- 遮光 (新潮文庫)/中村 文則
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久々に中村文則先生。
今回も独特の闇を書かれる陰鬱な文章です。
虚言癖のある主人公は、交通事故で恋人を失う。
だが彼は周囲にその死を告げず、彼女はアメリカへ留学したと伝えた。
彼はいつも何かを演じる。
突然笑い、突然悲しみ、突然怒る。ふりをする。
ふりをしているうちに本当にいかるときもある。
でもそれもふりかもしれない。
本心はどこにあるのか。存在もしているのか。
でも、彼は恋人・美紀の死を確かに悲しんでいるし、
死んだ恋人を確かに求め続けている。
だからこそ彼女の欠片を手放せない。
自分なりの処世術でもあったのだろうけど、
彼は最終的に破滅も含めた結論にたどり着きます。
受け入れるふりをして逃げて、わかっているふりをして演じて。
誰もがどこかで持っている弱さ、陰鬱さをつきつめるとこうなるのかな。
しかしこの狂い方は、結構好きです。
見事なヤンデレでした。(おいこら)