

詳しく分かったら、また追記します。

 


《ジョビンのポルトガル語を翻訳し英語歌詞を付けたジーン・リース》

 

ところで、この英語歌詞を担当したジーン・リースという人。

調べてみたら、なかなか面白い人物でした。


作詞家と書きましたが、もともとはカナダで新聞記者をしており、

彼の肩書きは、作詞家のほか、音楽評論家、伝記作家、

報道記者などと紹介されていました。


ヴァイオリニストの父を持った彼は

きっと音楽が好きだったのでしょう。

1955~1962年の間に、

ジャズのダウンビート誌で編集者もしていました。

すでに作詞家としても仕事をしていたようですが、

1960年の初めには、わざわざ

バークレー音楽院で作曲も勉強し、

ニューヨークでも、ギターやピアノなども

有名なミュージシャンに師事していたようで、

曲に詩をつけるという「作詞」の技術に、

この頃、磨きをかけたようです。


その後、フリーになり、

作詞家としての活動のほかにも、

スタン・ゲッツやジョン・コルトレーン、

ヘンリー・マンシーニなど、

著名な音楽家に関する本なども、

それまでの記者の経験を活かし、

多数書いているようで、その為、

有名ミュージシャンたちとの親交も深く、

ビル・エヴァンスもその一人だったようです。


そして彼を語る上で忘れてならないのは、

ボサノヴァの創生者とも言われる

アントニオ・カルロス・ジョビンとの関係。


ジーン・リースはポルトガル語でもともと書かれた

ジョビンの歌詞を、数多く英語に翻訳しており、

有名なのは、私も名歌詞だと思う

「コルコヴァド」という原題の、

「Quiet Nights of Quiets Stars」←訳詞ページへ


フランク・シナトラからダイアナ・クラールまで、

世界中のトッププレイヤーたちが、

今でも彼のつけたこの英語歌詞で

歌っていているのです。


自分の作品の英語翻訳が気に入らないと、

わざわざ自らで訳し直していた、

というジョビンの性格からすると、

ジーン・リースは、

真面目な仕事をする人だったのでしょう。


この歌の世界も、お人形で無邪気に遊んでいた2歳から、

20歳の大人に成長したデビィの姿、そして、

それを見守ってきた大人の姿が切なく描かれていて、

なかなかジィ~ンと来るものがあります。


そんなことで、ジョビンの作品を中心に、

ポルトガル語を翻訳し、英語作詞に貢献した、

つまりボサノヴァが英語に訳されることで

世界的に広まったということを考えれば、

ジーン・リースは、ジャズやボサノヴァ界の発展に、

とても大きく貢献した人といえると思います。

 


《英語歌詞の内容について》

 

さて、この英語歌詞を調べているときに、

姪の結婚する際に捧げた

というエピソードもありましたが、はっきりしませんでした。


でも、ビル・エヴァンスが作曲したのが1956年、

それにジーン・リースが作詞をしたのが、

トニー・ベネットがビル・エヴァンスと共に出した

アルバムでの歌が最初だとすると、

約20年の時が流れています。


これはあくまでも推測ですが、

2歳だったデビィもあっという間に19歳。

お年頃になり、そろそろ結婚、というような話も実際にあり、

それで、ビル・エヴァンスが、

改めて仲の良かったジーンに頼んで、

姪の結婚のお祝いに、歌として完成れた英語歌詞

だったりして!!


と、勝手に妄想してウキウキしています(笑)


だって、訳詩を読んでみると、

そうイメージできませんか(笑)???

 


《もう一つの歌詞「モニカのワルツ」》

 

さて、この「ワルツ・フォー・デビィ」の「歌」というと、

You Tubeなんか観て、

『あれ?フランス語かなんかで、

きれいなお姉さんが歌ってなかったっけ?』

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。


その綺麗なお姉さんの名前は、

「モニカ・ゼタールンド」。


スウェーデンの国民的歌手で、女優さんです。

そしてナゾの言語は『スウェーデン語』。

彼女自身が作詞をしました、

と旧ブログでは書きましたが、

作詞家で俳優のベッペ・ウォルゲルスと

歌手のユッカ・クオッパマキが書いたようです。

 

最終的な題名もスウェーデン語だと「Ankin Valssi」

というタイトルでした。

 

モニカは小さい頃から、

ビリー・ホリデイやエラ・フィッツジェラルド、

そして一番のお気に入りはサラ・ボーンで、

当初は意味も分からない英語の歌を

良く聴いて育ったそうで、そんなことで、

スウェーデンでも主にジャズ歌手として

有名だったようです。


まだ歌詞がついていなかったと思われる頃に、

ビル・エヴァンスがスウェーデンを訪れるということで、

それにあわせて1964年に彼女自身が、

ジーン・リースの英語とはまったく別の

スウェーデン語の歌詞を作詞したのです。


しかもその題名は自分の名前を入れた

『モニカのワルツ』と言うものでした。


《さぁ!!!誰を聴く???》

 

まずは、この作曲者のビル・エヴァンスを!!


もう何回も録音していていますが、特に、

1961年のアルバムではじめてこの曲を録音した

11日後に、ビルの片腕だった名ベーシストの

スコット・ラファロが、交通事故でなくなってしまい、

これが最後の録音になってしまった

ということもあり、有名です。


ビルのピアノの演奏は、本当に2歳の可愛いデビィが

陽だまりの中でクルクルと無邪気に戯れている、

それを見守っているような、

そんな情景が浮かぶようです。


あとはもう、

ピアノのオスカー・ピーターソン。

トゥーツ・シールマンス、

ジョン・マクラフリンのギター。

男性歌手のジョニー・ハートマン。

もちろんトニー・ベネット。

アル・ジャロウ。


女性歌手も、リタ・レイズ。

マンハッタントランスファーのメンバーの

シェリル・ベンティーン。

オススメはノルウェーの歌手ヒルデ・ヘフテ。


ヒルデ・ヘフテはピアノやギター、サックス、

クラリネットなどを演奏したり、

演技の勉強をしたりと、

あまり知られてはいませんが、

今、北欧のジャズを引っ張っている

歌手の一人です。


とにかく沢山の人がカバーしているので、

こちらもお気に入りのナンバーを探してくださいね!!


それでは『ワルツ・フォー・デビィ』です!!


どうぞっ!!

 

やはりまずはビル・エヴァンスのピアノで。

さすがにピアノが歌ってますね!


(英語歌詞)

In her own sweet world

Populated by dolls and clowns 

and a prince and a big purple bear.


Lives my favorite girl,

unaware of the worried frowns

(that) we weary grown ups all wear


In the sun she dances to silent music

songs that are spun of gold

somewhere in her own little head


(But) One day all too soon

She’ll grow up and she’ll leave her dolls

and her prince and that silly old bear

when she goes they will cry

as she whispers “Good-bye.”

They will miss her I fear

but then so will I . 

 

 

やはり、トニー・ベネットは素晴らしい!

(若生りえ日本語解釈歌詞)

 

可愛い姪のデビィ

彼女の夢のおとぎの国には

ピエロや王子様

そして紫色の大きなクマの

お人形さんたちが住んでいる


そして僕らと同じこの世に生きる

可愛いデビィ

彼女ときたら

日々、世迷言の中で疲れきった

大人たちの心配もよそに

無邪気に遊んでいるよ


さんさんと降りそそぐ陽だまりの中で

デビィは踊る

僕らには聴こえない音楽に合わせて


その幸せを湛える歌は

おとぎの国に生きる

可愛いデビィの頭の中には

ちゃんと聴こえているのさ


でも、そんな少女も気が付くと

あっという間に大人の女性へと成長し

おとぎの国を卒業する日がやってくる

本物の王子様と出会い

お人形の王子様や

年老いた寂しげなクマのおじいさんたちと

お別れする日がやってくる


そして彼女が去るとき

「さようなら」とそっと別れを告げたら

みんな、きっと泣くだろうね

そして、彼女が恋しくなって

きっと寂しがるだろうね・・・

それを思うと僕も切なくなるよ

でもね・・・・・・・・

僕だって今、彼らと全く同じ気持ちなのさ