面白い話ができる人になる | 素晴らしい日本の未来へアクセル

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自らが模範を示すリーダーとなり、次世代のリーダーを育成するために日々努力します。

---NBオンラインより(梶原しげるのプロのしゃべりのテクニック)


 70年代から80年代にかけてのフォークソング全盛の頃。多くのアーティストと仕事をしたことが、その後のアナウンサー人生に大いにプラスになっている。

歌よりも「話」を練習していた鉄矢さん

 海援隊の武田鉄矢さん、アリスの谷村新司さん、グレープのさだまさしさん、かぐや姫の南こうせつさん…。あげればきりがない。デパートやスーパーの店頭催事から、渋谷公会堂(今のCCレモンホール)、武道館での公開録音に至るまで舞台の上で、ステージのそでで、私は司会者という立場を忘れ、いつも腹を抱えて笑い転げるばかりだった。「吉本的お笑い」が上陸する以前の東京では笑いの発信者はフォークシンガーであったと言っても、過言ではない。

 開演を待つひと時、武田鉄矢さんは歌の発声練習以上に「ネタ」の最終チェックに心を砕いていたように思う。私をはじめ、スタッフ何人かを前に、出番ぎりぎりまで延々しゃべる!

 「で、その日が吹雪で、客がそのおばさん1人なんだよね。俺達は必死になって、そのおばさんのためだけに歌うわけ。最後はおばさんに、いっそのことこっちに来ませんかって誘ってみた。そしたら、私はこの体育館の管理さ、まがされてっから早めに終わってくれっと助かんだけんどって、申し訳なさそうに言うのよ。切なかったなあ。でね、」

 その先、きっちり落ちのある話を披露してくれる。あの鉄矢さんが表情たっぷりにこんなコンサートツアーのエピソードを語るのだからそりゃあ面白い。楽屋は大いに沸いた。

「わあ、おばちゃん、村役場の職員なんだ」
「客ゼロ?きついなあ!」
「暖房費ももったいないしな。おばちゃんの帰りのこともあるしね」

 いろんな感想を述べながら大笑いしていると、ベルが鳴ってさあ本番。オープニングの曲が終わって、鉄矢さん。超満員の客が期待するトークが始まる。

 「今日はこんなにたくさん来ていただいて涙が出るほどうれしかとです。ありがとう、ありがとう!いや、こないだなんか」と、さっきわれわれに話した「客ゼロ」の話を始めるのだ。

 こんな風に、大事なネタは1度仲間の前でおさらいをしておいて本番に臨むというケースは少なくない。聞き手はどこに魅かれ、どこで笑いが爆発するか。どこを削り、どこを加えるか。どのくらい間をとれば一番効果的に客の心を揺さぶられるか。

 直前のおさらいで、ぬかりなくチェックした成果がきっちり出ていて、ネタの完成度はさらにアップしていた。笑いあり、涙あり、感動あり。演奏する曲が一番引き立つ話を振って、スッと演奏に入る。

 曲を生かすも殺すも「しゃべり次第」。アーティストは日頃、目にしたもの、耳にしたもの、体験したものを「ネタ」としてインプットし、それをブラッシュアップさせて一つの「いい話」「爆笑エピソード」に仕上げていく。

「かっこいい」以上に「面白い」の価値が高まっている現代(いろいろなアンケートを見ても、もてる条件の第1位は「面白い人」とある)。ビジネスパーソンも「熱心で誠実。仕事ができる」に加えて「面白い話」の一つもできれば鬼に金棒ではないか。

 あなたがもし「あの人の話はいつも面白い」と言われてみたいと思ったら、フォークシンガーたちのやり方から学んでみたらどうだろう。

そもそも君が面白くないのだ

 彼らは出会いをとても大切にしていた。旅(コンサートツアーなど)は絶好の出会いのチャンスだ。新しい街に出会い、景色に出会い、人と出会う。

 「われわれは自宅とオフィスと、取引先の三角地帯を行ったり来たり。いつも同じ殺風景な景色とおんなじような連中に囲まれて、新鮮な出会いなど期待できない!」

 こんな風に、怒りをぶつけてくるビジネスパーソンがいることだろう。確かに、旅先の目新しい体験はアーティストたちの特権。日々、デスクワークに追われるビジネスパーソンにとっては、ないものねだりに感じられる。

 実は、私もフォークシンガーたちに混じって深夜放送を担当していた時、上司に弱音を吐いたことがある。

 「私なんかしょせんサラリーマン。旅にもいかないし、おんなじことの繰り返し。こんな生活じゃあ、面白い話なんかできませんよ」

 その時の上司の言葉が忘れられない。

 「そりゃあ、旅に出れば新鮮な素材が向こうから飛び込んでくるかもしれない。でも、われわれは、置かれた立場で新鮮な話題を見つけ出す知恵を身につければいいのだ。落合恵子(レモンちゃんの愛称で当時人気絶大の文化放送の先輩)も、土居まさる(深夜放送の草分けで元文化放送社員)もサラリーマンでありながら十分「面白い」放送をした。

 「ある旅の名人(永六輔さんか?)が言っている。一歩家を出れば、それはもう旅だ。昨日と同じものなど何もない。見るべきものなどあるものかと感じたら、感情が鈍磨している証拠だ。日常は出会いに満ちている。周囲が新鮮に見えないとしたら、君が新鮮でないということだ。面白くないと感じたら君がそもそも面白くないのだ」

 30年以上も前に、40歳そこそこの上司に言われたこの言葉は重く響いた。

 毎日の通勤電車も、変わり映えのしないオフィスも、取引先での出来事も、見方を変えれば「へえ」と小さく驚くことが結構あるのだと、その後気づいた。それをキャッチできないのは、まさに感情鈍磨といわれても仕方がない。

 そこでビジネスパーソンが「面白い話ができるコツ」を以下にまとめよう。一言で言えば「ネタ」を採取し、こしらえ、育て、蓄積していくことである。

 個別具体的に見ていこう。

1)ネタの採取
 日々の生活でも、好奇心のアンテナをピンと張っていればいろいろなことが見えてくる。「今年の若い連中のスーツの襟はなんであんなに細いんだ? 不況で生地代をけちる服飾業界の陰謀か?」ネタ採取のきっかけは何でもいい。そして独自の仮説をたててみる。

2)ネタをこしらえる
 紳士服のコナカとアオキと青山。どこのスーツが1番襟が細いかひそかに持ち込んだ物差しで測ってみる。襟の細さと値段との相関を調べるのも一興だ。別に、研究論文を書こうというのでないから、もっと気楽に、客の入り、店員の対応、社風なども個別に比較してみると、何かが見えてくるかも。

 「スーツが2着目からは何でも1万円(この手の紳士服量販店の販売方法としておなじみ)って、本当に得なのか?」「こういう店で売っているTシャツって、どうしてオヤジ臭いのだろうか」「親父はあえて、ださい方が好きなのか」

 ネタ集めの「取材」だと思うと、そうとう図々しいことまで聞けるものだ。こういう店員との「からみ」の中から、ネタが出来上がってくる。

3)ネタを育てる
 作ったネタを、ネタ帳に書き記す(芸人でもあるまいし、と思わず。ビジネスパーソンも、顧客に対してはビジネス情報以外の「楽しさ、憩い」の提供者であれ)。

 1分バージョン。3分バージョン。5分バージョンと、3通りぐらいに話せるように整理しておく。時と場合に応じて、披露できるようにする。試しに、一番気楽なかみさんや家族に話してみよう。少しでもウケたら職場の仲間との雑談で話してみよう。だんだん話し慣れていくうちに完成度が高くなったら、取引先との雑談にも使える。

4)ネタの貯蓄

 「採取」「こしらえ」「育てる」を繰り返し、ネタの数や種類を増やすことで、「話題が豊富な人」「話せる人」というキャラクターが確立されていく。「ネタの畜積」は加速度的にあなたを「面白い人」にしていく。


 平凡な日常にも「好奇心というアンテナ」を張り続ければ「面白い話」はいくらでも採取できる。目指せ!エンターテイナービジネスパーソン!!


---私も人前でプレゼンすることが多いので話の中に笑いを取り入れて(いるつもり)ますが、日々ネタを探すように心がけていますね。「へぇー」と感心されるより、笑いを取る方が難しいですね。その点関西人はのりつっこみのDNAがあるので、素人でも笑い取るのが上手な人が多いですね。