何かが足りない-第七章 初めての朝-
前回までのお話は、こちら(目次) から
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ここは、どこだろう・・・
あっ、そうだ。
木室さんと一緒に、私ソファーに座ってたんだ。
で、そのまま眠っちゃったんだ。
ふわふわのタオルケット、気持ちいい。
でも、あれ?木室さんは?
やばい、起きないと!
「おはよう。」
彼はにっこり笑って私に言った。
「すいません。あつかましくぐっすり寝ちゃって。」
「いいよ。可愛い寝顔だったから。はい、シャワー浴びておいで。」
そういって、彼は私にバスタオルと歯ブラシ、それとコンビニで売っているDHCのトライアルセットを手渡した。
「あっ、これ。」
「さっき、コンビニで買ってきたんだ。女の子はそういうのないと嫌だろうと思ってね。」
大好きな人と過ごす朝はこんなに幸せだって初めて知った。
「覗かないでくださいよ。」
「大丈夫だよ。」
私は脱衣場でドキドキしながら服を脱いだ。
もしかしたら、ここに彼が入ってくるかも知れない。そんな不安と期待が頭の中をぐるぐる回った。
シャワーを浴び、彼が買ってきてくれたクレンジングで顔を洗う。
置いてあるシャンプーを使う。
彼と同じ香りに私もなった気分になって、私は心が満足でいっぱいになった。
シャワーから出て、バスタオルで体を拭いた。
髪の毛が濡れたまま、すっぴんで初めて彼の前に出た。
彼はこちらに近づいてきた。
「化粧してないほうが可愛いよ。」
そして、私を抱きしめてキスをした。私も彼の背中に手を回した。
しばらくそうした後、彼は私にこういった。
「好きだよ。」
そう言われて、私は彼の背中に回していた手にぎゅっと力を入れた。
「私も、好き。」
それを聞いて彼は私の頭をなでてこういった。
「もったいないから、続きはまた今度。送っていくよ。」
「えっ?」
「その代わり次ここに来たときには覚悟しておけよ。」
私は恥ずかしくて下を向いてた。彼は何事もなかったように、テーブルに置いてあった珈琲を一口飲んだ。
私の用意が出来たのを確認して彼は車で私を家まで送っていってくれた。
つないだ手から伝わる彼のぬくもりは温かく、そして、大きくて・・・
満足でいっぱいになった。
そのとき、まだ私は「好き」と「付き合う」が違うということに気づいていなかった。