世界規模で気温が下がり、氷河が押し寄せてくる世界。

ある国でそれなりの信用をもつ「私」は、一人の少女を追い続ける。

アルビノであるため目の覚めるような美しい銀髪の少女は、

夫や、ある都市の長官にわが者扱いに自由にされ虐待され、それに慣れきっていた。

私は彼女を追って氷に閉じられていく世界を探し続ける…。

 

まだ冬が残っている間に読めて良かった。

幻想小説のようにも見える破滅の未来と、そこで懸命に、むしろ強迫観念のように一つのものを追い続ける人間。

氷に追われ、少女を追い、時に自分の感情すら見失い。

人々は懲りずに争い、略奪し戦争して最後の命を無駄に燃やしつづけます。


巨大な氷の壁の描写は、主人公の妄想や幻覚を交えながらも強大で、人間にはどうしようもない自然という力への恐怖に満ちています。

アルペンルートもすこしイメージに混ざりました。

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そして同時に例えようもないほど美しく感じる。

全世界を死に追いやる姿がいやというほど可視化されていて余計狂気が渦巻いていくのもよく分かります。


主人公がなぜこんなに少女を 執拗に追うか、

それは感情の赴くままとしか言えません。

そして最後の最後にやっと辿り着いた場所。


冷たい冷たい、あまりにも冷たい場所で

見出せた気持ち。


…ひっぱったわりにはあっけなかったです。


しかし情景の描写は凄かった。


それとなぜか、私の中で銀髪の少女はいつも服をほとんど着てないイメージでした。外套着ても下は裸、みたいな。

それほど無防備な感じでしたね。

主人公と会うときだけ熱をもって拒否し、攻撃し、抵抗する。

その報われなさに胸を痛ませながらも追わずにいられない主人公が気持ち悪くなって、最後の方は追いつかずに主人公早く死なないかなと思ったくらい。


この極限、理解できずとも読む事で触れられたのは小説の醍醐味でした。


面白いかどうかではなく、

感情をかきたてられる名作です。

ちなみに読むきっかけとなっていた「バーナード嬢曰く」ではこんな感じで紹介。

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まさしく神林しおりちゃんの言う逃亡不可能な酷寒の牢獄でした。