料理教室&BistrotRIANTのメールマガジンです。
料理人・川名克典の料理セミナーでは伝えきれない
技術の裏に隠されているものを書いています。


それは、料理と人生をおいしくする秘密そのもの・・・。



  今朝の中目黒は三十三度・・。(笑)
  ずっと記録しておけば良かった。こんなに三十度以上が続くとは
  思ってもいなかったし・・・。
  気温を気にする仕事でもない。


  身体で感じたとおりに、料理を作るのだから。
  三十度はこの料理で・・・。
  三十三度以上はこの料理で・・・。

  二十五度になったらこれで・・・。


  なんて・・・。

  コンビニの販売促進戦略みたいだから、きっとやっている店も
  あるだろう。

  りあんの場合は、そこまで細かいのは時々・・・。

  常連さんの何人かはメニューを全くご覧にならないで、待って
  いる。


  値段だって、うちは知れているから何も聞かずに・・・。
  いつも黙って椅子に座っている。
  五分、十分、十五分待たせてしまうこともある。

  でも、待っている・・・。


  そんな方が数名いらっしゃるけれど、共通点がある。
  野菜料理が好き・・・。


  たまに「今日は少しお肉食べようかな」とか・・・。
  たまに「今夜は煮込んだお肉も」とか・・・。
  たまに「一皿だけでいいかしら」なんて・・・。

  
  僕は冷蔵庫の前でホッとため息をつく。
  ヒントではなく、正解を一つ与えられた様に感じるから 。
  後はもう一つか二つだけ・・・・。


  生憎サラダにする葉っぱが無いから・・・。


  エリンギとしめじと生椎茸があった。
  取り敢えず僕は石突きやおがくずを落とし、考えている。

  「これをどうする」
  「これをどうする」


  煮るか?
  焼くか?
  蒸すか?
  揚げるか?
  
  生は却下した・・・。
  揚げものも却下・・・。(笑)
 
  僕はフライパンにオリーブオイルを入れ加熱した・・・。
  ニンニクをひとかけら包丁の腹で潰し、加え、少しだけ・・・
  色付けた。


  まだ完成品は思い浮かばない・・・。
  でも、これ以上待っていられないから・・・。
  素材に教えてもらうことにした。


  そう丁度この文章を綴るように、言葉が次の言葉を生み出す
  ように・・・。だ。


  半割りにしたエリンギを入れた。
  キュッと音がした。
  小房に分けたしめじも入れた。
  ギュギュっと鳴る。


  四つ割にした生椎茸に色がつき始めた。
  このままで焼き切るのか?
  白ワインでムイエするのか?
  ※ムイエ;mouiller液体で湿らす。
  赤ワインか・・・。
  ドライベルモットか・・・。


  「あっ、トマトにしよう。」

  僕は小鍋に湯を沸かして小さなトマトを湯むきし、一センチの
  角切りにした。

  フライパンに放り込み、強火で炒めきった。

  その瞬間「ゴール」が見えた。


  温めた皿にセルクル(ステンレスの目玉焼きリングといえば解
  りやすいだろうか?)を置き、ムース状に作っている自家製の
  マヨネーズを底に敷く。

  その上に今炒めたニンニク、きのこ、トマトを入れ平らにした
  ら、自然とパルメザンチーズに手が伸びた。


  素材が次にあわせる素材を選び始め・・・。
  一つの技術が次の技術を求める・・・。


  僕はバーナーを取りだしパルメザンチーズのかかったきのこ達
  を焼き始めた。
  ベシャメルソースの様に上からかけたのではなく・・・。
  ムース状に仕立てた極上のマヨネーズが一番下に潜んでいる。

  少しお洒落な、きのこグラタン・・・。


  きのこをバーナーで焼いていたら次に「生ハム」を思った。
  その為にトマトを入れた後強火で焼きながらの塩は弱めにして
  ある・・・。


  まだあの時点では生ハムは思わなかったのに・・・。
  何故?


  きっと用心していた。
  塩は最後の最後で加えることも出来る。
  でも、途中でしっかり塩を利かせて仕舞えば、引き算は出来ない
  から、その後あわせる食材の足かせになる・・・・。


  生ハムを少し厚めに削いだ様な感じで・・・。
  余り大きくなく小さな木っ端の様な感じで・・・。


  小指の先程の小玉葱の甘くないピクルスを二つほど生ハムに沈め
  た・・・。食べ始めてから発見する。


  トップに小さなバジルの葉っぱを落ち葉のように数枚散らした。
  白い皿の縁に緑のバジルオイルを飛行機雲のように引いた。
  黒のミニョネット(極粗挽き胡椒)を少し散らした・・・。
  透明なグロセル(粗塩)と一緒に。


  一皿出来た・・・。
  僕は、フーッとため息をついた。


  僕が作るのではない、素材が素材を引き寄せている。
  僕が作るのではない、技術が技術を引き寄せている。


  僕が準備するのは、上品で食べ頃のいくつかの素材。
  僕が準備するのは、的確に美味しくする基本の技術。



  僕が心に留めるのは・・・。
  僕が感動した言葉と君に伝えたい言葉。

  僕が書くのではない、言葉が言葉を引き寄せている。



  僕は、大きく息を吸った。
  「忘れないで・・・」と言いたげな蝉の鳴き声が聞こえた。



今日も、新しいインスピレーションを求めて・・・。
引き寄せる一日でありますように。 (^ー^)v


そして・・・

いつも 「ありがとう」

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