ほとんどの体細胞、iPS細胞に 山中教授が仮説 | 再生医療が描く未来 -iPS細胞とES細胞-

ほとんどの体細胞、iPS細胞に 山中教授が仮説

体中のほぼすべての細胞は、さまざまな組織の細胞に分化するiPS細胞(人工多能性幹細胞)になる能力を秘めているという仮説を、京都大の山中伸弥教授が2日付英科学誌ネイチャーに発表する。応用を考える際には、どの細胞から作ったiPS細胞が最も安全かについて検討していく必要があるとしている。

iPS細胞は、体細胞に四つの遺伝子を入れて作る。しかし、作製効率が低いため、まれに存在する特殊な細胞のみがiPS細胞になるという考え方がある。山中教授は、iPS細胞になりうる体細胞はすでに決まっているという仮説を「エリートモデル」、ほぼすべての細胞がiPS細胞になる能力をもつという仮説を「確率モデル」と呼ぶ。

山中教授は、エリートモデルに矛盾する実験報告があるとして、総合的に考えると確率モデルに軍配が上がると指摘。iPS細胞の作製効率が低い理由については、導入した4遺伝子の働きが一定レベルに保たれるなどの条件がそろった時にiPS細胞ができるが、その制御は技術的にむずかしく、今は条件が偶然あった時にしか作製できないため、としている。
(朝日新聞)
http://www.asahi.com/science/update/0702/OSK200907020001.html


iPS細胞、工夫すれば作製効率アップ…京大・山中教授 英科学誌に発表
iPS細胞(新型万能細胞)のできるメカニズムについて、生みの親である山中伸弥・京都大教授が考察をまとめた。現状ではiPS細胞を1個つくるために、元になる細胞が1000個以上必要だが、工夫すれば作製効率をアップできるといい、2日の英科学誌ネイチャーに発表する。

iPS細胞は皮膚などの細胞に3~4種類の遺伝子を導入し、受精卵に近い状態まで若返らせる「初期化」という方法で作製。しかし、成功率が低いため、体内にごく微量に存在する未熟な細胞など一部の特別な細胞だけが、iPS細胞になるとの説もあった。

山中教授はこれまでの世界中の研究結果から、「ほぼすべての細胞を初期化できる」と主張。初期化の成否は導入する遺伝子が働く強さやバランス、時間に大きく影響され、方法やタイミングを工夫すれば効率を上げられるとした。

ただ、導入した遺伝子が染色体のどこに、どれだけ入り込むかなど偶然が左右する要因も指摘。現段階では不完全な初期化で万能性のない細胞もできるなど、性質にばらつきが大きく、移植するとがん化するリスクも高いという。
(読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/university/research/20090702-OYO8T00230.htm


全細胞、iPS変化 山中・京大教授が考察
あらゆる組織に成長できる万能細胞として再生医療などでの応用が期待される人工多能性幹細胞(iPS細胞)について、開発者の山中伸弥・京都大教授が、限られた細胞だけではなくほぼすべての体細胞がiPS細胞に変化する能力を備えているとの考察をまとめ、2日付の英科学誌「ネイチャー」に発表した。iPS細胞については、まれに存在する特殊な体細胞だけが変化できるのか、大部分の体細胞が対応可能なのか、研究者の間で議論が分かれていた。

考察によると、山中教授は国内外のチームの研究成果を分析し、ほぼすべての体細胞が、iPS細胞に変化するために必要な「細胞の核初期化」の能力を保持していることを確認した。

その上で、iPS細胞を再生医療などに応用する上で、がん化の恐れがない、より安全な細胞を作ることが目下の課題となっていることを踏まえ、山中教授は「どの細胞から作ったiPS細胞が最も安全かを検証することが重要」と指摘している。

病態の解明や新薬開発、細胞移植治療などへの実用化に向け、「それぞれの用途に応じたiPS細胞の樹立のためにも、幅広い体細胞で研究していかなければならない」としている。
(産経新聞)
http://www.sankei-kansai.com/2009/07/02/20090702-011835.php


「どんな細胞も万能化」 山中教授が英誌に考察
さまざまな組織に成長する万能細胞として期待される人工多能性幹細胞(iPS細胞)に変化する能力は、限られた一部の体細胞にだけ備わっているのではなく、あらゆる体細胞に備わっているとの考察を、京都大の山中伸弥教授が2日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

iPS細胞を再生医療に応用するには、均質でがん化の心配がない作製手法を開発し、標準的な方法として確立することが課題。山中教授は「さまざまな体細胞で多くの手法を試し、医療への応用に向けた最良の組み合わせを見つける必要がある」と指摘している。

山中教授は、各国のチームによる研究報告を分析。その結果、あらかじめ決まった体細胞だけがiPS細胞になるのではなく、ほとんどすべての体細胞が万能細胞になる能力を備えているとの結論に達した。ただ、遺伝子操作の手法や化学的な環境などによって、iPS細胞の品質や個性に違いが生じると指摘した。
(47NEWS)
http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009070101001046.html


ほぼ全細胞から作成可能=iPS細胞、用途に応じ検討を-山中教授
増殖能力が高く、身体のあらゆる細胞に変わる万能細胞「人工多能性幹(iPS)細胞」は、身体にまれに存在する特殊な細胞から生じるのではなく、ほぼすべての細胞から作り得る可能性が高いと、山中伸弥京都大教授が2日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
難病のメカニズム解明や新薬開発、毒性試験、将来の再生医療など、用途に応じて材料となる体細胞の種類を選び、作成方法も検討することが重要だという。
(時事ドットコム)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009070200085


山中教授「どんな細胞もiPSに」英誌に報告 実用化へ作製、検討
京都大iPS細胞研究センター長の山中伸弥教授は2日、限られた種類の細胞だけでなく、体のあらゆる種類の細胞をiPS(人工多能性幹)細胞にできる可能性が高いと英科学誌「ネイチャー」で報告した。さまざまな細胞でiPS細胞を作製して研究することが、実用化につながると強調している。

iPS細胞はさまざまな作製法が報告されているが、体細胞に複数の遺伝子を導入する手法を含め、ごくわずかな割合でしかiPS細胞にならない。さまざまな細胞になれる「多能性」が十分備わらない細胞も多く、原因は分かっていない。

山中センター長は、iPS細胞になれる少数の細胞が最初から決まっているという考え方を、細胞の種類によらずiPS細胞の作製効率が向上する選別手法があることなどから「矛盾がある」と否定した。また、ある特定の場所に遺伝子が導入された場合だけiPS細胞になるという見方も否定している。

わずかしかiPS細胞にならない理由について、導入した遺伝子の働きやDNAの働きを限定している「メチル化」を制御する必要があるが、現在はその技術が確立していないため「偶発的にしかならない」と説明した。

山中センター長は「病態の解明や薬剤の探索、毒性試験への応用、将来の移植治療など、それぞれの用途によって、どの細胞からどのような方法で作るか、ベストな組み合わせを検討することが大切だ」としている。
(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009070200042&genre=G1&area=K00





一レビューが大々的に報道されているのを初めて見ました(汗)

山中先生ならではですね。


個人的にはエリートモデルもあながち間違ってないと思います。

エリートモデルを考える際、大概は組織中に微量に存在する幹細胞や未分化細胞に関しての考察が主だと思いますが、分化状態に寄らず、同じ細胞種の中でもリプログラミングに耐性を持つものと寛容なものが存在していると考えることもできます。

例えば、ある遺伝子が働いている細胞はある部分のメチル化が外れやすくなってて、結果、リプログラミングを受けやすいというようなことがあれば、リプログラミング処理以前にリプログラミングを受ける細胞がある程度決まっているということになります。

もしこのような遺伝子が見つかれば、あらかじめリプログラミングを受けやすい細胞を選抜して効率を上げるなんてこともできるかもしれません。

ただ、このような研究に関しては、核移植を用いたリプログラミング解析の方が良さそうですね。