「ここに地果て海はじまる。」
(Onde a terra acaba e o mar começa)


ポルトガルの詩人ルイス・デ・カモンイスが詠んだ詩の一節は、
ユーラシア大陸最西端のロカ岬に立つ石碑に刻まれている。


リスボンから海風を受けながら海岸線を走り、
遂にユーラシア大陸最西端に辿り着いた。


内陸部のむせ返る様な暑さが嘘のように、
そこに立つと海からの強い風が体温を奪う。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-Cabo da Roca02


上海を出発してから2年2ヶ月余りの時間をかけ、
僕が目指していたのは今立っているこの場所であり、
自転車の旅を始めて、何か一つを成し遂げる為には、
ここに辿り着かなくてはいけない。と思い続けていた。


22,550kmという距離と2年2ヶ月と言う時間が導いた岬で、
ただただ海を眺めながらユーラシア横断を静かに祝う。

意外にも感情は落ち着いたモノで、叫ぶでも泣くでも無い。

鳥肌が立っているのは感動しているからと言うよりも、
大西洋から吹く風が思いのほか強く冷たいからであって、
感慨深さが内側からジワジワとこみ上げるものの、
ただしばらく風にさらされながら岬に立ち尽くす。


延々と広がる大西洋に、水平線は曲線に見えた。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-Cabo da Roca03


「自転車世界横断」を大義名分に掲げて旅を始めて、
まずはユーラシア大陸を横断してしまった。


「世界一周しているのですか?」と、よく旅行者に聞かれるが、
僕はいつも「世界一周なんて出来るわけないですよ。」と言う。


時間をかけて、全ての国々のスタンプを集める事は可能だろうが、
全ての国々の風俗、文化、生活を見て回り、理解する事なんて
人間の一生を何回かけても出来るはずがない。

国のある一部の土地を通り過ぎるだけで、
国の全てを知った事にはならないからだ。

地域の郷土史を一生かけて研究している人もいる中で、
「世界を一周する。」なんて言葉にするのもおこがましく、
我々は日本全国を一周するどころか、
一つの県や市を一周する事すら出来ないだろう。

出来る事とするなら、そんな国々を通り過ぎる、
『横断』と言う行為に他ならないのかもしれない。


そんな理由で『自転車世界横断』を掲げているのだが、
地図上に線をのばして実際にロカ岬まで来てみると、
日々が旅の連続で毎日違う景色を求め続けていたせいか、
ここが終点とは思えず、「さあ、この先はどうしたものか?」
と、達成感よりも、何とも言えない空虚感を覚えた。


それはきっと旅の途中である事の確認であり、
今日も明日も再び旅の連続であるからだろう。


「ユーラシアを横断したら一時帰国をしよう。」
と、前々から決めていたので帰国はするのだが、
まだ見たい場所や、やりたい事が沢山あるので、
それらをクリアしてからの一時帰国にする予定だ。


予定では3ヶ月後くらいだろうか?

それもあくまで予定であって、どうなる事かは分からない。

旅は思いつきによって風向きが変わる。



22,550kmの道のりを思い返しながら、
この日はワインで横断記念を祝った。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Cabo da Roca01


2010年7月 箭内孝行


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あれこれ色々とありましたが、無事ユーラシアを横断しました。
応援&サポートなどなど本当にありがとうございます。
これから西ヨーロッパを回りながら、ロンドンを目指します。
イギリスに入国出来るかどうか微妙ですが、
スペインかフランスから船で渡ろうと思っています。