ES細胞、品質管理容易に=培養で変異しやすい部位特定-京大など国際チーム解析 | 再生医療が描く未来 -iPS細胞とES細胞-

ES細胞、品質管理容易に=培養で変異しやすい部位特定-京大など国際チーム解析

再生医療や新薬開発への応用が期待されるヒトの万能細胞「胚性幹細胞(ES細胞)」について、19カ国の38研究室で作製された125株のDNAを解析したところ、長期培養中に特定の4本の染色体で変異が起きやすいことが分かった。京都大の中辻憲夫教授や山中伸弥教授らが参加する「国際幹細胞イニシアチブ(ISCI)」が27日付の米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー電子版に発表した。
この4本は1番、12番、17番、20番の染色体。このうち20番染色体では、2割の細胞株で共通した増幅部位が見つかり、がん細胞化を招く恐れがある増殖促進遺伝子が含まれていた。過去最大規模の解析でリスクの高い部分が明らかになったことで、今後は重点的にチェックすることができる。品質管理が容易になり、安全性が向上するという。
(時事ドットコム)
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%a3%c5%a3%d3%ba%d9%cb%a6&k=201111/2011112800029

異常起きやすい染色体を発見 京大、ES細胞培養で
京都大学の中辻憲夫教授や英シェフィールド大学などの国際共同研究チームは、様々な細胞に育つ万能細胞の一種である胚性幹細胞(ES細胞)を培養したときに異常が起きやすい染色体をみつけた。ES細胞を使った再生医療の臨床試験(治験)が米国で始まっているが、染色体に異常があると安全性に問題が起こる心配がある。再生医療に使うES細胞を選別するのに役立つ成果という。米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー(電子版)に28日、掲載される。
19カ国の38研究室から125株のES細胞を集めた。全体の約65%は染色体に異常はなく、残りは特定の染色体で数が増えたり一部が伸びたりしていた。欧米などでES細胞を使う網膜疾患や脊髄損傷などの治療研究が始まっている。
(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819595E0E7E2E3888DE0E5E3E3E0E2E3E386989FE2E2E2;av=ALL

ES細胞、長期培養でゲノムに変化
体の様々な細胞に変化できる胚性幹細胞(ES細胞)を繰り返し培養すると、ゲノム(全遺伝情報)に変化が起きやすい不安定な系統と変化しにくい系統が出てくることが、京都大や英シェフィールド大などの国際共同研究チームによる大規模調査でわかった。
ゲノムの変化はがん化につながる恐れがあり、再生医療に利用できる「安全な細胞」を選ぶ目安になる。科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー電子版に発表した。
英、米、豪などで作製したES細胞125系統のゲノムを比較。容器を換えて細胞培養を続ける回数が約50回を超えると、35%で染色体の数や長さが変わった。中でも、人間では23対ある染色体のうち、細胞増殖に関わる遺伝子が集中する20番染色体で変化が目立った。一方、京都大作製の1系統は168回培養を繰り返しても変化しなかった。
(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20111129-OYT1T00562.htm

ISCI、世界のヒトES細胞株やiPS細胞の遺伝学的な安定性の分析を実施
共同研究プロジェクト「国際幹細胞イニシアティブ(ISCI:International Stem Cell Initiative)」は、世界19カ国から集めたヒト胚性幹(ES)細胞とヒト人工多能性幹(iPS)細胞のサンプルについて、遺伝学的な安定性を比較分析を実施し、ヒトES細胞株の培養中に起き得るゲノムの変化などについての情報をまとめた。同成果は、米科学誌「Nature Biotechnology」(オンライン速報版)で掲載された。
ヒトES細胞株などの多能性幹細胞株は、創薬や細胞治療にとって不可欠な「品質管理され、均一特性をもつ」各種ヒト細胞を大量に生産供給できる、他では代替不可能な細胞リソースとして期待されている。
しかし、これまでに報告されている、少数の細胞株を用いた解析では、ヒトES細胞株などの培養増殖中にゲノムの変化が起き得ることが示され、細胞増殖にとって有利な変化を起こした細胞集団が選別されてくる可能性があった。このような増殖に有利に働く変化はがん化に関連する可能性があるため、培養中でのゲノムの変化は、多能性幹細胞株の医学的応用にとっては安全面のリスク要因となっていた。
今回の国際共同研究では、ISCIがイギリス・アメリカ・オーストラリア・イスラエル・シンガポールなど19カ国38研究室から、ヒトES細胞125株とヒトiPS細胞11株のサンプルを集め、共通のプロトコルによるゲノム解析などを行った。
その結果、大半のヒトES細胞株の染色体は正常を保つが、一部の細胞株ではゲノムの変化が起きる可能性があり、特に1、12、17、20番染色体の部位に起きやすいことが明らかとなり、その中でも、20番染色体の一定部位のコピー数増幅が特に起きやすいことが示された。
これにより、今後ヒトES細胞(さらにはヒトiPS細胞)の実用化に向けた細胞株の品質の評価と選別が可能となり、リスク要因となり得るゲノムの変化を持つ細胞株を見つけて除くことで、創薬や医学応用には不可欠となる、信頼できる安全な細胞株の評価選別が将来的にはできるようになる可能性がでてきたという。
なお、今回の共同研究では、京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)の中辻憲夫拠点長や末盛博文 再生医科学研究所(再生研)准教授らより、長期間の継代培養を経て詳しい性質が調べられている再生研のヒトES細胞株のサンプルが提供されたほか、山中伸弥 iPS細胞研究所(CiRA)所長・iCeMS教授や高橋和利 CiRA講師らからは、比較検討のためのヒトiPS細胞株サンプルが提供されており、今回の成果を受けて中辻拠点長・末盛准教授のグループでは、提供したヒトES細胞株を臨床応用可能な(品質保証された)細胞株にするための「クリーニング作業」を始めることを計画している。
既知成分のみを含む培地や培養基材を用い、標準化されたプロトコルによる継代培養を行うことで、当初の樹立過程で使用された動物由来成分や特定されていない成分(リスク要因)を取り除き、将来の臨床応用に耐える品質保証された細胞株を作成するほか、これと並行して、ES細胞株の樹立段階から、すべて既知成分での培養を行い、米国食品医薬品局(FDA)などが要請する世界的標準条件に合致する臨床用ヒトES細胞株の樹立計画を開始する計画で、そのために、凍結余剰胚の新たな提供医療機関の選定や、インフォームドコンセントによる提供に至る手順の見直しなどを現在進めており、樹立研究計画の策定と申請を来年行う予定としている。
なお、日本国内ではヒトES細胞株の臨床応用指針の策定が進行中で、これと連動して樹立研究計画の策定を進める必要があることから、昨今の米国や英国で網膜疾患などへのヒトES細胞株由来の細胞による治療の臨床試験が進もうとしていることを踏まえ、早期の指針策定が望まれるとしている。
(マイナビニュース)
http://news.mynavi.jp/news/2011/11/28/082/




こちらです。

Nature Biotechnology (2011) doi:10.1038/nbt.2051
Received 06 September 2011 Accepted 26 October 2011 Published online 27 November 2011
Screening ethnically diverse human embryonic stem cells identifies a chromosome 20 minimal amplicon conferring growth advantage
The International Stem Cell Initiative
http://www.nature.com/nbt/journal/vaop/ncurrent/full/nbt.2051.html

The International Stem Cell Initiative analyzed 125 human embryonic stem (ES) cell lines and 11 induced pluripotent stem (iPS) cell lines, from 38 laboratories worldwide, for genetic changes occurring during culture. Most lines were analyzed at an early and late passage. Single-nucleotide polymorphism (SNP) analysis revealed that they included representatives of most major ethnic groups. Most lines remained karyotypically normal, but there was a progressive tendency to acquire changes on prolonged culture, commonly affecting chromosomes 1, 12, 17 and 20. DNA methylation patterns changed haphazardly with no link to time in culture. Structural variants, determined from the SNP arrays, also appeared sporadically. No common variants related to culture were observed on chromosomes 1, 12 and 17, but a minimal amplicon in chromosome 20q11.21, including three genes expressed in human ES cells, ID1, BCL2L1 and HM13, occurred in >20% of the lines. Of these genes, BCL2L1 is a strong candidate for driving culture adaptation of ES cells.

非常に重要な研究で、今後の活用が期待されます。