歌枕 | 歴史エッセイ集「今昔玉手箱」

歴史エッセイ集「今昔玉手箱」

本格的歴史エンターテイメント・エッセイ集。深くて渋い歴史的エピソード満載!! 意外性のショットガン!!

○契りきな かたみに袖をしぼりつつ 末の松山
 波越さじとは (清原元輔)

清原元輔は36歌仙の一人で、清少納言の父。この歌は
小倉百人一首に載せられている。古今和歌集巻二十
「君をおきて あだし心をわが持たば 末の松山
 波も越えなむ」が本歌だという。

末の松山は陸奥国府・多賀城政庁の約1km東にあり、昔は
海岸線からチョイ離れた小高い丘の上にあったと思われる。
坂道の感じからして、標高15~20mといったところか?
亀松亭から末の松山までは約15km。海チャリのちょうど
いい折り返し点ポイントになっている。

太い幹の古樹である以外、何の変哲もない赤松なのだが、
能因法師・西行・梵燈・芭蕉・正岡子規が、歌枕を訪ねて
遥々旅してきて立ち寄った松とあっては、何やら独特の
霊気が宿っているように思えてくるから不思議なものだ。
「おお、これが歌に名高い松だ!!」 と愛でるのわけだが、
愛でている自分も雅な気分に参加している、その感覚が
いいのだ。松を触媒にした時空を超えた連帯感なのだろう。

そういう意味では、レスピーギ作曲「ローマの松」も歌枕
の範疇に入るのではないか。私がローマに行ったならば、
「ボルケーゼ荘の松・カタコンブ付近の松・ジャニコロの松
アッピア街道の松」を探すだろうなぁ。


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