料理教室&BistrotRIANTのメールマガジンです。
料理人・川名克典の料理セミナーでは伝えきれない
技術の裏に隠されているものを書いています。


それは、料理と人生をおいしくする秘密そのもの・・・。



  りあんの二階に、フランス風の窓がある。

  縦長で観音開きになる窓だ。
  此処は、大家さんが元もとオーダーメイドのドレスを作る為の
  ブティックだった。

  その為に、あちこちにこだわりがある。

  この窓の形や、真鍮の取っ手や・・・。
  建物の中の鍵。
  こんなの誰も見ないはずなのに・・・。



  昔、夏休みに北海道へいった。
  僕は仕込みがあるので、二日程早く帰ってきたのだが、その時
  鍵を忘れた・・・。


  飛行機に乗ってから気がついた。
  当時携帯電話なんてまだ普及していなくて、仕方がないから、
  羽田で電話したけれど郵送も、持ってきてもらうのも時間は変
  わらない。どっちにしてもその日は入れない。


  仕方無しに、羽田から鍵のレスキューを頼むことにした。
  出張費が高い。一万円以上かかったけれど他に術が無かった。

  で、店の鍵を開けてもらい内側の扉を開けてもらうときに教え
  てくれた。

  「この鍵は、外の扉の鍵より余程いいものです」


  実際外の扉はアッという間に開いてしまったのに・・・。
  内側の扉は、開かないのだ。



  話は窓に戻って・・・。
  その観音扉の窓を開くと手すりがあって・・・。
  別にベランダにでられるわけじゃないけれど、それ風に作って
  ある。


  其処にフォルダーを下げプランターを置き、ゴールドクレスト
  を八本植えてある。
  先日そのゴールドクレストの合間から勝手に延びている雑草に
  ついた穂を子スズメがつまんでいるのを見た。とても可愛い。


  子スズメは、これでもかと言うほど小さくて・・・。
  
  そこで、その手すりの回りに小鳥の餌をまくことにした。
  実は先日まで道路にまいていたのだけど、鳩が覚えて伝達した
  のだろう。いつの間にか鳩の餌場と化していた。


  子スズメ達が食べたくても、沢山の鳩が先に食べてしまう。
  それでこの手すりに置いたのだ。
  此処なら鳩は来られないから。


  最初の日は、用心してだれも来なかったけれど・・・。
  今朝はかなり来ている。
  窓に近づかなければ、逃げない。


  時々喧嘩しながら食べている。(笑)
  
  



  長月も中旬だ。
  北海道の昼はまだ夏のようで、夜はストーブが欲しい位らしい。
  中目黒は相変わらず昼夜、夏をやっている。
  それでも、扇風機を止めたり、窓を閉めたりしようと思うのだか
  ら、ずいぶん涼しくなってきている。


  層雲峡の紅葉は、昼と夜の気温差が大きいとより赤くなるらしい
  から今年は見事なんじゃないだろうか?

  


  料理修行をしていて思ったことがある。
  「そういう風になるように思いながらする」ということ。


  例えば、アスパラガスの皮をむく時、エコノムという皮むき器を
  使うけれど・・・。

  それは日本の皮むき器の皮をむく部分・・・。
  弓で言えば糸にあたる部分だけはずしてペティナイフのように持
  ち手を付けた棒状のもの。


  それでペティナイフでむくようにむいてゆく。

  でも、ちょっとした力の加減でアスパラガスの幹がえぐれたり、
  楕円になったり、ひどいときは平らになったりする。
  だから僕は注意しながら、えぐらないように円柱状になるように
  むいて行く。


  実は、円柱になるようにむく術など教わったことがない。

  円柱になるように思ってむくだけだ・・・。

  シェフも「丸くむけよ」としか言わない。
  でも、これでほぼ円柱になる。



  多くの方が、プロはそれを修業時代に教わっていると思っている
  らしいけれど・・・。
  実は、技術的に教わっていることはとても少ない。

  ただ、「見せつけられている」というのがほとんど・・・。

  「この人のボルドレーズ旨いなぁ」
  「あの人のブールブラン綺麗だな。
  「何でこんなに上手くテリーヌを焼けるんだろう?」
  


  この時に、美大予備校生の毎日を思い出した。

  コンクリートブロックや、石油のポリタンク。
  勿論りんごやレモン・・・。椅子。机。
  大きかったのは、皇居の中の清水門。
  もっと大きかったのは、お茶の水の聖橋。


  次から次へと鉛筆で描いていた。

  描き方を教わったことが無かった。


  丸いと思って描けよ。
  固いと思って描けよ。
  厚いと思って描けよ。

  見よう見まねで描き始めたら・・・。


  実際にこの木を触った?
  実際にこの門をくぐった?
  実際にこの橋を渡った?
  

  毎日そういわれていた。
  
  そして、触って、くぐって、渡った。
  そしたら思いの外、温かかったり、
  思いの外、分厚かったり、
  思いの外、長かったり・・・。


  そして

  だから、温かい、温かい。
  だから、厚い、厚い。
  だから、長い、長い・・・・。

  思いながら描いていたら、自分でもビックリするくらい
  そうなっていった。



  料理人になって、まさか同じ事を言われるとは思ってもいな
  かった。

  「これ、どうやって作るんですか?」
  「どうやってもこうやってもあるか、こうなるように作れば
   いいんだよ」


  「こうなるように・・・」


  丸いものは丸くなるように・・・。
  四角いものは四角くなるように・・・。
  ネットリしたものはネットリするように。
  サックリしたものはサックリするように。

  旨いものは旨くなるように・・・。



  僕は今、料理講師をしている。

  僕が教わったように教えるのは、不親切だと知っているから
  そんな教え方はしない。

  「フライパンにバターを溶かして、大きな泡が立ち音が大きく
   聞こえ、そのうちに泡が小さくなって音が無くなった今っ!」

  そんな風に話す。



  でも・・・。
  その具体的な技術の裏側に大切なものがある。
  これがない限り、具体的な技術は薄っぺらな技術になる。


  香ばしく焼けよ。
  旨く焼けよ。
  しっとり焼けよ。
  こんがり焼けよ。


  「こうなるように焼けばいい・・・」という強い・・・。
  それは・・・。

  情熱。
  


  生き方が解らないとか・・・。
  生きぬく術が見つからないとか・・・。


  どうやって描いていた?
  どうやって料理していた?

  じゃあ、どうやって生きる?


  今日は、どうすればいい?
  明日は、どうやれば来る?
  
  ノウハウばかりの世の中で・・・。
  何でもある世の中で・・・。


  綺麗サッパリ忘れたモノがある。




今日も、新しいインスピレーションを求めて・・・。
引き寄せる一日でありますように。 (^ー^)v


そして・・・

いつも 「ありがとう」

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