一色正春氏講演会抄録「尖閣を守れ」 | 井上政典のブログ

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博多リーセントホテルにおいて 文責 歴史ナビゲーター井上政典

福岡憂国忌記念講演から


 この文章は、一色氏の講演を聞いた井上がメモと記憶と思想によって書いた文章です。よってすべての文責は井上政典にあります。大半は忠実に書いていますが、たまには氏が講演されたものと若干違う場合もありますので、ご了承ください。

【講演抄録】

 11月6日に五島列島沖で中国漁船が領海を侵犯して逮捕されたという報道がなされました。しかし、この報道の意味をどれだけの人が理解されているのか不安です。


 もともと領海とは領土から12海里(約22km)で、すべてのその国家の主権が及ぶところです。その外側の12海里が接続水域といって密航や密輸などの犯罪行為に対して主権が及びます。そして200海里が排他的経済水域といい、漁業や海底資源に関して主権が及ぶ距離であります。


 領海内に入るだけではなんら問題がありません。それは海の上には線を引けるわけでもなく、各国の船には無害通航権があるからです。つまり悪いことをしなければ通っていいという意味なのですが、悪いこと、有害な行為とはどういうものを言うのでしょう。領海内で漁をしたり、軍事行動をしたり、海洋調査、宣伝などをしてはいけないことになっています。


 では、先ほどの五島列島の領海内侵入してきた中国漁船はなにをしていたのでしょう。


これは、領海内にいる中国漁船を見つけて、海上保安庁の巡視艇が停船命令をだし、検査をしようとしたところそれを無視して四時間にわたり逃走したのです。


 五島列島付近は格好の漁場であり、豊富な水産資源があるためたくさんの中国漁船が出漁してきています。日本の漁船は延縄漁法という船の後ろに10kmに及ぶ延縄を引っ張り、魚を獲っています。普通であるならばその船の後ろを航行することを避けるのですが、中国漁船はかまわずに横切るために漁具を切ってしまいます。その漁具は1000万円位するのですが、途中で横切られると取れている魚も逃がしてしまうどころか、漁具も使い物にならないため、日本漁船は中国漁船を見るとその海域から逃げてしまうのが現状です。自分の国の主権が及ぶ範囲なのに、被害が大きいからといって日本の船がいなくなりその後を中国漁船が我が物顔で漁をしているのが現状であります。

 中国の漁業監視船が尖閣諸島の領海内に出たり入ったりする事件も起きました。日本側は付近に海上保安庁の巡視船を配備していますが、領海内を出たり入ったりされると一隻の巡視船が中国の船の監視役としてずっと付いておかねばなりません。ところが一番南まで来ると船は速力が遅いため、その隙を狙って北方の島に上陸も可能になります。


 空からは海上自衛隊のP3C対潜哨戒機がパトロールをしていますが、それにあわせて中国軍の戦闘機が領空内に近づきます。哨戒機と戦闘機では戦いにならず、撃たれたら一巻の終わりです。それでも海上自衛隊の哨戒機は毎日尖閣諸島をパトロールしています。さらに航空自衛隊の戦闘機がスクランブル(緊急発進)する回数が前年比3倍になっています。それだけ、尖閣諸島付近の中国の動きが活発になってきています。


 まだ漁船は民間なので海上保安庁が逮捕権を持っているのですが、漁業監視船は公船で、公船であればそこは治外法権となります。そのために海上保安庁では対応できず、軍隊が出動するようになるのです。しかし、他国の軍隊はしてはいけないことが法律で明記されている(ネガティブリスト)だけに対し、わが国の自衛隊は法律に書いてあることしかできないような仕組みになっており、手かせ足かせをされている中で行動しなければなりません。


 その法律に書いてあるかを探しながら任務を遂行している状況です。さらに、領土、領海は警備行動の範囲になっておらず、領空だけがその範囲に入っています。これは、憲法でよその国から攻めて来ないことを想定していないからです。

 自衛隊の領海警備行動はパトロールではなく、調査・研究という名目で行っています。よって不審船を発見すると118に電話して海上保安庁の船を呼んで対処するしかありません。ところが、昨今の不審船はロケットミサイルなどを装備しており、計装備の巡視船では対応できません。そのために、本部に報告し、永田町に持ち込み閣議にかけられやっと警備行動が発令され、市谷にその命令が伝えられ自衛隊が動くことができるようになります。こんなことしている間に不審船というのは大きなエンジンを積んで高速で移動するので簡単に逃げられてしまいます。私が知っている限り20数隻そのような事件が起きています。つまり取り締まる権限がないのです。


 このために早急に法的整備が急務です。


 もし公船が尖閣諸島の我が領海内に居座ってしまったらどうするのでしょう。まずは外交ルートを使い、「遺憾の意」を表します。でも相手は明確な意思を持ってその海域にとどまっているためになかなか動いてくれないでしょう。しかし、実力行使ができません。自衛権の発動を防衛出動といいますが、国会の承認が必要です。そのためこの防衛出動は一度も発動されていません。さらに今の政治状況で可能かどうか疑問です。


 唯一できることは、「やられること」だけです。さらに日本は「専守防衛」の国ですから、さらに大きな手かせ足かせがあることに違いないのです。ちなみにこの」「専守防衛」とは、保安官か自衛官か日本国民が最初に死ななければ発動できないのです。

 ここで、私が流出させた衝突映像から読み取れるものをお話しましょう。


 まず、画面の大部分を占めるのが青い船ですが、端のほうに小さく漁船が写っています。それが当時の海域の状況で、日本の領海内に少なくとも30隻の中国漁船が操業しており、接続海域には150隻がいました。対する日本の海上保安庁の巡視船は4隻でした。数も圧倒的に足りず、一隻の船を停船させようとすると二隻ではさんでするのが定石です。 


 普通外国の船が領海内で創業すれば罰せられます。400万以下の罰金となるのですが、当時も30隻という多数の違法操業を4隻の巡視艇で取り締まれるわけがありません。


 そこで、今回も底引き網漁船を止めて網を上げさせる。魚を獲っていないのを確認して領海の外に出させて終わりで、罰金も払わなくていいのです。それは戦後60年にわたって国防という国家の根幹に関することをおろそかにしてきたツケなのです。これほどまでに中国漁船が増えてしまうと4隻の巡視船では取り締まれないのです。

そこで、一回目は巡視艇が注意を終えて前進し中国漁船の前を横切ろうとしたとたんに動き始めて、故意に衝突させました。そのまましておけば何も問題にならずに釈放されたにもかかわらずです。


二回目の衝突も平行して航行している中国漁船の船長がわざわざ海面の見える場所に移動して船と船の距離を測定して、絶妙なタイミングで舵を切り、一発で当てました。この船は約400トンある大きな船で、軽自動車が400台集まってぶつかってくることを想像してみてください。そして乗組員はそのぶつかった瞬間にも不敵にも落ち着いており、ぶつけられた海上保安庁の船の乗組員の狼狽振りと対照的でした。これが、酔っ払った船長が偶然ぶつかったという人がいましたが、この映像を見たらそれがまったくうそだということが一目瞭然です。


9月7日に乗り移り、9月8日の2時に公務執行妨害で逮捕しましたが、この間13時間も経っています。その間になにをしていたのでしょう。そして24日に釈放する間に、駐日大使を夜中に呼びつけ、レアアースの禁輸措置をし、フジタの社員の不当逮捕をしたのです。


この13時間という時間の中で政府内でいろいろ検討し、出てきた答えが公務執行妨害だったのでしょう。これであれば違法操業の罰金は50万円以下、船や漁具も没収できません。そのときの理由として、①故意でない。②損害が軽微、③再犯の恐れが無いの三つでした。この映像を見れば、故意ではないということがまったくのでたらめであるとわかります。損害は二席あわせて1000万円以上で、いまだ払われていませんし、再犯の恐れのない船長が国に帰ってVサインをしているのです。


そして民主党政府はこれで収まるだろうと思ったのですが、一向に収まらず、国際社会に向かって「貧しい中国の漁船が細々と漁をしていたら日本がきて嫌がらせをして船までぶつけて船長を逮捕した」と言い出しました。ところが日本政府は映像を公開しなかったために中国が言っていることが正しくて日本のほうが悪いのではないかと思われ始めたのです。


謝らないでいいのに謝るものだからうそが本当だと思われ始めたのです。映像を見ればこのように一目瞭然なのに、世界や日本の中にも日本が悪いと定着し始めたのです。反論しないとうそが本当になってしまう。さらにそのときに乗じてロシアの大統領が北方領土訪問をしたりしてだんだん我慢ができなくなってきました。


誰かが出すだろうとはじめは思っていたのですが、誰もしないし目の前にあるビデオ映像を公開させなければ思い始め、ユーチューブにアップした11月4日となるわけです。この結果、全世界に悪いのがどっちだか明確になりました。中国の非道さが明らかになったのです。

主権者である国民が正しいことを知らなければ、正確な判断ができません。それは他人のせいや問題を先送りしてきたこの戦後60数年の結果なのです。だからどうしなければいけないといいません。その判断は正確な情報を持った国民がするべきだと思います。