これね、好きです。
なにが好きって、キラが好き!
漫画読むときって、けっこう脇役にハマっちゃいません?
たいてい主役は前向きで素直だから、脇役のちょっとひねくれてるほうが魅力的に見えちゃって。
でも、本作の主役のキラは違う。
主役なのにヒネてる。
そう、これはピカレスクストーリーなんです。勧善懲悪型じゃないの。大和和紀作品としてはちょっと珍しいよね。けっこう汚い手も使ってのし上がっていきます。
脇役の方が純真なので、それで釣り合いはとれてる。
この天使ちゃんのアレクの天使ぶりが徹底してるのもいい。あんまりにも徹底してるので「善」の範囲を突き破ってる感もある。本人も言ってる通り、別に善人ってわけじゃなくてキラだけの聖域で味方なんだよね。自分自身以上に。
キラが迷いなく(ほんとはちょくちょく悩んだりもするけど)悪事も厭わずに立身出世を目指すので、他作品に比べて女性陣は地味です。
マドロンは気が強くて正義感が強いので他作品なら主役を張るタイプですが、ピカレスク作品では端役感がハンパない。正論っすねーあざーしたーってなっちゃう。
それよりは可憐に虐げられ踏み台にされたアリスのほうが輝いてます。やられ役ですが。
女装したキラが女としても一番魅力的だったんじゃないでしょうか。
そのくらい徹頭徹尾「キラ」が主役の物語。
舞台はイギリス。伝統あるロンドンの演劇界に、彗星のごとく現れた美貌の青年、キラ=クイーン。彼は一夜にして大スターにのし上がる。その背景には、昔、演劇界を追われたひとりの男の執念があった。フレドリック・ライモン。彼は苛酷な特訓でキラを育て、栄光をよみがえらせようとしていた。しかし、そのキラの美しい仮面の下には、恐るべき毒牙が隠されていて――。
天性の美貌と悪魔の心を持つキラ=クイーン。行く手に立ちはだかる者は、誰であろうと容赦しない。たとえそれが、自分に愛を捧げる者であっても。押しも押されぬ演劇界のスターになったキラ。彼の次なる獲物は、実業界の大立者、ハリントンのひとり娘・アリスだった。まんまと大会社を手中におさめたキラだったが、強敵ムーアの罠にはまってしまう。キラの野望の行方は!?
キラは、完全なる敗北の底から再び挑戦を開始する。ムーアの娘のマドロンは、野望のためには手段を選ばぬキラの生き方を憎みながら、ある種の共感とかすかな愛情を感じていた。じつは、キラとムーア父娘の間には重い過去が隠されていたのだった。彼らの死闘は、キラの聖域であるアレクをも巻き込み、それぞれの運命を大きく変えていく――。番外編1編を含む堂々の完結!