iPS細胞使った目の臨床研究 当初は対象限定に | 再生医療が描く未来 -iPS細胞とES細胞-

iPS細胞使った目の臨床研究 当初は対象限定に

理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市中央区)などの研究グループが、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った目の網膜色素上皮細胞を使い、加齢黄斑変性の患者を対象に2013年度にも始める臨床研究について、当初は原則、視力0・1以下で現在の薬物治療では効果がない人に限定する方向で検討している。iPS細胞を使った臨床研究としては世界初となる可能性が高く、安全性が確立されれば、視力0・2以上の患者へ対象を広げたいという。
あらゆる細胞に分化できるiPS細胞は、山中伸弥京都大教授らが06年に開発。皮膚などの細胞に特定の遺伝子を組み込んで作る。網膜色素上皮細胞は視細胞を維持したり、栄養を送ったりする働きがある。
一方、加齢黄斑変性は、加齢で網膜のうち視細胞が集まる「黄斑」に障害が起こり、視野の中心が見えにくくなったり、物がゆがんで見えたりする病気。
研究グループによると、臨床研究は12年度に申請し、5~6人程度を想定。患者自身のiPS細胞から分化した網膜色素上皮細胞をシート状にして、患部に移植する。原則、網膜に悪影響を与える異常な血管を抑える薬物治療でも効果が不十分で、視力が0・1以下の患者を、神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)などを通じて募る方針。移植は先端医療センター病院(同)での実施を予定する。
目の奥にあり通常でも網膜手術は困難なため、臨床研究では安全性を確認することが中心。万一の場合でも視力低下の危険性が低く、他の治療法が効かない患者を対象にする。視細胞に重い障害がある患者が対象となるため、細胞移植で視力が向上しても、0・1に達する程度と想定。ただ、物を見る際のゆがみなどの軽減は期待できる。
一方、将来的に手術の安全性が確立し、視力が0・2以上の患者にも拡大した場合、移植で視細胞の機能が回復すれば、0・7以上になるなど大幅に向上する可能性があるという。
同センターの高橋政代チームリーダーは「当面は、視力が大きく改善する夢の治療ではないということも患者さんらに理解してもらいながら、臨床研究を進める必要がある。その後に対象を拡大し、10~20年後には治療法として認められるようにしたい」と話す。
(神戸新聞)
http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/0004521369.shtml




高橋先生の最後の言葉をしっかりと理解して、ゆっくりと着実に研究を進めていくことが将来的には一番患者さんの利益になると思います。