緻密な描写力で少年たちを魅了 樺島勝一 129 | 郷愁倶楽部

緻密な描写力で少年たちを魅了 樺島勝一 129

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亜細亜の曙、敵中横断三百里、緻密な描写力で魅了
樺島勝一



$郷愁のイラストレーション-樺島2-01
樺島勝一
春の横浜港 少年倶楽部掲載口絵・昭和15年5月号


これは横浜の港を、公園の方からながめたところです。
日にあたった砂利、それから人物は、はっきりとかきました。
手すりや、むかふの船は、あまり強い調子にならないやうに、
りんくわくの線をわざとはぶいてあります。







$郷愁のイラストレーション-樺島2-02 $郷愁のイラストレーション-樺島勝一
 かばしま かついち 樺島勝一

 明治21年(1888) - 昭和40年(1965)
 長崎県諫早市生まれ
 商業学校を中退、画家を志し上京。
 大正十二年から「正チャンの冒険」を
 朝日新聞などに連載。
 また、アメリカの雑誌
 「ジオグラフィック・マガジン」を
 手本に独学でペンの細密画を習得し、
 「敵中横断三百里」、「亜細亜の曙」など
 軍事冒険小説の挿絵で人気を博した。


“椛”島勝一の表記のときもありますが、ここでは、樺島勝一に統一させていただきました。
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樺島勝一 昭和のスーパーリアリズム画集






敵中横断三百里

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樺島勝一
山中峯太郎作 樺島勝一画 少年倶楽部掲載・昭和5年5月号



ああ、日本男子の本懐

見渡すかぎり茫々たる原野に、充ち満ちて進軍する敵の大騎兵団!
その先頭から忽ち一小隊ばかりが、疾風の如く我に向かって進撃してきた。

味方は僅かに六騎だ。危うし! 挺身斥候の六騎危うし!





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樺島勝一
山中峯太郎作 樺島勝一画 少年倶楽部掲載・昭和5年5月号






吼える密林
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$郷愁のイラストレーション-樺島2-05
樺島勝一
三波洋一郎作 樺島勝一画 少年倶楽部掲載・昭和7年10月号


私はじっと古沼の水面をみつめたまま
言葉もなく立ってゐました。
夕陽の光が密林の茂った葉越しに、
銀の征矢のやうに
小暗い沼の上に射し込んでゐます。







亜細亜の曙
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$郷愁のイラストレーション-樺島2-08
樺島勝一

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山中峯太郎作 樺島勝一画 少年倶楽部掲載・昭和6年2月号




我等の尊き「日本帝国」を、世界の強敵と見て、
○国に絶大の秘密計画あり。 何か?
南洋の奥地にある岩窟城こそ、
恐るべき計画をもって建てられた大兵器製造所なのだ。








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樺島勝一
少年倶楽部掲載・昭和6年4月号

本郷はかすかに目を開けた。
若い二十三四歳の白人と小水兵が傍に立ち、
周りを裸の土人が囲んでいる。
はるかに高く椰子の葉と青空が見える。




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樺島勝一
少年倶楽部掲載・昭和6年4月号

「黙れ!脱げと言ったら脱げ!」
「ヘエ、……」
名を黄子満と変えた本郷義昭、
白人の前でオロオロしながら支那服を脱ぎだした。
後ろに立ってゐる水平が、
裸になった本郷を見上げると、
「ホー!」驚いて唇をとがらした。
隆々と盛り上がっている全身の筋肉、
堂々たる骨格、剣侠児の裸体こそ
実に彫り上げたように見事だ。




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$郷愁のイラストレーション-樺島2-06
樺島勝一
少年倶楽部掲載・昭和6年9月号

最後に、博士は本郷をエッキス光線にかけて、
全身の骨格を、写真に映し取った。
左腕の静脈から血を取って、試験管に入れた。
背骨にも針を刺して、脊髄にある液まで取ると、
これも試験管に入れた。


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