イスラエルとパレスチナの戦いは民族や宗教の枠を越え、
世界中の関心が集まり戦争へと変わろうとしている。

小さな国の小さな場所で繰り返される惨劇を、
メディアは大きく取り上げ世界中に発信する。

パレスチナ人はイスラエルから一方的に迫害され続け、
無力なパレスチナ人は壁の向こう側で聖地を夢見る。

ユダヤの民は今日も嘆きの壁に祈りを続け、
ユダヤの兵はパレスチナにミサイルを撃ち込む。
抵抗する術の無いパレスチナの民はそれを嘆き悲しみ、
せめてもの抵抗と叫びや願いを伝える為のデモ活動は、
世界中から多くの有志を集め、何かが動き出そうとしていた。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-ISM02
↑分離壁のチェックポイント(隠し撮り)


僕は滞在先で知り合った人物から情報をもらい、
ISM(International Solidarity Movement)とコンタクトを取り、
彼等の活動についてのレクチャーを受ける事にした。
ISMとは、2001年に平和活動家の団体がパレスチナで創始した
「国際連帯運動」で、非暴力直接行動、集団行動、パレスチナ人
主導を信条に、パレスチナにおけるイスラエルの占領終結を求め
デモや救援活動、人道支援などの活動を続けている。

ISMの活動に賛同する意思があれば誰でも参加する事が出来る。
しかし正式に加入し活動をする前には、彼等の活動内容を理解する
必要があり、2日間の特別な訓練を受けなくてはならない。

エルサレムからアラブ人しか乗らないバスに乗り分離壁を越える。

パレスチナ自治区のある町で行われる訓練は2週間に1度程あり、
今回は僕ら日本人の他にスウェーデン、イギリス、デンマークから
ISMの活動に参加すべく6人の有志が集まった。

トレーナーは各国から集まったISMのメンバーで、
レクチャーの内容によって数人が入れ代わる。

まずISMの活動理念について説明がされた。(以下)

1. Non viorence & Active
分離壁建設やチェックポイントにおける取調べについての抗議。
侵略に使い形で行われる重機によるイスラエルの進入阻止。
非暴力によるデモンストレーションへの参加。

2. Palestinan legs
救急車がスムーズにチェックポイントを通過する際に付き添う。
外出禁止令下の家庭への食料や水の配付。

3.Work in Group consensus
イスラエル占領下におけるあらゆる人権侵害及び、分離壁設置など
国際法違反について、国際情報機関へ文章で訴える。

全編英語で行われるレクチャーは、その内容の難しさもあり
分らない単語が次々に出てくるので、すぐに理解するのは難しい。
またトレーナーがアメリカ人の時などは聞き取りやすいのだが、
スピードがあまりにも早いのでゆっくり話してもらうように声をかける。

その他には文化の違いや習慣。
実際にパレスチナ人はどんな扱いをされているのか?
何故争いが始まり終わらないのか?
何が必要とされ何をすべきか?
などの講義が行われた。

その中で最も彼等が訴えかけていた事に、
我々の様な「国際人の参加」が挙げられ、
彼等は「international」と呼ぶ。

国際人が参加することでのメリットとしては
・イスラエルとしても国際人に対しては容易に武力を行使できない。
・それによってパレスチナ人の安全を同時に確保する事が出来る。
・各国から活動家が集まる事により、情報を多岐にわたって発信できる。
・偏ったメディア報道の力を軽減する事が可能になる。
・分離壁によって隔離されたパレスチナ人の孤立を防ぐ。
・孤立する事によりイスラエルの暴挙が激しくなるのを防ぐ。

パレスチナ人が主導となり非暴力で訴えかける活動において、
我々国際人は情報発信源でもあり彼等の盾にもなりうるのだ。

実際に毎週金曜日にパレスチナの各都市で行われるデモには、
ここでの訓練を受けた国際人が派遣され国際社会にアピールしている。
デモでは非暴力のパレスチナ人に向けて催涙弾やゴム弾が
イスラエル側から放たれ大怪我を負うメンバーもいる。
パレスチナ人の土地を占領するために田畑に戦車で乗り込み、
それを阻止しようとしていたメンバーが轢き殺された事件も起きた。

訓練ではそう言った危険な目にあった際の対処法や、
実物を手にしながら、イスラエルが持つあらゆる武器の説明もあり、
これらは単なる抗議活動ではなく、戦争の中で行われている
危険を大きく被る可能性を持つ戦いなのだと実感した。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-ISM01


2日間の日程の後にそのままISMオフィスへと戻り、
次のデモに向けて準備と対策を考え長く滞在する者もいれば、
僕のように日常へと戻る者もいる。
どこか僻地へと派遣されそこで活動を続ける事も可能だ。

世界では同じ様に助けを求めている国や地域が
まだまだ数え切れない程ある。

政治や利害関係だけの争いとは違い、古くから続く宗教対立は、
あまりにも問題の根本が深すぎるのかもしれない。

旅の途中で目的が変わる事も、旅を続けていれば起こりうる衝動であり、
身の危険を感じる事に対しても、「それを今しなければいけない。」
と、思うのであれば全く抵抗を感じる事も無い。

しかし僕は今回ここに留まる事はしない。

それはまだ僕の中で全てを納得していないからだろう。

もっと多くの事象を目にしなくてはならないし、
僕自身で僕自身の経験を積まなくてはならない。

何かを変えるには余りにも無知で無力だ。

今週の金曜にもパレスチナの都市ではデモが行われる。
そしてそのどこかに僕も参加するだろう。


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