奴は魔女だった | 救済ブログ

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 ニルバーナの曲を聴きながら、僕とリサはお互いに体重を掛けて、寄り添い有ってた。


このバンドのボーカルが27歳で拳銃自殺した事をリサに教えてもらった。


こんなに良い歌を作ってるのに自殺するなんて勿体無いなぁと、僕は思った。




 僕はリサが着てた服を脱がした。


ブラジャー取ろうとしたら、大きなクッションが付いてる事に気付いた。


それで最近、胸が大きくなった様に見えるのかと思った。


僕がブラジャーのクッションに気を取られてる事に気付いて、リサが「これ付けてると客に胸を触られても感触しないから良いんだよね」と言った。


彼女なりの照れ隠しだったんだろうけど、僕は彼女の職業が、胸を触られたりする仕事なんだなと初めて知った。




 そんな仕事なんか辞めて欲しいと思ったけど、それを言う資格は僕には無い。


彼女を養う事なんて出来ないし、同棲する覚悟も無い。


リサは、僕が考えこんでる事に気付いて「嫌だよね。

ごめんね。」と僕を気遣い謝罪した。


僕はなんて言おう決めてなかったけど、何かを言おうとした。


リサは僕の言葉を聞かず、「忘れよう」と言って強引に会話を終わらせ抱きついて来た。


僕は、ちゃんと彼女に気持ちを伝えようとしたけど、彼女は聞いてくれなかった。


なんか、慣れた女のやり口を感じて抵抗しようと思ったけど、彼女の気持ちよさに意識が奪われて、言おうとした事が頭から消えていった。




 リサが僕達の関係について「私達て恋人なの?」と、尋ねて来たので、「恋人じゃ無いけど今、1番好きな人だよ」と答えた。


僕の言葉を聞くなりリサは、目を真っ赤にして泣きながら怒り出し、「SEXしたじゃん!」と既成事実を持った時点で恋人だと言う持論を展開した。


その論理なら、”俺と既成事実を得た後に、元彼と関係を持った彼女は、僕を恋人だと思ってた上で浮気した、酷い女て事になる。


彼女の、僕達が恋人関係だとする論理は完全に破綻して居て、全てが自分の都合が良い様にこじ付けてるだけで議論する余地が無かった。




 彼女が僕の事を好きだからこそ、泣きながら怒ってる事は分かった。


リサは、自分でも頭を整理出来てないのか、適当に論理立てて伝えて居るだけで、根底に有るのは僕を好きだと言う気持ちだと伝わってた。


だけども、僕にはリサの彼氏になる利点が見出せなかった。


リサと恋人関係になった所で得るものが何もない。




 僕は、自分に自信が有ったし、仮に恋人になったから浮気されないと、あぐらをかいて努力を怠り彼女に、迷惑ばかりかけて居たら、あっという間に振られるだろう。


僕には、一生添い遂げる気持ちが無い女性と、付き合う意味が無かった。


恋人以外には抱かせないと言う女性なら、抱く為に恋人契約を交わすのも分かるけど、既に抱いてる彼女と、今更恋人になる意味が無い。




 僕は正直に「今は、誰とも結婚する事とか考えてないし、付き合う意味が分からない」と伝えた。


 すると彼女も「私も結婚とかは考えてないし、こんな地獄みたいな世界に、子供を産む気なんて一生起きない」と断言した。




 将来僕との結婚を見据えて、僕達が恋人として付き合うのなら分かる。


けれど、そうでは無く結婚する気も無い男と、恋人になりたいと思う彼女の考えが、僕には理解出来なかった。


将来捨てる気満々で、別の男に乗り換える事を見据えてるのか、一生独り身で生きて行くつもりなのか分からない。


確かなのは、僕を恋人だと言う理由で、自分だけが独占出来る状態に縛って、将来的には捨てる気なんだなと感じた。




 僕はリサの事を、愛に狂った悪い魔女みたいだと思って、急に怖くなった。


僕には自分だけを愛する様に強制させ、自分は好き勝手自由に生きようとする。


もしも、この悪女の事を、自分の生涯をかけて愛すほど好きになってしまったら、僕は絶対不幸になると思った。