Otona no Omamagoto
こんな月並みなビルの写真を見たって、
今じゃ、誰も感動しっこない。
しかしである・・・・
これがおよそ60年も前に建てられたものだとしたら、どうだ??

Otona no Omamagoto

しかもツインタワーである。
これこそが、ミース・ファン・デル・ローエの傑作「レイクショアドライブアパート」である。
シカゴの街中のビルたちを見ていると、これに似たものが多いが、それはこれがお手本になっているからなんだろう。
ミースの教え子であった高山正實氏によれば、
ミースが提唱した高層化と、パブリックスペースの開放は、当時、批判を受けたらしいが、
今ではシカゴのスタンダードになっているのだという。
たしかに、1階部分に無駄なスペースを作っておくだけでは、もったいない。
そこに店舗をはめ込んだほうが商業的には得策である。
しかし、その分、高層化によってオフィス空間や、居住空間は確保できる。
そして、ミースが固執した無駄に見える空間こそが、人に安らぎを与えてくれるのかもしれない。

Otona no Omamagoto

店舗が何十軒も入りそうな空間には、何も設置されず、住人以外の誰でも通過することができる。
飾り気のないカーテンウォールのデザインも、今じゃ、あったりまえのデザインだが、
これがお手本だったかと思うと、感慨深い。

Otona no Omamagoto

ロビーに置かれたバルセロナチェア。
ミースの建築物にあるのだから、当たり前と言えば、当たり前だが、
このアパートをおいらよりも先に見学に来たことがある我が嫁は
「当たり前なんだけど、あのアパートのロビーに、バルセロナチェアが置いてあるわよ」
なんて言っていた。
この嫁、おいらが「今度はどこそこへ行く」と言うと、
たいてい「あそこにはね・・・」
といろんな情報をくれるんだが・・・
フフフフ・・・
残念ながら、嫁は外から見ただけで、この椅子に座ってないはずだ。
けっこうセキュリティが厳しい。
おいらが座れたのは、高山正實先生のおかげである。
教え子であるばかりか、ここの住人だし・・・

Otona no Omamagoto

室内も洒落ている。

Otona no Omamagoto

これだけで絵になる空間だが・・・・

Otona no Omamagoto

カーテンを開け放てば・・・
この開放感である。
もちろんミシガン湖沿いに建っているので、ミシガン湖も見える。

Otona no Omamagoto


Otona no Omamagoto

めちゃめちゃ笑顔がチャーミングな高山正實先生だから、
きっと誌面じゃ、笑顔が採用される。
でも、おいらは、建築家のこんな表情が好きかな。
77歳で、この格好良さは無いだろ!

【高山 正實】

シカゴ建築研究所 代表
1933年 東京生れ。
早稲田大学、イリノイ工科大学(IIT)にて建築を学ぶ。
ミース・ファン・デル・ローエに師事。
シカゴSOM建築事務所で主任建築家としてシアーズタワーなど
超高層建築の設計に従事。
1975年 論文「建築に現れた西欧及び日本文化の価値観」で博士号(Ph.D)を取得。
      IIT及びハーバード大学で教鞭を取る。
1993年 シカゴ建築研究所(CHICAGO INSTITUTE for the Study of Architecture & Technology, INC.)を設立。同研究所代表。シカゴ在住50年