玉蘭 桐野夏生 | [ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]

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有子は上海の学生寮で暮らしている。
小さいころから優等生のいい子で生きてきたのに、真面目に善良に努力して生きてきたのに、報われなかった。
それはたったひとつの恋が終わったというだけのことだったのかもしれない。
しかしそれで有子の心は決壊してしまった・・・

地方出身者が戦う現代の『東京戦争』に敗れた有子(ゆうこ)。
『太平洋戦争』の時代を生きた質(ただし)。
一輪の白い玉蘭の花の芳香が二人とふたつの時代をむすぶ。

崩壊することでしか再生できない生き方が描かれている。
真実がどうなのかは読者の判断に任せられているが、堕ちる幸福もあるのだ・・・というような穏やかな結末が有子の未来にほのかな希望をみせている。

質(ただし)は著者の祖母の弟がモデルになっている。
文中にでてくる「トラブル」の文章も、質の遺稿。旧仮名遣いを新仮名に直したのみだということがあとがきにある。一部は実話らしい。
玉蘭 (文春文庫)/文藝春秋

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