学歴がひとつ増えました、中退ですけど | ラテンなおやじのぐうたらニカラグア生活

学歴がひとつ増えました、中退ですけど

 リカルドおじさんは間もなくニカラグアのぐうたら生活満4年を迎えます。今でこそ、ニカラグア中の村々を巡り、写真に撮り、それをブログでご紹介するという時間潰しの方法を見つけて、それなりに生活を楽しんでおりますが、こういう事を始める前は、それはもう、「えらいところに来てしもたなぁ」と思い、特に、週末は地獄のようなものでした。今日はそのような頃、つまり、ニカラグアに来た4年前のことを思い出して書いてみます。

 昨日は、「ニカラグア大学事情 」のタイトルで書きましたが、引き続き大学のお話です。


 当初は暑いだけで何もない、無い無い尽くしの国だと思っていましたから、週末は自宅に閉じ籠っているだけでしたが、これではいかん、何か時間の潰れる方法を考えないとと、いつも思っていたのです。

 ある日、新聞を読んでいると大学の学生を募集する広告が掲載されていました。それは「ニカラグア国立自治大学(マナグア校)人文・法学部歴史学科大学院修士課程ラテンアメリカ研究コース」の学生募集でした。詳しく読んでみると、2年間のコースで、「modalidad sabatina」(土曜制)と書いてあります。つまり、土曜日だけの開講です。これなら土日のうち、少なくとも土曜だけは時間が潰れると思ったので、必要書類を用意して、簡単な面接があって、入学金だけ払いました。実に簡単なものでした。これで正規の大学院生です。ラテンアメリカの大学院は、毎年同じコースを募集することは稀で、この場合、少なくともこのコースが終わる2年後でないと新しい募集はありません。その時点から2年もニカラグアに居るかどうかは分かりませんでしたが、実は卒業などどうでもよく、兎に角、暇潰しのために入学したのです。

 尤も、暇潰し以外にも理由がありました。ひとつは、世間話的なスペイン語ではなくて、学術的・知的環境の中で話されるスペイン語を、理解できなくてもいいので、雨霰と浴びるように聞いてみたかったことです。耳を慣らすという意味で役に立つと思ったのです。もうひとつは、大きな下心ですが、もしかしたら可愛いセニョリータとお近づきになれるかもしれないという点です。しかし、これは完全に期待外れで、そもそも土曜コースですから、平日は仕事を持っている年齢層の人ばかりで、年配のおばちゃんか、男性ばかりでした。


 土曜コースというのは、朝8時に始まって、昼休みを挟んで午後5時頃までみっちり授業が続きます。土曜は完全に潰れます。リカルドおじさんも、当初は、何十年振りかの大学のキャンパスで、しかも、「社会主義化か死か!」、「サンディニスタ革命、万歳!」とか何とか壁に殴り書きをしてある校舎に入って、授業を受けておりました。しかし、ラテンアメリカ研究コースなのに、いつまで経ってもその内容に入らず、歴史学の何とか学派がどうのこうのと、そんな事ばかりやっているので、ちょっと飽きが来始めました。

 そのうち、講師の都合で土曜日が他の日に変更されることが多くなってきて、当然、そういう時は行くことができません。リカルドおじさんも平日は一応、自分の仕事がありますので。そして、ある日、「平日の午前中のあるセミナーに参加して下さい。これはこのコース履修者の義務です」と指示するメールが来て、もう、これ以上、続けられないと観念しました。そもそも、土曜にやるというから暇潰しで入学したのであって、それ以外の日に授業をするというのは、ある意味、契約違反です。

 結局、通ったのは半年ぐらいでしたが、とうとう退学届を出しました。ということで、リカルドおじさんは、ニカラグア国立自治大学(マナグア校)人文・法学部大学院修士課程中退という燦然と輝く学歴を持てることになった次第です。


 しかし、この時の経験でいうと、ニカラグアのような貧しい国の大学院教育など大したことはないだろうと日本人は思うでしょうが、理科系はいざ知らず、人文科学系は恐らく、今の日本の大学院よりは質が高いかも知れないと思いましたね。仮に、ニカラグア国立自治大学大学院で使用していた教材が日本語であったとしても、今の日本の大学院生はついて行けないと思いました。

 1990年以降、日本の大学院は定員が大幅に増えて、その質の低下は目を覆うばかりです。失礼ながら、今の日本の大学院生は昔の大学学部レベルよりも知識、学力の面ではるかに落ちているのではないかと思う時さえあります。もちろん、これは平均的な水準のことを言っているのであって、トップクラスの優秀な学生は、今も昔もその水準は変わらないと思いますが。


 やって来た当初のニカラグアで、リカルドおじさんは図らずも束の間の学生生活を経験することができました。大学のキャンパスというのは、世界どこでも共通した独特の雰囲気で、遥かに過ぎ去った青春を思いだした半年でした。

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